チバユウスケ
今までの俺の人生において「憧れる」ことはとても重要な要素で、何かをはじめるきっかけとして必要不可欠だった。
その中でも特に憧れたチバユウスケという男に出会ったのは1997年の夏。
thee michelle gun elephantが「ゲット・アップ・ルーシー」というシングルを発表した夏。
中学一年、ソフトテニス部の練習をさぼりだらだらと家でテレビばかり見ていた俺は深夜にテレビ東京の「タワーカウントダウン」という番組でミッシェルを知った。
ノコギリみたいなギターのカッティングと戦車みたいなリズム隊、そして銀河系でいちばんかっこいいであろう不良みたいなボーカルの声と歌詞。
即座に机から真っ白なノートを取り出しブラウン管に表示された情報をできる限り書き込もうとしたが次の曲に切り替わってしまいノートには「ゲットアップルーシー」としか残せなかった。
次の日、自転車を国道沿いのレンタルショップに走らせCDコーナーへ向かう。
当時のシングルCDは短冊形ジャケットで8cmディスクが主流だったのでシングルのコーナーをくまなく探すが「ゲットアップルーシー」の書かれたCDは見当たらない。おかしいな、まだ発売前なのかな?と不安を募らせ棚の端から端まで探すが見当たらない。
背後にはアルバムコーナーがあって、安室奈美恵や華原朋美のアルバムが眩しく陳列されている。ふと、その棚の端っこに「マキシシングル」と表記された小さいコーナーがあった。アルバムCDサイズと同じシングルということをそのとき初めて知る。数枚が背表紙を向けたまま格納されていてなんとなく手に取る。その中の一枚にエロい恰好をした女の背中が大きく映されたジャケットがあり、中学一年の俺は本能的に手に取りその異彩を放つジャケットを凝視する。
裏を見ると、ゲット・アップ・ルーシーとプリントされた商品管理用のシールが貼ってあった。これだ。ここにあったのか。
家に帰り、怒られるギリギリの音量で聴く。
なんだこの音は。テレビで数十秒聴いた数百倍の衝撃がやってくる。
身体が震え、頭の中に見たことのない景色がパラパラ漫画のように展開される。音もかっこいいけど、この歌詞はなんていう人が書いているんだろう。
クレジットには作詞:チバユウスケと書かれていた。
チバさん、俺は今も憧れの森の中歩いています、眼は閉じたまま。
あなたの眼がもう開くことはないと思うととても悲しいです。
さよならベイビー
I LOVE YOU
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