「観る将」が観た第28期銀河戦決勝トーナメント2回戦
11月24日に銀河戦の藤井二冠vs永瀬二冠(当時、以下略)が放映されました。本局は9月に収録されたようで、藤井二冠が将棋日本シリーズで豊島竜王に横歩取りで敗れた後、永瀬二冠は叡王戦第八局で豊島竜王に敗れ王座戦第二局で久保九段に敗れた後の対局です。
藤井二冠は1回戦で第3回AbemaTVトーナメントでチームを組んだ増田六段に勝ち、2回戦も同じチームのリーダを務めた永瀬二冠との対局となりました。永瀬二冠は1回戦で松尾八段を破って2回戦に駒を進めてきました。
戦型は後手の永瀬二冠が横歩取りに誘導しました。豊島竜王に続いて藤井二冠の経験が浅く比較的勝率が低い戦型の選択に、本局にかける意気込みが感じられます。藤井二冠が豊島竜王戦と同様▲5八玉と青野流に構えたのに対し、永瀬二冠は△4一玉~△5一金と低く構えます。角交換後の△3三桂に対し、藤井二冠は強く▲2五桂と跳ね、いきなり激しい戦いに突入しました。
永瀬二冠は桂交換後に△6六桂と打ち、▲同歩と取らせて△3四角と飛車金両取りに打ちます。藤井二冠は金を取らせる間に▲2一飛成と龍を作り、▲2四桂と急所に打ちましたが、この桂が▲3二金の頭金を見せる形となり、最後まで永瀬二冠を苦しめる1手となりました。藤井二冠が▲1一龍と香を拾い永瀬二冠が8八馬と銀を取った局面では、駒割は金銀と桂香の交換で永瀬二冠が大きな得となりましたが、AIの形勢判断はほぼ互角となっていたようです。
永瀬二冠は龍取りに△2一金と打ちましたが、これには藤井二冠が▲3三桂と王手で返し、金桂交換になりました。藤井二冠は▲6五角から龍を切って▲4三角成と攻め込みますが、▲3二金の頭金があるため永瀬二冠はこの馬を取れません。永瀬二冠は馬で王手を掛けて馬同士の交換をしましたが、藤井二冠は更に▲4三銀と打って攻めをつなぎます。この銀も取れない永瀬二冠は△8八飛成から連続王手で藤井玉に迫りますが、藤井二冠は角を犠牲にして玉を右辺に逃がします。永瀬二冠は自陣に金銀を投入して粘りましたが、藤井二冠は着実に寄せ、最後は即詰みに討ち取りました。
本局は29手目の▲2五桂から、お互いに一歩も引かない乱打戦となりました。どこまで研究範囲だったのかわかりませんが、37手目の▲2四桂が最後まで良く効き、早指し棋戦とはいえ永瀬二冠にしては珍しい75手という短手数での投了となりました。
藤井二冠はこれでベスト4進出となり、準決勝では木村九段との対局が決まっています。これまで、持ち時間を使い切ると1手30秒となる超早指し棋戦ではあまり結果を出せていない藤井二冠ですが、銀河戦初優勝に向けあと2局、本局のような思い切りのよい攻めを魅せてくれることを期待しています。
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