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「観る将」が観た第43回JT杯2回戦 藤井竜王vs羽生九段

9月23日に将棋日本シリーズJTプロ公式戦(JT杯)2回戦、藤井聡太竜王(王位・叡王・王将・棋聖)と羽生善治九段の公開対局が、札幌市の札幌コンベンションセンター大ホールで行われました。JT杯はタイトル保持者と前年度賞金ランク上位の12名で行われるトーナメントで、持ち時間10分(切れたら1手30秒未満、他に各5分の考慮時間あり)の早指し棋戦です。

藤井竜王は前回は準優勝しており、今回は本局が初戦となります。羽生九段は過去5回の優勝経験があり、1回戦で菅井八段を破って勝ち上がっています。
両対局者が紹介され、藤井竜王はベージュの着物に白い羽織で、羽生九段は白い着物に若草色の羽織で登場すると、会場は盛大な拍手に包まれます。

戦型は横歩取り

振り駒で後手となった羽生九段が横歩取りに誘導し、藤井竜王は青野流で迎え撃ちます。藤井竜王の飛車が五段目、羽生九段の飛車が六段目に浮いての空中戦となり、お互いに戦機を探ります。羽生九段が△8七歩と角頭を叩くと、藤井竜王は9筋にかわして飛車に当てます。羽生九段が7筋の横歩を取ったところで封じ手となりました。

飛車を取り合っての戦い

封じ手は銀を上がって角と金桂の2枚替えを防ぐ手でした。羽生九段は飛車取りに△4四角と上がって飛成を誘いますが、藤井竜王は▲8七金と上がって飛車に当て返します。羽生九段は角で飛車を取り、藤井竜王が金で飛車を取ると△8九飛と打ち込みます。いきなり激しい展開となり、藤井竜王はここで持ち時間を使い切りますが、AIの評価値は藤井竜王の72%と少し傾いています。

お互いに譲らない攻め合い

藤井竜王が▲3五歩と角を取ると、羽生九段は△9九飛成と香を取って竜を作り角に当てます。藤井竜王が角をかわすと、羽生九段も持ち時間を使い切り、△8七歩と垂らして"と金"攻めを目指します。藤井竜王は考慮時間を3回使って▲8二飛と打ち込み、羽生九段が"と金"を作ると▲9五角と上がって飛車の利きを自陣にも利かせます。羽生九段は△7八"と"と攻め合いを選択し、藤井竜王は▲7三角成と飛び込み馬を作ります。

強烈な角の一撃

羽生九段は構わず△6九竜と王手で迫り、△6八"と"と銀を取ります。藤井竜王は▲4五角と打ちますが、この手は2筋の金取りになっているだけではなく、▲6三角成以下の即詰みを狙った厳しい一着となっています。羽生九段は思わず髪をかき上げて考慮に沈みますが、AIの評価値は藤井竜王の97%と大きく傾いています。

"と金"攻め

羽生九段は王手で△5八"と"と寄りますが、藤井竜王が玉をかわすと残り2回の考慮時間を使い尽くして△4九"と"と金を取って王手を続けます。藤井竜王が銀で"と金"を取ると、羽生九段は△4一玉と早逃げして詰めろを凌ぎます。藤井竜王が▲2三角成と金を取って王手で2枚目の馬を作ると、羽生九段は△3二銀と馬に当てて守ります。

鮮やかな寄せ

藤井竜王は▲6二馬と踏み込み後手陣の銀を剥がすと、慎重に考慮時間を1回使って▲6二同竜と金を取って後手玉に迫ります。羽生九段は△2三銀と馬を取って下駄を預けますが、藤井竜王は▲5二金と打って即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は羽生九段の仕掛けに藤井竜王が強く反発し、お互いに飛車を取り合って激しく攻め合う将棋となりました。羽生九段が先に竜を作り"と金"と連携して先手玉を追う攻めには迫力がありましたが、藤井竜王が急所に放った角が決め手となり堅そうに見えた後手陣を一気に攻略しました。
勝った藤井竜王は、11月6日に予定されている準決勝では、豊島JT杯を撃破した稲葉八段との対局が決まっています。JT杯初優勝を目指す藤井竜王がどのような将棋を魅せてくれるのか、楽しみにしたいと思います。

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