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【最新】2024年版ディスプレイ業界 上場企業5社の業績まとめ
この記事は、建設・内装・イベントの現場をDXしている株式会社SHO-CASEの公式noteです。
この記事は、内装やイベントなどの空間づくり事業を展開する「ディスプレイ」業界について、
・業界関係者や周辺領域のステークホルダー(利害関係者)の方
・ディスプレイ業界への就職や転職を目指されている方
に向けて、業界を代表する上場企業5社の経営指標の目安を提供するべく、各社が公開するIR資料の業績を独自目線でまとめた記事です。
今回の記事の内容の説明
ディスプレイ業界は、内装からイベントまで多岐にわたる空間づくりを行う企業群の集まりです。すべてではないですが、みなさんがイメージする「建設会社」とは、業務内容に少し違いがあります。
業界についてのざっくりとした紹介は、こちらの記事をご参考ください。
一方で、コロナ禍を経て、東京オリンピックや大阪万博など、大きなイベントを中心にコロナ禍以前の業績まで戻りつつある企業が多く、業界としては好調な状態といえるでしょう。
本シリーズでは、各企業の「売上高」、「営業利益」、「当期純利益」の数字をベースに、グラフで分かりやすく可視化しました。また、各企業がIR資料で区分けする商業領域別でもグラフ化をし、比較をしています。
この記事で取り上げる企業は
・株式会社乃村工藝社
・株式会社丹青社
・株式会社スペース
・株式会社博展
・株式会社船場
の5社です。
現在業界にいらっしゃる方であれば、どの会社が何に力を入れているのか、そしてこれからどの企業が伸びていくのか、という指標の参考になれば幸いです。
ディスプレイ業界の市場規模
まず、業界の市場規模と主要企業が占める割合をご紹介します。
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矢野経済研究所の調査によると、業界の市場規模はおよそ1.4兆円。
そのうち18%を上場企業5社が占め、乃村工藝社がトップのシェア率です。
トップ5社の業績
下図は、トップ5社の5年ごとの売上高を比較したグラフです。
※決算月は各社異なるため、おおよその年度でまとめています
※データの掲載順は、順不同です
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![](https://assets.st-note.com/img/1716510316595-8cq68RQsO1.png?width=1200)
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各社、コロナ禍前の水準に戻りつつある傾向だと読み取れます。
各社の概要紹介と領域別業績の分析
次に、各社の概要と当社独自視点での分析をご紹介します。
※各社の「会社概要」は、2024年5月31時点での情報です
※「時価総額」の出典はすべて「MINKABU」です(2024年5月31時点)
乃村工藝社
会社概要
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5か年業績グラフ
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平均営業利益率(5か年)4.8%
ディスプレイ業界を代表する企業である乃村工藝社は、その歴史も最も古く、従業員数も最も多い会社です。近年ではBリーグのスポンサーや北海道のボールパークプロジェクトのプロデュースなど、空間づくりにおける事業戦略を上流まで展開し、大型案件を獲得し、事業領域を拡大しています。
IR資料では、自社の空間事業領域を8つに分類しています。
・専門店
・百貨店
・量販店
・複合商業施設
・広報/販売促進
・博物館/美術館
・余暇施設
・博覧会
・イベント
・その他
各市場の業績をグラフ化したものが、こちらです。
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(乃村工藝社IR資料をもとに、当社が作成)
![](https://assets.st-note.com/img/1716526072019-1mIcrVvuDF.png?width=1200)
(乃村工藝社IR資料をもとに、当社が作成)
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「その他」を除けば、「専門店」が最も多いシェアを占め、最新の決算資料では「余暇施設」が拡大傾向にあります。
「余暇施設」の中には、ホテルの新改装やテーマパークの施工が含まれると決算書には記載されています。
「博覧会/イベント」市場においては、2022年2月期に数字が高くなっています。これは「東京オリンピック案件」の売上がほとんどを占めていると予想できます。
