「情報Ⅰ」の受験を必須とするが、配点を行わないという北海道大学の「小志」
2025年度の大学入試から、情報Ⅰの教科が増えることが確定しています。
これは新課程導入に伴う試験内容の変更によるもので、近年の社会全体のDX化に対応する最低限のリテラシーを高校生に求めるという意図で進められているものです。
大学入試に関しては「2年前予告」の原則があるため、この時点で必要科目などの発表を各大学が行っているところです。
その中でも最も大きなトピックは「情報Ⅰ」を入試科目として設定するかどうか、ということです。
各大学が方針を発表する中、物議を醸す方針を打ち出した大学が北海道大学です。
「情報Ⅰ」は配点しない
北海道大学が2022年の9月に発表した、令和7年度からの方針が話題になっています。
各学部、学科の教科科目を一覧にしたものが発表されているのですが、その中の【入学者選抜方法】が以下の通りです。
「情報Ⅰ」に関しては受験をしていなければ合格者としないが、成績は配点しない、というものです。
これを見て、「情報Ⅰ」を真剣に学習しようという受験生がどれほど存在するでしょうか。
国立大学協会の方針は「情報」の必須化
国立大学協会(以下国大協)はすでに教科としての「情報」を必須化することを決定しています。
基本方針として国大協はホームページで以下のようにまとめています。
国大協としては「情報」を「大学教育を受ける上での必要な基礎的な能力の一つ」として捉えており、「情報」に関わる知識や考え方などを大学入学者に求める能力として位置付けています。
また、学習の成果に関して「基礎的教科・科目についての学習の達成度を測る」という目的で6教科8科目を課す、としています。
北海道大学の「小志」
北海道大学の受験を必須とするが、配点はしないという方針は明らかに「情報」という教科の軽視であり、学習の達成度を測るという目的から逸脱しているように感じます。
また、それを理解した上で批判を逃れるために、「個別学力検査等の成績も同点の場合は,大学入学共通テストの情報Ⅰの成績を活用します。」という文言で、霞が関構文も真っ青な姑息な手法を駆使しています。
もちろん、個別の大学が試験をどのように取り扱うか、ということに関しては自由に決定できるものだということは理解できます。
しかし、北海道大学が真に共通テストの「情報」に価値を見出していないのであれば、初めから試験を必須にしなければよいのです。
こうした北海道大学の「小志」は大学名とその歴史を傷つけるだけではないでしょうか。
九州において現時点での影響は少ない
正直なところ、私の住む九州から北海道大学を受験する生徒はほとんどいないため、現時点では大きな影響はないでしょう。
しかし、こうした対応を許してしまうのであれば、共通テストの存在意義そのものが揺らいでいくのではないでしょうか。
さらに言えば、旧帝国大学がこうした学問への軽視を行うこと、なかでも「実学重視」を謳う北海道大学が「情報」を軽視するのは、今後の日本の学問の発展に大きな影を落とすことになりかねないのではないでしょうか。
北海道大学のこうした欺瞞に近いやり方を後追いする大学がないことを祈るばかりです。