人生初の体験指サックで
「本を借りたい」
息子に言われて図書館へ行った。
「ここの図書館に来るのも久しぶりやな」
3月から足を運んでいなかったが、やはり状況は変わっていた。
床には矢印、椅子にはバッテンマークが貼られている。
「本、探してくる」
息子は図書館の中に消えていった。私は日本経済新聞でも読もうと新聞コーナーにいったが、
"カウンターに申し出てください"
と張り紙がしてあった。
カウンターにいくと職員の女性に
「日本経済新聞を読みたいんですけど」
と伝えると
「閲覧登録願います」
『ん?システムが変わったなあ。まあええか』
言われたとおりに登録を済ませる。
「では、こちらのビニール手袋をはめてください」
「ビニール手袋はめて読むんですか?」
「感染予防ですのでお願いしています」
んー。なんだか大そうなことになってきた。
「ページをめくりにくいので、人差し指に指サックをつけてください」
確かにビニール手袋だけでは、ページをめくりにくい。しかし、ここまでしないといけないのか。今さら、やめるとも言えず、指サックをつけて指定された席で新聞を読んだ。想像以上に読みにくい。指サックのおかげでページは何とかめくれたが、どんな記事が載っていたのか覚えていない。
何とか読みきり、カウンターに返却した。
「他にも閲覧されますか?」
「いや、もう大丈夫です」
「では、こちらでビニール手袋をはずしてゴミ箱に捨ててください」
指示どうりビニール手袋、指サックをはずしてカウンター下のゴミ箱に捨てた。
新聞を読むのに完全装備したのは、人生初の体験だ。
「徹底しているなぁ」
息子が走って戻ってきて
「借りたい本がなかった」
「そうか、もう帰ろうか」
車の中で、ビニール手袋の話をしていると
「お父さん大変だったね。でもおもしろい」
「そうか。ならよかった」
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