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古文字あれこれ【宇宙】その2

こんにちは、書道玄海社・師範の加藤双涛です。
こちらでは、シリーズで「古代文字あれこれ」について綴っていきたいと思います。

帰ってきた玉手箱

はやぶさ2のカプセルが無事回収されました。リュウグウ由来と思われる岩石やガスも回収されたようです。リュウグウは非常に黒い小惑星で、有機物や水を含むとみられる「C型」(炭素の元素記号)の岩石からなり、地球の水や生命の起源への手掛かりが期待されるとともに、太陽風やエネルギーの異なるいろいろな宇宙線や荷電粒子にさらされて生ずるヘリウム、ネオン、アルゴンといった特有の希ガス元素や同位体組成についても分析結果が楽しみです。玉手箱からの「煙」は、一瞬にして浦島太郎を年寄りに変身させるということではなく、微小な宇宙塵について培ってきた高感度の精密技術の対象として十分に役に立つサンプルといえます。

「地球は青かった」「神は見えなかった」

60年ほど前ソ連のガガーリンは、「空は非常に暗く、地球は青みがかっていた」と冷静に話され、「地球は青かった」と水に恵まれた地球の美しさを詩的に表現されたと伝わっています。また同時に彼が好んで使ったアネクドート(風刺ジョーク)の中で、

「宇宙から帰還したガガーリンの歓迎式典で、ロシア正教のアレクシー一世総主教に、“宇宙を飛んでいたとき、神の姿を見ただろうか”、と尋ねられ、“周りを見渡したが見えませんでした”、と答えると、“我が息子よ、神の姿が見えなかったことは自分の胸にしまって置くように”。 暫くしてフルシチョフ書記長がガガーリンに同じことを尋ねた。総主教とのやり取りを覚えていたガガーリンは自信を持って答えた。”見えました”、すると書記長は
”同志よ、神の姿が見えた事は誰にも言わないように” と語った。」

とあります。ガガーリンの話から想いだすのは、次の2つの作品です。下図左は、神谷英山のアートな作品「蒼 ・宇宙…何も浮かばず何となく『蒼』」(2005年2月)、下図右は「老子の道」という私の作品(2018年2月)です。
神谷英山の作品は、「地球は青かった」に対応するもので、地球の品位ある美しさを表現していると思われます。私のは「神は見えなかった」に対応します。

古文字あれこれ2 Gazou am

宇宙を統括する「法」の旧字「灋」は、金文では下図のように書かれます。この中心は、廌(たい)という羊に似た神判(しんぱん、神の審判)に用いられる神獣です。その扁の方は、水と去とから構成され、去は人の正面形の“大”と“さい”とからなり、神判に負けた人は水に流されるといいます。

宇宙の物質のほとんどは、いまだに正体のわからないダークマターやダークエネルギーで占められているといわれており、上図右の私の作品では、去の中の人の正面形“大”を「黒」に置きかえて、得体のしれない宇宙を表してみました。
 生命を宿す地球の奇跡は、ガガーリンの目には見えなかったかも知れませんが、宇宙を統括する「法」の存在を感じさせます。

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