心理的安全性の権威、エドモンドソン教授が『High-Impact Tools for Teams』に寄せたまえがきを全文掲載!
2022年9月14日刊行『High-Impact Tools for Teams――プロジェクト管理と心理的安全性を同時に実現する5つのツール』は、ベストセラー『ビジネスモデル・ジェネレーション』の著者陣が送る最新作。
本書にまえがきを寄稿したのは、心理的安全性の権威でハーバード大学教授のエイミー・C・エドモンドソンさんです。
そのまえがきを全文ご紹介いたします。
本書は、すでにチームを率いている方や、近くリーダー役を担う方なら、手元に置いておきたいと思うはずです。今日のリーダー層の多くが認識している通り、組織の成功は、チームぐるみでイノベーションやデジタル化を加速し、顧客の要求の変化に応え、パンデミック、社会の混乱、景気後退といった突然の事態に対応できる能力に大きくかかっています。
しかし、単にチームを編成しただけでうまく行くとは限りません。失敗はよくあります。有意義な目標、適切な人材、十分なリソースがそろっても、高いはずのポテンシャルの発揮に苦しむことが多々あります。不十分な連携、無駄なミーティング、非生産的な対立、ぎくしゃくした人間関係が足を引っ張り、不満や遅延、判断ミスを招きます。これらの要因は「プロセス・ロス」と呼ばれ、インプット(人材、目標、リソース)とアウトプット(チームの成果、メンバーの満足度)に差が出る理由になるとされます。チーム
が任務を完了したように見えても、イノベーションとは呼べない無難な成果にとどまったり、働き過ぎ、ストレス、意欲の減退といった大きな代償が伴ったりと、最適な成果ではないかもしれません。
そのような結末は避けられます。
チームが成功するためのシンプルかつ効果的な方法を、ステファノ・マストロジャコモとアレックス・オスターワルダーが本書で紹介します。この2人が提供するのは、参加意欲の向上、生産的な対立、順調な進行に向けてチームを今すぐ変革することを目的に、いかなるチームにも適用できる戦略集です。目を引くイラスト、使いやすいツール、考え抜かれた手順の備わった本書は、チームが陥りがちな問題の数々を避ける(または、そこから立ち直る)うえで大変貴重なリソースとなります。私はずっと前から、シンプルなツールでチームの行動を正しい方向に促すことで大きな効果が得られると考えていました。本書にはそうしたツールがいくつも掲載され、どのチームに
も役立つ手順やガイドラインが記されています。
しかも『High-Impact Tools for Teams』が特に効果的なのは、共同作業の手順と、心理的な環境をともに重視しているからです。多くの著者はどちらか一方しか取り上げず、チームプロジェクト管理をステップごとに説明するだけか、チームの学習やイノベーションを可能にする心理的に安全な環境の利点を論じるだけにとどまっています。本書は両方を達成するためのシンプルなツールです。
チーム環境の悪さから誰も声を上げたがらなくなると、イノベーションが阻害され、問題が積み重なり、大失敗に発展することがあります。だからといって、心理的安全性を実現せよと言われても、とうてい実現できなさそうに思えるものです。結果を出すプレッシャーにさらされているリーダー層なら、なおさらそうでしょう。ステファノとアレックスは、私の研究だけにとどまらない数多くの研究に基づいて、健全なチーム文化にたどり着く方法を解き明かし、実現のための手順を丁寧に示しました。その点だけでも、本書は魅力的です。メンバーの意欲と知識を最大限に生かし、21世紀に成功できるチームを構築する取り組みに、新しいエネルギーとツールをもたらしてくれる本です。
共同作業というものは決して簡単ではありませんが、チームに役立つ実践的で使いやすいツールがここに登場しました。リーダーとなる皆さんが強い信念を持って活用すれば、会社に必要とされ、従業員に望まれるようなチームをきっと作り上げられるはずです。
――エイミー・C・エドモンドソン
(ハーバード・ビジネス・スクール)
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