これらを踏まえると、2024年2月と2025年2月には大阪万博の売上分がプラスされると予想します。
大きなイベントのおかげで売上が上がるのは良いことですが、その分の人材をその案件に充当しないといけないため、イベント以外の分野では人材が不足し、そのツケはすべて現場に影響していきます。
流動的な市場の盛り上がりのためには、人材の適切な配分が喫緊の課題だと思います。
丹青社
会社概要
![](https://assets.st-note.com/img/1716526452292-WwQphOMKkH.png?width=1200)
5か年業績グラフ
![](https://assets.st-note.com/img/1716432769333-VBH8crv2TP.png?width=1200)
平均営業利益率(5か年)4.6%
乃村工藝社と並び、ディスプレイ業界を代表する企業の1つである丹青社は、ディスプレイ業界の中でもグループ会社との連携が強い企業です。
派遣業を主軸とする子会社が、人材不足を補っています。
また、「JDN(デザイン情報サイト )」というデザイン関連のメディアや、SDGsの視点で廃材を取り扱う「4-earth)という廃材品のECサイトの運用など、乃村工藝社とは違った視点から業界内の事業領域を拡大し、独自のポジションを築いています。
決算資料においても、分類する空間区別は乃村工藝社とは異なり、3つに分類しています。
・「商業/その他/施設」事業
・チェーンストア事業
・文化施設事業
各市場の業績をグラフ化したものが、こちら。
![](https://assets.st-note.com/img/1716526622042-eRIiu2SvZb.png?width=1200)
(丹青社IR資料をもとに、当社が作成)
![](https://assets.st-note.com/img/1716442334144-SJfCMp4xn3.png?width=1200)
売上高だけで比較すると、乃村工藝社よりは低いですが、市場別に見ると「文化施設」事業においては、肩を並べるほどの売上高を誇ります。
直近の案件だと、「福井県立恐竜博物館」など、地方各所の博物館や歴史館など、重要文化財を取り扱う空間の施工を得意としています。
文化施設空間の施工は地方が多く、地場のゼネコンや、設計会社と組んで推進することが多く、新設案件が多いため、年単位スパンでのプロジェクトになることが多いのです。
地方の協力会社とどれだけ良好な関係を築けていけるかが、今後の事業拡大・継続のカギとなるでしょう。
スペース
会社概要
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![](https://assets.st-note.com/img/1716445711022-7rGlQefo2T.png?width=1200)
平均営業利益率(5か年)4.8%
業界内で3番目の売上高のスペースは、前述の2社とは異なりイベント事業の売上の割合はきわめて少なく、内装分野の割合が多い構造となっています。
得意とするのは、専門店や商業施設などの分野が中心で、「内装監理室」(※1)のポジションで川上から案件を受注できる強みがあります。
決算書による市場分類は、次の5つです。
・複合商業施設
・食品スーパー
・各種専門店
・飲食店
・サービス等
どの市場も安定して売上高を徐々に高めています。
コロナ禍のときも特に経営的な大きなダメージは見受けられず、順調にコロナ禍前の水準に戻りつつあり、営業利益率も乃村工藝社と並ぶ数値です。
(※1)「内装監理室」とは、商業施設の事業主(デベロッパー)とテナントの間に立ち、総合的に監理、 指導など施設空間づくりの調整を行って速やかな開業へと導く立場のことです。別の機会に詳しく紹介させていただきます。
各市場の業績をグラフ化したものが、こちら。
![](https://assets.st-note.com/img/1716527542559-rf6BHyeSHv.png?width=1200)
(スペースIR資料をもとに、当社が作成)
![](https://assets.st-note.com/img/1716527562925-TZ33ynYVpm.png?width=1200)
(スペースIR資料をもとに、当社が作成)
![](https://assets.st-note.com/img/1716450001337-hcBybanRJs.png?width=1200)
スペースの大きな特徴は、営業・設計・施工というディスプレイ業界の一般的な職種の分類を、一貫して1人の担当者がすべてを担う点です。
もちろん案件や規模によっては外注して推進する部分もありますが、基本は1人の担当者が営業から設計、現場の施工までを担当するスタイルです。
このスタイルで推進するメリットとデメリットはもちろんあると思われますが、ディスプレイ業界特有の小規模案件においては、1人の担当者が数百万円~数千万円規模の案件をこなす方が楽しくできるときもあります。
