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「観る将」が観た第28期銀河戦決勝トーナメント決勝

12月12日に放映された銀河戦の決勝トーナメント決勝、藤井二冠と糸谷八段の対局を観た感想です。藤井二冠は1回戦で増田六段、2回戦で永瀬二冠(当時)、準決勝で木村九段を破っての決勝進出です。糸谷八段は1回戦で橋本八段、2回戦で村山七段、準決勝で三浦九段を破り勝ち上がってきました。本局は、ともに銀河戦初優勝を懸けての一局となりました。両者はこれまで公式戦で3回の対局があり、いずれも藤井二冠が勝っています。

戦型は横歩取りの将棋となり、後手の糸谷八段が角交換後に△3三桂~△2五歩と飛車の生け捕りを狙う趣向を見せました。藤井二冠は▲5六角と打たされ、△2七角~△5四角成と馬を作られますが、強く飛車と交換して二枚飛車対二枚角の戦いになりました。

お互いに桂頭を攻め合うと、藤井二冠が先に手持ちの角を▲6六角と打ち、相手の飛車の動きを牽制します。更に▲4七角と桂取りを狙うと、今度は糸谷八段が手持ちの飛車を△3五飛と打ち、桂を守ると同時に3筋からの突破を狙います。3筋を手堅く受けた藤井二冠は、糸谷八段が2枚の飛車を2筋に移したのを見て、▲6五桂と相手の玉頭を狙いつつ▲1六角~▲3四桂と銀桂交換を狙います。この桂が飛車の横利きを止めており、▲6四角と出られると厳しいため、糸谷八段は△6三玉と玉で6四の歩を守る大胆な受けを見せましたが、藤井二冠は銀桂交換の駒得をした上で左右からの角筋を活かして攻めかかります。苦しくなった糸谷八段は、飛車で相手の銀を食いちぎって自陣を補強しますが、藤井二冠はその銀を角で食いちぎって相手陣に飛車を打ち込みます。糸谷八段も△4五角と攻守に利かせた角を打ち、反撃を狙いつつ△6二玉と苦心の受けを見せますが、藤井二冠は落ち着いて▲1一飛成と香を補充します。ここで糸谷八段は△6五歩と相手の攻撃の拠点となっていた桂を取りますが、藤井二冠がすかさず▲6四香と打った手が決め手となり、▲5一銀を見た糸谷八段は無念の投了となりました。

本局は、藤井二冠が5六と6六に打った二枚角が躍動し、糸谷八段の二枚飛車を封じ込め攻撃の隙を与えない完勝譜となりました。王将リーグの羽生九段戦でも、横歩取りから同じ位置に二枚角を打っていましたが、藤井二冠にとっては以前から考えていた構想なのかもしれません。

この結果、藤井二冠は銀河戦の最年少優勝記録を更新したそうです。最年少記録自体はあまり驚きを感じなくなってきましたが、やはり素晴らしい記録であることを称えたいと思います。個人的には、持ち時間を使い切ると1手30秒となる早指し棋戦(他にNHK杯やJT杯)で優勝したことの意義は大きいと思います。藤井二冠は、読みの速度が速いと同時に広く手が見えてしまうため、30秒となる棋戦では60秒の棋戦とは違う工夫が必要なのかもしれません。今回の銀河戦優勝をきっかけに、今後のNHK杯やJT杯での活躍も期待したいと思います。

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