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「観る将」が観た第37期竜王戦七番勝負第二局

10月19-20日、第37期竜王戦七番勝負第二局が福井県あわら市の「あわら温泉 美松」で行われました。先勝した藤井聡太竜王が防衛に向けて一歩前進するのか、先手番の佐々木勇気八段が勝ってタイスコアに戻すのか、楽しみな一局となりました。

前日に行われたインタビューで、藤井竜王は「地元の方に歓迎していただいている中での対局になるので、期待に応えられる熱戦を指していけるよう頑張っていきたいと思います」、佐々木八段は「市全体、県全体で竜王戦を盛り上げていこうという気持ちが伝わったので、それはとてもありがたいことですし、対局者としては熱戦で応えたいなと思います」と意気込みを語っています。


佐々木八段が矢倉を選択

幻想的な襖絵を背景にした対局室に、佐々木八段が銀鼠の着物と青灰色の袴に藍色の羽織で入室すると、藤井竜王は淡い藤色の着物と鶯茶の袴に薄黄色の羽織で入室します。先手の佐々木八段が意表を突く矢倉を採用し、藤井竜王は急戦含みの駒組みを進めます。佐々木八段は飛先の歩を交換してから1筋の位を取り、藤井竜王が6筋の位を取ると、29分の熟考で3筋の歩を突きます。

佐々木八段の仕掛け

藤井竜王が4筋の歩を突いて雁木に組むと、佐々木八段は3筋に桂を跳ねて下段飛車に構えます。藤井竜王も3筋に桂を跳ね、佐々木八段が玉を4筋に上がって右玉に構えると、角を3筋に引いて9筋まで利きを通します。佐々木八段は5筋の歩を突き、藤井竜王が下段飛車に構えると、6筋の歩を突き捨ててから5筋の歩をぶつけます。藤井竜王が次の46手目を30分以上考えて昼休となりました。各8時間の持ち時間の内、残り時間は藤井竜王が5時間50分、佐々木八段が7時間8分と1時間以上の差が付いています。

藤井竜王が大長考

藤井竜王は昼休を挟む82分の大長考で8筋の歩を突き捨て、6筋の歩を成り捨てて後手陣を乱してから5筋の歩を取ります。佐々木八段は35分の熟考で銀を6筋に繰り出し、藤井竜王が角で8筋の歩を取ると、歩で角を追い返してから50分の長考で6筋に歩を打って位を確保します。藤井竜王は57分の長考で同桂と応じ、佐々木八段が銀で5筋の歩を取り返すと、8筋に歩を合わせてから角頭を歩で叩きます。次の61手目を佐々木八段が考慮中に定刻となり、更に10分程考えて封じ手を行いました。残り時間は藤井竜王が3時間43分、佐々木八段が4時間43分となっています。

2度の角交換

佐々木八段の封じ手は角を9筋に上がってかわす手でした。藤井竜王は再び角で8筋の歩を取ってぶつけ、佐々木八段が▲6四歩と銀頭を叩くと、銀を7筋に引いてかわします。ずっとほぼ互角を示していたAIの評価値は、佐々木八段の62%とわずかに傾きます。佐々木八段は角を交換してから桂を7筋に跳ね、藤井竜王が9筋に角を打って王手すると、6筋に角を合わせて交換し銀で取ります。藤井竜王が△8八歩成と"と金"を作って金に当てると、佐々木八段は金を6筋に寄ってかわします。

2度の桂交換

藤井竜王は56分の長考で7筋の桂を交換し、佐々木八段が金で取って飛車に当て返すと、三段目に引いて守りにも効かせます。佐々木八段が銀取りに▲5五桂と打つと、藤井竜王は銀を見捨てて4筋の歩をぶつけます。佐々木八段は銀桂交換し、藤井竜王が飛車で取ると、4筋の歩を桂で取ります。藤井竜王は桂交換に応じ、佐々木八段が次の83手目を考慮中に昼休となりました。AIの評価値は佐々木八段の74%と傾き、残り時間は藤井竜王が1時間55分、佐々木八段が3時間13分となっています。

藤井竜王の控えの桂

佐々木八段は昼休が明けるとすぐ4筋の桂を取り返し、藤井竜王が4筋の銀頭を歩で叩くと、銀を5筋に上がってかわします。藤井竜王は△5二桂と控えの桂を打ち、佐々木八段が43分の熟考で飛車取りに▲5五桂と打つと、飛車を3筋寄ってかわします。佐々木八段は銀を立って6筋の歩を支え、47分の熟考で残り1時間を切った藤井竜王が7筋に桂を打って銀に当てると、5筋の桂頭を歩で叩きます。

盤石の寄せ

藤井竜王は金で取り、佐々木八段が金頭を歩で叩くと、更に金を6筋に上がって金銀交換し、桂で取って銀に当てます。佐々木八段は飛車取りに▲4四角と打って詰めろを掛け、藤井竜王が桂で銀を取って王手金取りを掛けると、玉を3筋に上がってかわします。藤井竜王は時折苦し気な表情を浮かべて角で王手し、佐々木八段が玉を2筋に引いてかわすと、自陣に歩を打って詰めろを逃れます。佐々木八段が▲5三銀と歩頭に叩き込んで詰めろを続けると、藤井竜王はしばらく瞑想してから投了を告げました。

まとめ

本局は佐々木八段が矢倉からの力戦に誘導し、積極的に仕掛けました。藤井竜王は大長考してバランスを保ちましたが、佐々木八段は封じ手以降にわずかに優勢の局面を築きました。劣勢を感じた藤井竜王は解説陣が「見えにくい手」と評する手で逆転を狙いましたが、時間を多く残していた佐々木八段は落ち着いて対処し、逆転を許さずに寄せ切る快勝となりました。
タイトル戦初白星を挙げ、タイスコアに戻した佐々木八段は「第三局は日付が近いので、しっかりしたコンディションで戦いたい」と話しました。自信を深めたであろう佐々木八段が、本シリーズを大いに盛り上げてくれることを楽しみにしたいと思います。藤井竜王は「本局は完敗だったと思うので、しっかり立て直してまた頑張りたい」と話しており、次局が熱戦になることを期待したいと思います。

竜王戦は読売新聞社が主催しています。
本稿は竜王戦・棋譜等利用ガイドライン(https://www.shogi.or.jp/kifuguideline/terms.html#ryuuou )に従っています。

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