短大はその役目を終える時が来たのかもしれない
募集停止が続く短期大学
短期大学の募集停止のニュースが今年度は立て続けに報道されています。2023年度にニュースになっているだけでも以下のような短大が2025年度からの募集を停止しています。
上智大学短期大学部
城西短期大学
岐阜聖徳学園大学短期大学部
池坊短期大学
龍谷大学短期大学部
美作大学短期大学部
鈴鹿大学短期大学部
奈良佐保短期大学
武庫川女子短期大学部
就実短期大学
安田女子短期大学
福岡女学院短期大学部
九州龍谷短期大学
私が確認しただけでも以上の大学が今年度に募集停止を発表しています。
これまでも短期大学の定員割れは問題になっていましたが、2023年度はその波が一気に大きく押し寄せた状況のようです。
社会構造の変化と短大の成立と隆盛
短期大学という学校区分の成立の歴史は戦後の新学制の確立時期にさかのぼります。
戦前において「大学」と呼ばれていたのは旧帝国大学、旧制官立大学(医科、文理科)などの国立大学や、慶応、早稲田、法政、明治、中央、日本、國学院、同志社など一部の私立大学のみです。
その後1948年の学制改革により、1949年に新制大学が発足しかつての旧制専門学校の多くが大学となりました。
この時に新制大学としての設置基準を満たさないものの、国民教育に寄与する学校を高等教育機関として認可する仕組みとして短期大学制度が生まれました。
短期大学には旧制女子専門学校を母体とする学校も多く、女子を対象とする女子短期大学に移行した学校も少なくありませんでした。
そこからさらに時は流れ、高度成長期、安定成長期を日本は迎えます。高等教育への進学率は増加し、多くの高校生が高等教育へと進むことになります。
しかし女子に対しての進学への抵抗感は少なからずあったようでした。また1985年に男女雇用機会均等法が成立し、総合職と一般職というカテゴライズで女子の門戸を開く大企業が増加しました。
その結果、女子短期大学は進学意識の向上と一般職への就職のしやすさなどと相まって1990年代前半には学生数が最大に増加します。
ポリティカルコレクトネス意識の低い時代において、自社の社員の結婚相手の供給源として短期大学制度はフル活用されて隆盛を誇ったといことになります。
平成不況と氷河期時代
その後、バブル崩壊と長い不況の時代に日本は入ります。
大企業はリストラを余儀なくされ、人員削減を行いました。当然ながら一般職の採用が大幅に減少、あるいは廃止となってしまい、新卒就職の状況は悪化します。
そのため「短期大学は就職に有利」という最も強いアピールポイントを失ってしまいます。さらに一般的な家庭のモデルが専業主婦を前提したものから、共働きへと移行、女性の社会進出も進み男女別学に対しての風当たりも強まっていきます。
またこの時期にポリティカルコネクトネスの高まりといった社会の空気感の変化に加えて、それまで根強い人気のあった短期大学の一つ、看護系の短期大学(3年制)が4年制に切り替わるなどの現実的な状況の変化があります。
これにより女子の4年制大学への進学意識が一般化し、短大は一部の希望者が進学する場所へと変貌します。
短期大学が役目を終える時代
特に家政系や文学教養系などのかつては「花嫁修業」的な側面の強い学科の多くは定員を満たさないようになりました。
これは社会が女性に求めるものが変化したこと、女性自身が望むものが変化したことを意味します。
人生80年時代を迎え、モラトリアムが長期化する中において2年制という学校の立ち位置が中途半端になるのは否めないのかもしれません。
4年制大学への進学率は6割に達しようとしていること、大学での学びの高度化により大学院進学を前提とするカリキュラムなども合わせると、現在において短期大学という制度はその社会的役割を終えようとしているのではないでしょうか。
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