「観る将」が観た第35期竜王戦決勝トーナメント 大橋貴洸六段vs伊藤匠五段
7月6日に竜王戦決勝トーナメントで、4組優勝の大橋貴洸六段と6組優勝の伊藤匠五段の対局がありました。近い将来タイトル戦登場が期待される棋士同士の対局であり、非常に注目される対局となりました。
大橋六段は今年度9勝1敗(勝率0.900)で、この対局前の時点で8連勝中と好調を維持しています。王座戦挑決トーナメントでは藤井竜王を破って勢いに乗り、挑戦者決定戦まで勝ち進んでいます。
昨年度勝率一位賞を獲得した伊藤五段は今年度も12勝2敗(勝率0.852)で、この対局前の時点で9連勝中と絶好調です。今期初参戦した王位リーグでは最終局で豊島九段に敗れて挑戦権獲得はなりませんでしたが、棋王戦挑決トーナメントでは2回戦で強豪三浦九段を破って勝ち進んでいます。
注目された戦型は、振り駒で先手となった大橋六段が矢倉に誘導し、比較的じっくりした駒組みになりました。盤面中央で両者の銀が睨み合う形となりましたが、大橋六段が飛先の歩を合わせて1筋を突き捨ててから後手の桂頭を狙って▲7五歩と突いた瞬間、伊藤五段が△6五桂と跳ねて右金を力強く前進させて先手の玉頭を制圧します。大橋六段は飛車で横歩を取って暴れようとしましたが、伊藤五段は冷静に歩で飛車の退路を断ち桂で捕獲してしまいます。これで優勢となった伊藤五段は、取った飛車を先手陣に打ち込んで竜を作り、駒得を拡大しながら一気に寄せ切ってしまいました。
伊藤五段の次の相手は、1組5位の稲葉八段となります。竜王に挑戦するには、更に1組4位の山崎八段、1組優勝の永瀬王座に勝って挑戦者決定三番勝負に挑む必要があります。竜王戦ドリームは長く険しい道ですが、今の伊藤五段なら1組の壁を乗り越えてくれるのではないかという期待感があります。もし伊藤五段が挑戦者となれば、20歳同士の非常にフレッシュなタイトル戦となりますので、楽しみに見守りたいと思います。