その分業務量も多くなりがちですが、うまくやれば社内でも業界内でも独自のポジションを築くことができると思います。
博展
会社概要
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![](https://assets.st-note.com/img/1716450212066-zvsz0Zw2Ik.png?width=1200)
平均営業利益率(5か年)2.8%
今、業界内で最も勢いを感じるのが博展です。
コロナ禍においてはデジタル事業で大きく実績を残し、事業の規模では乃村工藝社や丹青社と比べて小さいですが、手がける空間施工の実績は、数年前までならその2社が担っていたような特殊な空間の施工を近年受注しています。
代表も若く、全体の平均年齢も若いのが特徴です。
博展は、扱う分野を次の4つに分類しています。
・リアルイベント
・デジタル
・商環境
・その他
売上の構成は、イベント産業がほとんどを占めます。
特に昨年の「ジャパンモビリティショー2023(旧TOKYOモーターショー)」では、大型のブース案件の受注を獲得し売上が好調となっています。
各市場の業績をグラフ化したものが、こちら。
![](https://assets.st-note.com/img/1716527976872-XpHxxiwIZ0.png?width=1200)
(博展IR資料をもとに、当社が作成)
![](https://assets.st-note.com/img/1716451406582-6Eg5hEEY6E.png?width=1200)
博展の特徴は、自社工場を所有している点です。
イベントや展示会事業を中心とするなら、自社の工場を保有し、現場特有の急な変更やトラブルに迅速に対応できる体制が必要不可欠です。
しかし、それは同時に「固定費」になるので、デメリットでもあります。
自社で工場を持つと、人材の適切な配置のために案件を優先的に回す必要があり、閑散期には協力会社への発注が少なくなり、関係値の維持が難しくなるのが難点です。案件の量によって協力会社の采配に注意が必要です。
船場
会社概要
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平均営業利益率(5か年)3.4%
船場は、業界内でも「エシカル活用」に力を入れています。
オフィス内にも、現場の廃材で作ったオフィス家具が置かれていて、空間づくりを起点に社会貢献の意識が高い印象があります。
若手の育成、社内のIT化にも積極的に取り組んでいる企業です。
さまざまなことにチャレンジし、文化を取り入れていく姿勢は他のディスプレイ業界のスピード感よりも長けていると感じます。
決算書では、自社の空間事業領域を3つに分類しています。
・専門店
・大型店/複合商業施設
・オフィス/余暇施設等(注力分野)
船場は、商業空間が中心で、特に百貨店などの大型複合商業施設分野に強みがあります。
各市場の業績をグラフ化したものが、こちら。
![](https://assets.st-note.com/img/1716528063347-glO5VL0CHx.png?width=1200)
(船場IR資料をもとに、当社が作成)
![](https://assets.st-note.com/img/1716452001335-5fyRQ1r1CP.png?width=1200)
三井系やイオン系などの大型ショッピングモールの案件にほとんどの確率で登場するのが船場です。
大型商業施設の場合、新築の時から内装工事を受注すると、そのまま館のルールを知っている施工会社に発注する方が発注者も楽なので、大型商業施設の案件の独特な特徴を戦略的に捉えています。
DX分野にも注力しており、他社にはない「DXレポート」をIR資料の中で公開している、まさに今後の成長が楽しみな企業です。
まとめ
以上、ディスプレイ業界を代表する5社について、当社独自目線の分析をお伝えしました。
本当はどの企業も、より深く考察した内容を書きたいところだったのですが、これだけの内容でもすでにボリューミーになってしまったので、また機会があれば書こうと思います。
それぞれに強みがあり、差別化がされているため、数値データやHPの情報だけで、どの会社が成長し、より進化を遂げていくのかは、実際に中で働いてみないと分からないですよね。
また、今回は取り上げなかった「株式会社ラックランド」や「株式会社セレスポ」など、他にも魅力的な企業はあるので、次の機会に書けたらいいな、と思います。
■2024.8.30追記
本記事の第2段「【最新】2024年度版ディスプレイ業界 上場企業の業績まとめPart2」を公開しております。こちらもぜひご覧ください。
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