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NHK杯で小山怜央四段が永世名人を撃破 ~フリークラスから昇級決定~

第74回NHK杯は2回戦の放映が始まったところですが、8月11日に谷川浩司十七世名人vs小山怜央四段が放映されました。本局に勝った小山四段はフリークラスからC級2組への昇級が決まったため、結果が収録直後に公表されていました。

ほんの少し前までアマチュアだった棋士が、公式戦で永世名人を破るという大金星だと思いますので、私もNHKプラスで後日観戦しました。

対局前のインタビューで、谷川十七世名人は「(小山四段の)棋譜をかなり調べて、粘り強さもあると感じました」と事前準備してきたことを明かしていました。小山四段は「谷川十七世名人は私が将棋を始めた時からトップで活躍されてきた方なので、そういう先生と対戦できるということは本当に貴重な機会で、もうドキドキしています」と初々しく話していました。


谷川十七世名人が一手損角換わり

振り駒で後手となった谷川十七世名人が一手損角換わりを採用し、相早繰り銀の将棋となります。小山四段は3筋から仕掛け、谷川十七世名人が8筋の歩を突き捨ててから飛車取りに△5五角と打つと、▲4六銀と引いて防ぎます。谷川十七世名人が角のラインを活かして7筋から攻め掛かると、小山四段は▲3四歩と銀頭を叩いて引かせ、飛先の歩を交換してから▲2五飛と引いて7筋の銀に当てます。

小山四段の叩きの歩

谷川十七世名人が△6六銀と出て、次に△6七銀成から馬を作る厳しい狙いを見せると、小山四段は考慮時間を数回使って▲6二歩と金頭を叩きます。この手はAIの推奨手には上がっていましたが、解説の島九段が「私には見えない」という手で、小山四段の力量を感じさせます。この歩を飛車で取ると間接王手飛車の筋があるので谷川十七世名人は金で取り、小山四段が▲5八金と上がって銀の突進を防ぐと、△3五歩と打って先手の飛車の横への転回を防ぎます。

小山四段の自陣角

この歩を銀で取ると△1三桂の飛車取りが厳しいので、小山四段は▲2八角と打って間接的に後手の飛車を睨みます。谷川十七世名人はそれでも△1三桂と跳ねて飛車を引かせ、△7七歩成から銀交換しますが、ずっとほぼ互角の範囲で揺れていたAIの評価値は、小山四段の80%と大きく傾きます。

鮮やかな寄せ

考慮時間を使い切り30秒将棋となった谷川十七世名人が△7七同角成と桂を食いちぎり、△7二飛と寄って金に当てると、小山四段は飛頭を歩で叩いて吊り上げてから、金に紐を付けつつ飛香両取りに▲5五角と打ちます。谷川十七世名人が飛車取りに△2五銀と打つと、小山四段も30秒将棋となり、飛角交換してから中盤に金頭を叩いて空けたスペースに▲7一飛と王手し、桂頭に▲7四歩と打って成り捨て、▲4五銀と角の利きを通して金に当てます。谷川十七世名人は△9五角と金に紐を付けつつ先手玉を間接的に睨みますが、小山四段は緩まず▲6二銀と打って即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は谷川十七世名人が前例の少ない将棋に誘導し、主導権を握ったかに見えました。小山四段は金頭を叩いて後手陣を乱し、自陣に放った角を活かして鮮やかに寄せ切りました。
小山四段は対局後にC級2組への昇級について聞かれ、「フリークラス棋士として入って、そこからの一つの大きな目標だったのでとても嬉しい」と話しました。まだ31歳という指し盛りであり、昇級昇段を重ねていって欲しいと思います。

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