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「観る将」が観た第14期加古川青流戦決勝三番勝負第二局
10月14日、加古川青流戦決勝三番勝負の第二局が兵庫県加古川市の「刀田山 鶴林寺」で行われました。前日に行われた第一局は千日手の末に上野裕寿四段が制し、岡部怜央四段が巻き返すことができるか注目の一局となりました。フルセットになった場合は、当日に第三局が行われます。
上野四段が矢倉
先手の上野四段が矢倉を選択し、岡部四段は中住まいに構えます。上野四段は3筋の歩をぶつけ、岡部四段が△4三銀と歩を支えると、歩を取り込んで銀取りに▲3八飛と寄せます。岡部四段は△3三金と上がって銀を支え、上野四段がじっと▲3七銀と引くと、△5四歩と突きます。上野四段は▲7九角と引き、岡部四段が4筋の歩を伸ばすと、▲3六銀と立ちます。岡部四段は6筋の歩を交換して△6五同桂と跳ね、上野四段が▲6六銀とかわすと、歩で桂を支えます。
上野四段が早くも1分将棋へ
上野四段が▲6七金右と銀を支えると、岡部四段は8筋の歩を交換して飛車を下段に引きます。上野四段は▲3五歩と打って銀を引かせてから4筋の歩を交換して角で取り、岡部四段が△3二金と引いて角道を通すと、早くも持ち時間を使い切って5筋の歩を突き捨て、▲7七桂とぶつけます。岡部四段は△5四銀右と繰り出し、上野四段が▲4五歩と打って角頭を守ると、△5六歩と伸ばします。上野四段は▲5三歩と玉頭を叩き、岡部四段が△4二玉とかわすと、▲5六金と歩を払います。
岡部四段が角切りの強襲
岡部四段が△6六角と銀を食いちぎり、角金両取りに△5七銀と打つと、上野四段は▲6五金と根元の桂を取ります。岡部四段は△4六銀成と角を取り返し、上野四段が▲5四金と金銀交換してから金取りに▲4四桂と打つと、構わず△3六成銀と銀を取ります。いきなり激しい駒の取り合いとなり、形勢は大きく駒得した岡部四段に傾いているようです。
岡部四段が再度の角切り
放置すると王手飛車があるので、上野四段は▲7九玉と寄って防ぎ、ようやく持ち時間を使い切った岡部四段が△6九銀と追撃すると、5筋の歩を成り捨てて金で取らせ、空いたスペースに飛銀両取りで▲7二角と打ち込みます。岡部四段は△7八銀成と金を取り、玉で取らせて王手飛車取りに△5六角と打ち、上野四段が▲6七銀と玉を守ると、取れる飛車を取らずに△6七同角成と銀を食いちぎり、△8七飛成と竜を作って決めに行きます。
上野四段の逆襲
上野四段は▲3六飛と成銀を取って右辺への脱出路を作り、岡部四段が△7八銀と王手してから△4六歩と打って詰めろを掛けると、同飛と取って逃れます。岡部四段は取られそうだった銀を△5五銀と上がって飛車に当てますが、上野四段は▲5二桂成と金を取って王手し、▲2五角と王手しつつ自陣の守りに利かせます。後手陣にも火の手が上がり、形勢は駒損を回復した上野四段に振れているようですが、両者秒読みの中でミスが許されない白熱の終盤戦となっています。
ギリギリの攻防
岡部四段は歩で合い駒し、上野四段が▲5四角成と後手玉に迫ると、△6七銀成と王手してから△4二金打と自陣を補強します。上野四段は▲5三歩と玉頭を叩き、銀と金で王手してから▲5五馬と銀を取って後手玉の退路を狭め、岡部四段が△8八竜と詰めろを掛けると、▲4八飛と引いて逃れます。岡部四段は△9九竜と香を取って王手し、上野四段が角の利きを活かして▲6九歩と底歩で受けると、飛車取りに△5六桂と打ちます。上野四段は▲5三金と金を取って詰めろを掛け、岡部四段が飛桂交換から△8八竜と王手を続けると、▲6八桂と合い駒します。
長手数の即詰み
岡部四段は△4六香と王手し、上野四段が手堅く馬で取ると、△7七竜と桂を取って下駄を預けます。馬が動いたことで詰めろは溶けたかに見えましたが、上野四段は長手数の詰みを読み切ったのか▲4二金打と王手します。岡部四段は金交換するしかありませんが、上野四段は馬で王手してから金を食いちぎり、▲4三角成と角も切って王手を続けます。岡部四段は執念で指し続けましたが、10連続王手となる▲3四金を見て投了を告げました。
まとめ
本局は岡部四段が角切りの強襲から主導権を握り、上野四段は秒読みに追われながら辛抱してチャンスを待つ展開となりました。岡部四段は再度角を切って竜を作り、一気に決めに行きましたが、上野四段は一瞬の隙を突いて反撃に転じ、最後は鮮やかな長手数の即詰みに討ち取りました。
第一局と同様、苦しい将棋を粘り強く逆転した上野四段は、昨年の新人王戦に続き、2度目の棋戦優勝を果たしました。対局後のインタビューでは、「改善点はたくさんあると思いますので、より努力を続けて活躍できるように頑張りたいと思います」と謙虚に話しました。今後はタイトルを狙えるようなトップ棋士に成長することを楽しみにしたいと思います。
2局とも積極的に攻めて優勢の局面を作りながら惜しくも敗れた岡部四段は、「皆さんに見ていただける舞台で将棋を指すのは自分にとって大きいことだったので、この先も活躍してそういう機会を増やせるようにしたいと思います」と話しており、次の機会を活かせるよう期待したいと思います。
加古川青流戦は、加古川市・公益財団法人加古川市ウェルネス協会・公益社団法人日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご確認ください。