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「生徒のため」という美辞歴句を糊塗し、スタンドプレー好きの「自称やる気のある」現場教員の罪は重い


Yahooニュースの教員の働き方特集

昨年末になりますが、Yahooニュースで以下のような記事を見かけました。

関西テレビ「newsランナー」2023年6月5日放送分の「先生の一日を密着取材」と称する内容を文字起こししたもののようです。

この内容があまりにもひどいもので、正直な話これでは教員の希望者を減らすだけの番組になっているということにあきれ果ててしまいました。

「午前1時半」起床

記事の冒頭からとんでもない内容が連発します。

【松下隼司先生】「午前1時半に目が覚めましたね。(Q.今日だけ?)毎日ですね。毎日早いですね」
2人の子供の父親でもある松下先生は、夜は子供と一緒に早く寝ます。その分未明に起きて、学校でできなかった仕事や授業の準備をする毎日を送っています。

教員の仕事に関して言えば確かに時間内で終わり切れない、あるいは自身のスキルアップと授業準備が重複するため持ち帰り仕事が発生するということを全否定することはできません。

しかし、「午前1時半」に起床して仕事をしなければ間に合わないというのはどういった了見でしょうか。

これは明らかに異常な働き方であり、こうした働き方がスタンダードに見えるような職場や業界は常軌を逸しているといってよいでしょう。

早起きして朝活をするといった行動は見習うべきものではありますが、それにしても常識外れ過ぎる時間です。

経営者などのケースや、収入が極端に高い場合はまた別に考える余地もあるでしょうが、公務員の給料でこの時間に働かなければ仕事が終わらないというのはそもそも管理職や教育委員会が労務管理を一切できていないということでしょう。

「64秒」の早食い

加えてこの先生は給食を「64秒」で食べ終えるという内容が書かれています。

子供たちが食べ始めると、先生はお休みしている子に、授業の内容を伝える手紙を書き始めました。食事に手を付けたと思ったら、次の瞬間にはもう、“箸”から“鉛筆”に持ち替え、また手紙の続きです。
【松下先生】「ちょっとコピーしてくるね」
(Q.先生、食べ方いつもああなの?)
【児童】「うん」「汚いでしょ?」「パンなんかさ、こういくもんな」
この日、松下先生が席について給食を“食べていた”時間は「64秒」でした。

この後、昼休みに子供たちと遊ぶことで「やりがいを感じさせる」という構成になっていますが、これも正気の沙汰ではないでしょう。

普通の職業で「64秒」で食事をとるということは通常はあり得ません。

民間企業などにおいて「納期前に食べながら仕事をした」という話を聞くことはありますが、そもそもブラックな違法企業においての話です。

公務員なのにそうした違法状態が常態化していること、それを放置していること、そもそも休憩時間を確保していないことは管理者の管理責任が問われる事案です。

私自身、教員の職業病として早食いではありますが、流石に「64秒」ということはありません。
(もしかすると「64秒」で食べ終わっている可能性はありますが、休養をとる時間は確保しています)

一分で食事をとらなければ仕事に支障をきたすような現場は著しい人権侵害が発生しているのです。

この取材、放送は何の目的があって…

この番組や取材内容は果たして誰が何の目的で行っているのでしょうか。

もちろんテレビ局のような社会のハイエナからすれば、面白おかしくセンセーショナルな番組を作れば数字が取れて満足なのでしょうが、学校側のメリットが一切見えません。
(残念ながら私には彼らが善意の存在として社会に問題提起をしているという考えをすることは難しいようです)

一教員の立場からすれば、こうした極端な働き方を喜々として行っている方は教員志望者の数を減らし、逆に生徒からの要求レベルを不当に釣り上げて職場環境を悪化させる害悪でしかありません。

また、労務管理が一切できていない管理職や教育委員会の無能さをさらけ出している(それ自体には意味があるのかもしれませんが、自分の恥部をさらすことに恥じらいすらない)だけで、メリットは薄いはずなのです。

(Q.今の先生の仕事は「ブラック」と言われることもありますが?)
【泉野校長】「“ブラック”だけじゃない。もっとブラックよりも良いものは、教師の世界にはあると、僕は思っていますけど。若い人は思ってないのかもしれませんけどね」

その答えは取材に答えている校長の上記の言葉が表しているかもしれません。

どうやら彼は自校の教員の働き方を「美談」としか認識できない、労務管理の「ろ」の字すら理解できない人間のようです。

全員に責任がある

こうした労務管理のできない学校管理者、あるいはそれを放置し続ける設置者には大きな責任がありますし、彼らは労基法違反で処罰を受けるべきでしょう。

しかし繰り返しになりますが、現場の教員自身の自覚不足もまた大きな問題です。

「生徒のため」という美辞歴句を糊塗し、自分勝手なスタンドプレーを行い、持続性や代替性の欠如した働き方によって業務を肥大化させた「自称やる気のある」現場教員の罪は重いのです。

現代の若者が働きたい、少なくとも働ける、続けていけると考える職場環境を作ること、現場の教員一人ひとりがそれを自覚することが求められているのではないでしょうか。

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