西山女流三冠の棋士編入試験チャレンジ
7月4日、朝日杯将棋オープン戦一次予選1回戦の、阿部光瑠七段と西山朋佳女流三冠の対局がありました。朝日杯は全棋士に加え、アマチュア10人と女流棋士3人が参加するトーナメント戦で、持ち時間40分の早指し棋戦です。
先日放映されたNHK杯で木村九段を破る金星を挙げた西山女流三冠にとって、本局に勝てば女性としては里見香奈女流五冠(現姓福間)に次いで2人目となる棋士編入試験の資格が得られる注目の一局となりました。
朝日杯将棋オープン戦一次予選1回戦 阿部光瑠七段 vs 西山朋佳女流三冠
角銀桂を捌く西山女流三冠
振り駒で後手となった西山女流三冠は、得意の三間飛車に振り高美濃に囲います。阿部七段が6筋から仕掛けると、西山女流三冠は飛車を4筋に振り直し、3-4筋から反発します。2度に渡る角交換の後、西山女流三冠は銀をぶつけて交換し、△4五桂と跳ねて桂も交換して優勢の局面を築きます。
飛車と金の取り合い
阿部七段は飛車取りに▲5七桂と打ち、西山女流三冠が飛車を見捨てて△4八角と打って金を取ると、竜と馬を作って形勢を互角に戻します。
堅陣を築いての猛攻
西山女流三冠は△7四桂と打って先手の玉頭から攻め掛かり、阿部七段が▲4二飛と打ち込むと、歩で銀を1枚剥がしてから更に△8四桂と打って攻め駒を足します。阿部七段が馬をぶつけて交換すると、西山女流三冠は△5二金打と金銀4枚の堅陣を築き、△5八角と打ち込みます。形勢は再び西山女流三冠に傾きます。
阿部七段の粘り
阿部七段は2枚の竜を自陣に引き付けて粘りますが、西山女流三冠は桂で先手陣の金を剥がし、馬を作って攻め立てます。後手陣は鉄壁で攻める足掛かりがなく、守りを補強する金駒がない阿部七段は潔く投了を告げました。
棋士編入試験の資格
この結果、西山女流三冠は直近の公式戦成績が13勝7敗となり、10勝以上かつ6割5分以上という条件を満たし、棋士編入試験の資格を獲得しました。既に受験する意思を示しているようです。
西山女流三冠はかつて奨励会に所属し、三段リーグで次点を取ったこともあります。公式戦でも竜王戦6組ランキング戦ベスト4や、前期の朝日杯では女性初の一次予選突破など、棋士と遜色ない実力と言われています。
日本将棋連盟創立100年、そして女流棋士制度発足50年の節目の年に、将棋界初の女性棋士が誕生することを大いに期待したいと思います。
本稿は「朝日杯将棋オープン戦における棋譜利用ガイドライン」(https://www.shogi.or.jp/kifuguideline/terms.html#asahi_cup )に従っています。
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