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不登校児童に退学届要求をした目黒区教委が陳謝する事件についての雑感


不登校児童の増加問題

近年、日本の教育現場で不登校児童の数が増加している現象は深刻な問題となっています。この問題には家庭環境、友人関係、学校の雰囲気、さらには学業のプレッシャーなど多くの要因が絡み合っており、一概に特定の何かを原因と分析することは不可能です。

また、不登校の増加の背景には、学校という制度そのものの柔軟性の欠如や、個々の児童に対するサポート体制の不足が挙げられます。今回の目黒区の事例はそうしたサポートをすべき学校や教育委員会の不備や知識的な不足を浮き彫りにしたように見えます。

不登校児童への退学要求

今回の目黒区での問題は以下の通りです。

東京都目黒区の公立小学校で不登校になった男子児童が2023年、フリースクールに通うと決めた際、区教育委員会が保護者に対して「退学届」を提出するよう求めたことが判明した。

このトラブルにおいて不明なのは以下の点に関してです。

当初、保護者は学校側から「フリースクールに通っても学籍は残せる」と説明を受けたというが、1カ月後の同年6月、学校側が一転して保護者に電話で「二重学籍は認められず、退学届を出してほしい」と要求。驚いた保護者が区教委に問い合わせると「フリースクールに通わせることは就学義務違反に当たる」との説明を繰り返し受けたという。

言うまでもないことですが、不登校になった児童に対して学校や教育委員会が紋切型の対応しかしていないのはあまりにも理不尽です。教育現場が法律論に終始して、児童生徒の成長をないがしろにすることはあってはなりません。

しかしそれ以上に、今回のこの対応には法律や慣習的に考えても疑問符が付くものです。

フリースクールとは

問題の発端となっているフリースクールとはいかなる場所なのでしょうか。

不登校者の学びの場として、学習や居場所を提供する施設、通信制高校の学習をサポートするサポート校、不登校者を対象とする機関や施設、などがフリースクールと総称される。

Wikipedia 日本のフリースクール 

フリースクールが通常の小学校と最も異なる点は、学校教育法に規定された存在ではない、ということです。一般の公立や私立の小中学校や高等学校は学校教育法の第一条に規定された「学校」に分類されます。

これらの学校は国が決めた一定の基準を満たしており、設置や認可を各都道府県や市町村が請け負っています。そのためカリキュラムや設備、人員、そして児童生徒の管理において様々な制約を受けています。

一方でフリースクールはその制約を受けない代わりに、あくまでも私的団体が運営する私塾として運営されていることになります。当然ながら法律上は「学校」ではないため、フリースクールに在籍しているだけでは就学をしたとは認められません

教育委員会担当者の無知が原因?

ところが、現在においては、ほぼすべての地域、自治体においてフリースクールへの通学を学校の出席としてカウントする制度が存在します。

特に小中学校の場合、実質的に原級(留年)や退学といった制度が存在しないため、現在の在籍校(地域の公立学校)に学籍を維持したまま、フリースクールに通って卒業をするという制度が認められています。この制度は1992年から実施されています。

実際には、在籍校の校長が判断をすることになりますが、通常一般的なフリースクールに通うケースの場合、認められないことはほぼありません。そしてこうした問題に校長が独断で判断をするということは考えにくく、おそらくは教育委員会に相談をしたはずです。その結果が今回のものなのでしょう。実際、保護者が直接教育委員会に問い合わせ「就学義務違反」という文言が出たことからも明らかです。

正直、今回の問題の原因は教育委員会側の認識不足である可能性は極めて高いでしょう。しかし同時に謎なのはこの手の不登校対策としてすでに市民権を得ているようなフリースクールに並行して通う制度を担当者が知らない、あるいは決裁権者が知らなかったということです。

考えられるのが「区外」であるということからフリースクールではなく、私立の小学校と誤認した可能性です。それならば調査不足に関して大きな瑕疵があったと言わざるを得ません。あるいは単純に「無知」だったのか。謎は深まるばかりです。

良き教訓とすべし

目黒区教育委員会の事例は、不登校問題の本質を考える良い機会です。教育機関は、児童生徒一人ひとりの背景や状況を深く理解し、適切な支援を提供する責任があります。そのために、教育の現場では柔軟性と包括的なサポート体制の充実が求められるでしょう。

とはいえ、今回の事例を見ても明らかなように、行政側に判断を全て委ねてしまった場合、ミスを強引に押し切られる可能性がある、ということも十分にあるということです。きちんと自身で調べ、確認し、その上で主張することが必要だということを再確認させられた事件でした。

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