エンドロールから見つめる「美女と野獣(2017)」
エンドロールに注目すれば、映画がより面白くなる
映画のラストを締めくくるエンドロール。
主人公→準主人公…と順番に、キャストが紹介されていく。
キャストのクレジット順に注目する観客・視聴者が多いことから、その順序はスタッフ側にとっても極めて繊細な問題とされ、その配置によっては出演者と製作側との契約上の紛争に発展することがある。(Wikipediaより)
そこで、このnoteでは、映画エンドロールでキャストが紹介されていく順番に注目。
映画をより深く楽しんでもらえるきっかけになればと思います。
ディズニー大好きな著者が初回に選んだ映画は、2017年製作の「美女と野獣」。
アニメ映画「美女と野獣(1991)」の実写リメイク作品です。
結末あります。ネタバレ注意!
キャスト紹介がオシャレすぎる
この映画では、単にエンドロールにキャスト名を流していくのではなく、各キャラの映像+俳優名を順番に流していく、という手法をとっています。
流れている曲はセリーヌ・ディオンの本作オリジナル挿入歌「時は永遠に(How Does a Moment Last Forever)」。
1991年のアニメ映画版で主題歌を担当した彼女の歌声が、感動を倍増させますね。
映画を通しで見た方なら誰でも感動するこのキャスト紹介部分。
その登場順を見ていきましょう。
キャスト紹介の登場順
①ベル:ヒロイン
②野獣:準主役
③ガストン:悪役
④モーリス:ベルの父
⑤ル・フウ:悪役ガストンの子分。小悪党キャラ
⑥ルミエール:城の給仕長(ろうそく)。陽気キャラ。コグスワースの相棒
⑦マエストロ・カデンツァ:野獣のマエストロ(チェンバロ)。映画オリジナルキャラ。マダム・ド・ガルドローブの夫
⑧マダム・ド・ガルドローブ:城の衣装係(箪笥)。豪快キャラ。マエストロ・カデンツァの妻
⑨プリュメット:城のメイド(はたき)。セクシーキャラ。ルミエールの恋人
⑩アガット:魔女/村人。冒頭の語り手
⑪チップ:ポット夫人の子供
⑫コグスワース:城の執事(時計)。真面目じいさんキャラ。ルミエールの相棒
⑬ポット夫人:城の料理人(ポット)。寮母キャラ。チップの母
キャストについて
ベル役のエマ・ワトソン、野獣役のダン・スティーヴンスというメインの他に先行発表されたキャストは、
・ルーク・エヴァンス(悪役ガストン役)
・ユアン・マクレガー(ルミエール役)
・エマ・トンプソン(ポット夫人役)
・イアン・マッケラン(コグスワース役)
といった、他の映画でも大活躍している超豪華スターたち。
まあどれも映画では脇を固める超重要キャラ達です。
ポット夫人がラストに紹介される意味
中でも注目すべきは、やはりトリを飾るポット夫人ではないでしょうか。
本作での最重要キャラと言っても過言ではありません。
ベルが初めて城に迷い込んだ際、怪しげな住人だらけの中、唯一安心感を与える存在となる、彼女。
寮母さんのようなキャラで、のちにベルが野獣に心を開き始めるきっかけも与えてくれます。
ポット夫人=登場人物全員の”母親”
ベルの母が亡くなっているという設定は、アニメ版と一緒。
城に隔離され父まで奪われ、本当に1人ぼっちになってしまったベルにとって、ポット夫人は”母親”代わりの存在となります。
また、ベルだけでなく、どこか幼稚な部分も持ち合わせている野獣(王子)含め、城の住人みんなにとっての”母親”でもあります。
きっとこれからも、ベルや王子を、母親の目線で見守り続けていくのでしょう。
メイン曲「美女と野獣」を劇中で歌うのはポット夫人
またポット夫人の重要な役割がもう一点。
ベルと野獣が心を通わせ始めるダンスシーンで流れる曲「美女と野獣」。
デュエット曲でも有名なこの曲を、劇中では、主人公達(ベルと野獣)じゃなくて、ポット夫人に歌わせるところが、この映画の粋なところです。
ベル・野獣2人にとっての母親同然の役割を持つポット夫人が、温かい歌声で2人を包んでくれるのです。
子供チップへの愛情が涙を誘う
子供チップにとっては、本当に母親であるポット夫人。
この映画、とにかくチップが可愛い。愛くるしい。
そんなチップに無償の愛情を注ぐポット夫人は、母親の鑑。
その分、最後のバトルシーンで、チップとはぐれたポット夫人の焦りっぷりには、感情を揺さぶられます。
城の住人が固まっていき、家具になっていくシーンで、
必死にチップを探しながらも、先に固まってしまうポット夫人。。
この、固まる順番にも思わず息を呑んでしまいます。
城の住人たちが家具になる順番
この映画の泣かせどころ、クライマックスで城の住人達が完全に家具化してしまうシーン。
「彼らが家具化する=人間性を失う=死・滅亡」を連想させるような演出で、城が空虚になっていくサマがなんとも切ない…。
固まる直前、住人1人1人の心情が巧みに描かれています。
彼らが固まる順番に注目してみました。
①プリュメット(彼氏ルミエールの腕の中で)
②ガルドローブ
③カデンツァ(妻・ガルドローブの固まりを見届けた後)
④チップを探して悲しむポット夫人(チップは見つけられず…)
⑤その直後に空中で固まるチップ(母・ポット夫人が固まってしまったのを見ずに済んだことが唯一の救い)
⑥帽子掛けのシャポー(空中で固まり割れそうなチップを助け、しかもポット夫人の元におくシャポー)
⑦コグスワース
⑧ルミエール(紳士らしく回転して固まる)
まあこのシーンの主役は完全に蝋燭のルミエールでしょう。
城のいわばムードメーカーである彼が、
ガールフレンドや友人たちが固まるのを見届け
悲しさに満ち溢れてるはずなのに、最後までクールに決めてみせる。
かっこよすぎる去り際…というか固まり際です。
ちなみに、家具から人間に戻る順番は
コグスワース
→ルミエール
→プリュメット
→チップとポット夫人(笑顔で見つめるコグスワース)
~家族と再会するポット夫人
~コグスワースはオチ要員
です。
冒頭の語り手=魔女アガット
あと注目すべきキャラが、アガット。
村人として紛れている、魔女の存在感がアニメ版よりアップ。
当然エンドロールでも、きちんと写真付きで紹介されます。
Column ディズニー悪役結末研究
・ガストン⇒死
・ル・フウ⇒味方になるパターン
イケメンだけど最後まで改心せず悪いやつだったガストンは遠慮なく死亡
ちなみに
・ル・フウが同性愛者キャラ。時代を感じる。
ちなみに、日本語吹き替えは藤井隆さん。はまり役!
・日本語吹き替えで言うと、
コグスワース:小倉久寛さん、ポット夫人:岩崎宏美さん
という配役もすばらしい。
・ミセス・ポットって、ポテトヘッド並みにセンスいい名前だと思う。
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