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「観る将」が観た第48期棋王戦挑決二番勝負第二局

12月27日、棋王戦コナミグループ杯の挑戦者決定二番勝負第二局が行われました。挑決トーナメントを最後まで勝ち残った佐藤天彦九段と、敗者復活戦から勝ち上がり第一局を制した藤井聡太竜王の顔合わせとなっており、本局の勝者が渡辺明棋王への挑戦権を獲得します。


戦型は横歩取り

振り駒で後手となった佐藤九段が得意の横歩取りに誘導すると、藤井竜王は受けて立ちます。佐藤九段は桂を跳ねて受け、お互いに中住まいに構えます。

佐藤九段の工夫

佐藤九段が前例を離れて4筋の歩を突く工夫を見せると、藤井竜王は28分の熟考で7筋の歩を突き飛車をぶつけます。佐藤九段が飛車を引いて交換を避けると、藤井竜王は角頭を歩で受けずに7筋に桂を跳ねることで垂れ歩を防ぎます。次の32手目を佐藤九段が考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は藤井竜王が2時間53分、佐藤九段が3時間28分となっています。

決断の桂跳ね

佐藤九段が4筋の銀を上がって陣形を引き締めると、藤井竜王は飛車を7筋に回してひねり飛車にします。佐藤九段が4筋の歩を伸ばして飛車の可動域を拡げると、藤井竜王は3筋の歩を突いて右桂の活用を図ります。「持久戦になると何もできなくなる」と感じた佐藤九段は40分の熟考で2筋に桂を跳ねます。この桂は歩の餌食になってしまいそうですが、角を天王山に飛び出すことができれば先手陣を突破できそうです。

藤井竜王の絶妙の凌ぎ

「いやな形になった」と感じた藤井竜王が37分の熟考で飛車を5筋に回して後手の角の飛び出しを防ぐと、佐藤九段は5筋の歩を突きます。藤井竜王は8筋の飛頭に歩を打って飛車の直射を避けると、佐藤九段は40分の熟考で飛車を6筋にかわします。藤井竜王が2筋の桂取りに歩を打つと、佐藤九段は3筋の金頭を歩で叩き、金を引かせてから角を天王山に飛び出します。藤井竜王は飛車を角と刺し違えてから桂を取り、AIの評価値は藤井竜王の65%と少し傾いています。

佐藤九段の苦心の攻撃

佐藤九段は28分考えて9筋の歩を突き捨て、更に25分考えて残り39分となり1筋の歩もぶつけます。藤井竜王が手抜いて桂で3筋の垂れ歩を取ると、佐藤九段は3筋の金頭を叩いて吊り上げてから空いたスペースに飛車を打ち込みます。藤井竜王が自陣に角を打って香を守ると、佐藤九段は1筋の歩を取り込んで援軍を送ります。

藤井竜王の丁寧な受け

藤井竜王が金を引いて飛車を捕獲すると、佐藤九段は角と刺し違えてから8筋に角を打ち込みます。この角は飛車とともに先手玉のコビンを睨んでおり、放置すると角頭への歩の叩きが痛打になります。藤井竜王も残りが1時間を切り、飛車取りに桂を打って自玉のコビンへの脅威を緩和してから、銀取りに8筋に跳ねます。AIの評価値は藤井竜王の88%と大きく傾いています。

万策尽きて

佐藤九段が角頭を歩で叩くと、藤井竜王は角を9筋にかわします。佐藤九段が5筋の歩を突き捨ててから9筋の香を走って角に当てると、藤井竜王は構わず7筋の銀を桂と交換してから金取りに飛車を打ち込みます。佐藤九段は玉で金に紐を付け、1分将棋に突入すると金取りに桂を打って攻めをつなぎます。藤井竜王が銀で角を捕獲して交換すると、攻めの足掛かりを失った佐藤九段は潔く投了を告げました。

まとめ

本局は佐藤九段が積極的に厳しい狙いを秘めた手で攻め掛かりましたが、藤井竜王は丁寧に相手の狙いを消し徐々に駒得を拡大して主導権を握りました。攻め続けるしかない佐藤九段は苦心の手順で細い攻めをつなげましたが、藤井竜王は最後まで丁寧に受け切る快勝となりました。
藤井竜王は渡辺棋王への挑戦権を獲得し、2月に始まる五番勝負でファン待望の六冠目に挑みます。羽生九段の挑戦を受ける王将戦七番勝負と並行する戦いになりますが、夢の八冠制覇にまた一歩前進してくれるものと楽しみにしています。
佐藤九段は挑決トーナメントで藤井竜王を降して一度は壁になりましたが、敗者復活戦を勝ち上がった藤井竜王の前に挑決二番勝負で力尽きました。またいつか、藤井竜王を苦しめる大きな壁となることを期待したいと思います。

棋王戦コナミグループ杯は、共同通信社と観戦記掲載の21新聞社、日本将棋連盟が主催しています。
本稿は「棋王戦の棋譜利用ガイドライン」(https://www.shogi.or.jp/kifuguideline/terms.html#kiou)に従っています。インターネットでの棋譜の利用はすべて「営利を目的とする」ものとみなす(有償)と通知がありましたので、棋譜の利用は断念しています。

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