「観る将」が観た西山女流三冠の棋士編入試験五番勝負第四局

12月17日に、西山朋佳女流三冠の棋士編入試験五番勝負の第四局が、新しい関西将棋会館で行われました。ここまで1勝2敗と後がない西山女流三冠としては、本局に勝って最終局に夢をつなぎたい一局となりました。

第四局の試験官となる宮嶋健太四段は、2023年10月プロ入りの25歳、プロ入り後の通算成績は18勝12敗です。三段リーグには2019年度後期より参戦し、西山女流三冠との対戦成績は0勝2敗です。SUNTORY将棋オールスター東西対抗戦2024では予選を突破し、15日に行われた決勝戦では三浦九段を破る活躍を見せました。岐阜市の出身で、奨励会時代から藤井聡太竜王名人との親交があったことで知られています。

西山女流三冠は三間飛車

先手の西山女流三冠が三間飛車に振り、美濃囲いに構えると、宮嶋四段は△6四銀と繰り出し、△7五歩とぶつけます。西山女流三冠は▲5六歩と突き、宮嶋四段が7筋の歩を取り込んで銀で取らせ、飛車を7筋に回して銀に当てると、▲6五歩と突いて銀に当て返しつつ角道を通します。

角交換から飛車交換

宮嶋四段は角を交換してから△5三銀とかわし、西山女流三冠が▲6七銀と引いて飛車先を通すと、飛車も交換してから△7九角と打ち込みます。次の41手目を西山女流三冠が考慮中に昼休となりました。AIの評価値は西山女流三冠の58％とわずかに傾き、この角に構わず攻め合う手を推奨しています。各3時間の持ち時間の内、残り時間は宮嶋四段が2時間27分、西山女流三冠が1時間56分となっています。

宮嶋四段の竜

西山女流三冠が昼休を挟む19分の熟考で▲5七角と合わせると、読みを外されたのか宮嶋四段は46分長考して角を交換し、△7六歩と桂頭を叩いて銀で取らせ、桂香両取りに△7九飛と打ち込みます。西山女流三冠は▲6七銀と戻し、宮嶋四段が1筋の歩を突き捨ててから9筋の香を取って竜を作ると、桂取りに▲7一飛と打ち込みます。

互いに陣形を整備

宮嶋四段が△1二香打と二段ロケットを設置すると、西山女流三冠は32分の熟考で▲8五桂と跳ねます。次に1筋の香と竜の両取りがあるので、宮嶋四段が△4四銀と上がって防ぐと、西山女流三冠は7筋に底歩を打って竜の横利きを止めます。33分の熟考で残り1時間を切った宮嶋四段が△4二金寄と自陣を引き締めると、西山女流三冠も▲5八銀と引いて陣形を整えます。

宮嶋四段が二段ロケットを発射

宮嶋四段は△1五香と二段ロケットを発射して香を交換し、西山女流三冠が歩を連打して2枚目の香を玉で取ると、△8四歩と桂取りに打ちます。西山女流三冠も残り1時間を切り、手堅く玉を8筋に引いて戻すと、宮嶋四段は△1一香と打ち直します。西山女流三冠は竜取りに▲6六角と打ち、宮嶋四段が△9八竜とかわすと、▲8四角と歩を取ります。AIの評価値は宮嶋四段の55％と逆転模様です。

西山女流三冠の馬

宮嶋四段は△8七竜と桂に当て、西山女流三冠が▲2六香と据えると、△8五竜と桂を取って角に当てます。西山女流三冠は▲5一角成と飛び込み、宮嶋四段が△8二竜と自陣に引き付けて飛車に当てると、▲2三香成と飛び込んで王手し、▲4一馬と金を取って王手を続けます。何か誤算があったのか宮嶋四段は頭に手を当てる仕草を見せ、AIの評価値は西山女流三冠の69％と大きく振れます。

金のタダ捨てからの寄せ

宮嶋四段が金で馬を取ると、西山女流三冠は▲4一同飛成と金を取り、竜を作って銀に当てます。宮嶋四段は残り4分まで考え、秒読みに追われて△3二竜と自玉の守りに引き付けますが、西山女流三冠は4分の少考で▲2四金と王手でタダ捨てし、▲2六香と後手玉を吊り上げてから▲3二竜と竜を取ります。宮嶋四段は△1七角～△1七同香成と王手し、形を作ってから△3二銀と竜を取りますが、後手玉には即詰みが生じており、西山女流三冠が▲2六飛と王手すると、深々と頭を下げて投了を告げました。

まとめ

本局は角と飛車を交換し合う激しい将棋となり、「対抗形では部分的によくある筋」という西山女流三冠がわずかにリードを奪いました。宮嶋四段が香の二段ロケットで攻め掛かると、慎重な指し手を続けていた西山女流三冠は竜取りに打った角を8筋経由で後手陣に飛び込む急襲で反撃し、粘りを許さず一気に寄せ切りました。
西山女流三冠は2勝2敗となり、1月に行われる最終第五局に臨むことになりました。対局後には「泣いても笑っても最後という形ですけれど、本局も要所であまり良い手を指せなかったかなというところはあると思うので、しっかり反省して悔いのないように挑みたいなと思います」と意気込みを語っています。女性初の棋士誕生に向け、将棋ファンのみならず日本中が注目する対局となりますが、万全の体調で西山女流三冠らしい伸び伸びした将棋を魅せて欲しいと思います。