クリスト『ヴァレーカーテンの全貌とアンブレラ・プロジェクトのためのドローイング』
クリスト『ヴァレーカーテンの全貌とアンブレラ・プロジェクトのためのドローイング』です。クリストの代表作2作で構成された1冊で、水戸芸で91年に開催された展覧会のカタログです。が、特にヴァレーカーテンについては「全貌」と謳うに相応しい膨大なプロジェクト・レポートが記されており、展覧会ではおそらく味わえない質がちゃんと書籍としてまとめられている。
元々、私や多くの人は、クリストのプロジェクトは、ドローイング、写真、ストーリーでしか味わっていない(実物を見ることのできた幸運な人は少ないでしょう)。そして私は彼のドローイングがめちゃくちゃ好きだったのでこの本はそれに惹かれて購入したのですが、レポートがまあ面白い。
巨大なランド・アートを実現するためのエンジニアリング(施工会社との折衷、それには構造計算や見積、保険など実現のためのすべてが描かれている)、政治(地元行政との交渉、地域理解、環境保全家への説明)など、アートの実現のためのリアルが詳細に記されています。
山形浩生の言うように、そんなことは大手ゼネコンなら…能力として)たやすく出来ることであると言うことはそりゃできるのですが、他の様々な実現のための引力を考えると彼らはこのプロジェクトはできませんよね。
このことをもう少し上手く言語化してクリスト&ジャン・クロードの達成したことをもう少し明らかにしたいと思うものの、ひとまずはこれを読んで「すげえなあ」と思っている今であります。