第52期新人王戦三番勝負第二局
10月11日、新人王戦三番勝負第二局が東京将棋会館で行われました。第一局は伊藤匠四段が先勝しており、古賀悠聖四段としては本局に勝って最終局に決着を持ち込みたいところです。
本局は先手の古賀四段が矢倉に誘導し、伊藤四段は急戦調の駒組みを進めます。古賀四段は飛先の歩を交換した後、▲2五銀と棒銀を見せます。伊藤四段が△3三銀と上がって受けたところで昼休となりました。形勢はほぼ互角、残り時間は古賀四段が2時間4分、伊藤四段が2時間17分とほとんど差はありません。
昼休明け、古賀四段は角を下段に引いて活用を図るとともに、左辺の壁形の解消を目指します。伊藤四段が42分の長考で飛車を4筋に回すと、古賀四段も63分の長考で飛車を浮いて受けます。伊藤四段が△1四歩~△1三角と角の活用を図ると、古賀四段は▲7九玉~▲8八玉と入城して決戦に備えます。伊藤四段は8筋の歩を突き捨ててから飛車取りに△3五角と飛び出し、飛車を引かせてから△4七角と4筋を突破したかに見えましたが、古賀四段は▲5五歩~▲4七歩と苦心の手順で飛車成を防ぎます。
古賀四段が▲5二歩と垂らして"と金"を作ると、伊藤四段は6筋の歩を伸ばしてから△2二玉と入城します。古賀四段は▲4一角と打ち込みますが、伊藤四段は7四の地点を守りつつ敵陣を睨む好位置に△5六角と打ち返します。伊藤四段は△4八歩と垂らし、▲4八同飛と取らせることで飛車の直射を避けてから、△3一金と引いて角を捕獲します。残り時間が10分を切った古賀四段は▲2三角成と玉頭の歩と刺し違える勝負手を放ち、▲6一"と"と後手陣の金を取ります。
伊藤四段が△6五桂と遊び駒の活用を図ると、古賀四段は後手の玉頭に綾を付けてから飛車を2筋に戻して反撃を狙います。伊藤四段は丁寧に受けてから飛車を取り合い、△2八飛と寄せに入ります。最後は伊藤四段が飛車を切って△7八角成と詰めろを掛け、▲3三金の王手を桂で取ったところで古賀四段の投了となりました。
本局は序盤に互いに自玉の左側が壁になり、苦心の駒組みが続きました。伊藤四段の飛車を4筋に回して角を1筋から活用する構想が良かったようで、形勢は次第に伊藤四段に傾きました。古賀四段は時間に追われながらも後手陣に嫌味を付け、反撃の糸口を探りましたが、伊藤四段が丁寧に対応してから一気の寄せで勝ち切りました。
前日に誕生日を迎え19歳になったばかりの伊藤四段は、2連勝で新人王に輝きました。藤井三冠と同世代の伊藤四段が、これを機に更なる飛躍を遂げることを期待したいと思います。新人王にはタイトルホルダーとの記念対局の特典がありますので、非公式戦とは言え藤井三冠とのプロ入り後初対局が実現するとファンにとっては待望の一局となりそうです。
古賀四段は今期は準優勝に終わりましたが、西山女流三冠、青嶋六段、出口五段、梶浦七段を破っての決勝進出は見事な活躍でした。今後の各棋戦での活躍を楽しみにしたいと思います。