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持ち駒の歩は枚数によって価値が変わる? 〜最速で初段になる将棋戦術〜

駒の価値は変化する

最初に将棋を覚えた時、駒の損得を点数で覚えた方も多いと思います。

例えば、金は9点、香は5点、歩は1点、といった具合です。

しかし実はこれ、正確に言うと正しくないです。将棋の覚えたての頃は点数で覚えた方がわかりやすいので点数で例えられていますが、少し将棋を学んでくると、点数で駒の損得を考えることが逆に弊害になってくることもあります。

駒の価値は状況によっていくらでも変化します。

極端な例でいうと、1歩さえあれば勝ちになる局面であれば、その1歩の価値は1億点!と言ってもいいでしょう。もし1歩は必ず1点だと思い込んでいると、その1歩を手に入れる手が思いつかなくなってしまいます。

ですので、この駒は絶対この点数だと決めつけることはできません。

駒の価値が変化するのが将棋の難しいところで、それを自然に見極めることができるようになると、有段者と言えるでしょう。

さて、今回は価値の変化がわかりやすい歩の枚数についてお話しします。

実は、持ち駒の歩は枚数によって価値が変わります。

歩は1枚1点だから5枚で5点かと言うと、実は違うという話です。

1歩と歩切れの差

まず、この局面を考えてみましょう。

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相手が5三香と金取りに打ってきたところです。

玉が取られてしまうので金は逃げられません。

しかし歩があれば▲5七歩と受けてなんともありません。

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ところが歩がないとこの金取りを受けることができず必ず金が取られてしまいます。

1歩ないことで、香で金が取られてしまう事になるので、この局面の1歩の価値は非常に大きいです。

また、この局面を考えてみましょう。

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もしこの局面で先手の手番だったら▲2四歩と打つ手が好手です。

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次に▲2三歩成とと金を作ると、飛車とと金が協力して、金か角を手に入れることができます。

この局面、実は相手は次の▲2三歩成を受けることができません。
これは「垂れ歩」と呼ばれる重要な歩の手筋です。
もし知らなかった方がいたら、覚えておきましょう。

この局面は、歩でと金を作る事で、1歩が金や角と同じくらいの価値を持つという事になります。

このように、歩は受けにも攻めにも大活躍します。

この1歩を持つ事で、攻めや受けのパターンが格段に広がる事になるのです。

また、それによって相手が指せる手に制約を与えることができます。

これはどういうことかというと、下の局面では、5三香と打っても歩で受けられて意味がないので、香が打てなくなっているということ。

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下の局面では、▲2四歩と打たれてはいけないので、相手は△2三歩と受けないといけないということ。

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この1歩は使っていなくても持っているだけで効力を発揮しているのです。

なので、1歩と0歩(歩切れ)は大きな差があると言えます。

歩をたくさん持っている時

では次に歩を5枚持っている時を考えましょう。

歩が5枚あってもそれを有効に使い切ることはできるでしょうか?

歩は初期配置で9枚置かれています。二歩というルールで同じ筋に歩は打てません。

例えばこんな局面を考えてみましょう。

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先手は歩を5枚持っていますが、現状使えるのは、1、2、3筋。相手玉から遠いのであまり有効には使えそうにありません。
9筋から端を攻めるときに使いそうですが、5枚は必要ないでしょう。

このように、歩は自分の歩が無くなった筋にしか使えないので、歩を手持ちにしても、たくさんの歩を使うことはなかなか難しいです。

数が増えるほど価値が下がる

将棋には歩の手筋が山ほどありますが、大抵は1歩あれば事足ります。

2歩使う手筋もありますが、1歩と比べると数が少ないです。3歩となるとさらに少なくなります。

もちろん、歩がたくさんあれば歩の手筋がたくさん使えるので、多い事に越したことはないのですが、そこまでたくさん歩が有効に使える場面は多くありません。

1歩あれば事足りることが多く、2歩あればさらに選択の幅が広がり、3歩あればかなり余裕、となります。

持ち駒の歩が、
1歩あればできることが0から50になり、
2歩で50から70
3歩で70から80
4歩で80から85
5歩で85から87…
といったように、数が増えるほどできることの増加は小さくなって、1歩の価値が下がるイメージです。

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相手と自分の持ち駒の差

自分が1歩、相手が歩切れという状況はかなり自分が得をしています。

特に中盤は終盤は歩が使える場面が多いので、より有利に進められます。
こういった場面の時は、簡単に相手に歩を渡さない方がいいでしょう。

逆に、自分が歩切れで相手が歩を持っている状況は危険です。

歩がないことで大きな駒損をしたり、攻めが頓挫してしまう可能性が高くなります。何とか歩を手に入れる手段を考えましょう。

持ち駒の歩の枚数がお互い複数枚持っている場合は、さほど差がないです。

例えば、横歩取りの定跡はご存知でしょうか?

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定跡にこのような局面があります。
この局面は先手が1歩得しているのですが、形勢は互角であるとされています。
持ち駒の歩の枚数が3歩vs2歩だとさほど差がないためです。

1歩vs0歩 は 50vs0
3歩vs2歩 は 80vs70

くらいのイメージです。

自分と相手の歩の枚数を意識してみると、正しい形勢判断ができるようになるかもしれません。

まとめ

1歩と歩切れの差は大きい

持ち駒の歩は枚数が増えるほど1枚の価値が下がる

自分と相手の歩の枚数を意識しよう


将棋ウォーズ運営チーム ハル

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