「得意科目」を作ることは勉強のコツだが、こだわりすぎないことも重要
生徒面談の中で話題になることの一つが「得意科目」、「苦手科目」に関してのものです。
「得意科目」が無い生徒の悩みや、「苦手科目」の克服に関する話は多くの受験生が抱える大きな問題です。
「苦手科目」つぶしよりも「得意科目」を伸ばす方が効果は高い
受験勉強において最も不安になることの一つは「苦手科目」の存在です。
特に英語や数学といった配点の高い科目の場合、全体に与える影響も大きいことから、苦手を克服する方法を模索する生徒は少なくありません。
しかし、個人的には「苦手科目」を克服することはほぼ不可能だと考えています。
なぜならば、「苦手科目」が苦手である最も大きな理由は学習がほかの科目よりも遅れているからです。
確かに、その科目に集中的に時間を投下すれば克服は可能かもしれません。
しかし、普通にほかの科目と並行して学習する限りにおいては他の科目を追い抜くということは難しいでしょう。
それに加えて学習方法の最適化が為されていないケースが多いため、時間はかかるが成果が表れにくいというジレンマを抱えることになっています。
一方でその逆が「得意科目」に関してほとんどが成り立ちます。
そもそもがほかの科目より学習が進んでいる上に、学習方法の自己最適化が達成されているため、必然的に伸ばしやすい状況であるといえるでしょう。
そのため、学習を進める段階では間違いなく「得意科目」をある程度カンストするまで伸ばすことがコツとなります。
かなり高いレベルに達したのちに伸びが鈍化することが目に見えてわかってから「苦手科目」に着手するのは受験勉強のセオリーとも言えます。
「得意科目」が無い場合はまず探す、作る、思い込む
「得意科目」が無いという悩みは面談中に頻繁に出てきます。
とはいえこうした生徒の大半は得意な科目は無いが、「苦手科目」はしっかりと存在しています。
そういった生徒に対しては「苦手科目」以外の中から取り組みやすいと感じる科目を仮の「得意科目」にしてみようと提案します。
そうすることで「得意科目」である可能性を自分の中で深く考えなおして「得意」の理由に気づくきっかけとなります。
また、仮にその科目が「得意科目」というほどではなかったとしても、自分の適性や思考の癖を理解する手助けとなります。
体感的には、この仮の「得意科目」は得意になるのが7割、得意にできずに別の科目を伸ばすが3割といったところでしょうか。
「苦手科目」も無い生徒
ところが「得意科目」が無いが、「苦手科目」もまた無い、という生徒がまれに存在します。
彼(彼女)に対しては私は『「得意科目」も「苦手科目」も無く、アールマイティなバランス型という長所を生かそう』とアドバイスをしています。
この反応を無責任、いい加減と感じる人もいるかもしれません。
しかし、そもそも「得意科目」を作ることの目的は何でしょうか。
それは得点源を作るために加えて、長所を作る、自覚するという目的が含まれています。
バランス型というのは一見すると強みの無さが目立ちがちですが、弱点がないという意味では非常に強力な長所でもあるのです。
大事なことは「得意科目」を作ること自体は長所を伸ばすための手段に過ぎず、本来の目的ではありません。
あくまでも長所を伸ばすための手段であり、「得意科目」を作ること自体が自己目的化してはいけないのです。
このあたりのさじ加減はあまり可視化されていませんが、受験勉強などのマネジメント、指導者に求められる重要なスキルと言えるのでないでしょうか。