若手指導ポストを新設すれば若手教員の育成は上手くいくのか?
若手指導ポストの新設
文部科学省が公立小中学校に若手教員の指導にあたるポストを新設する方針であるというニュースが昨今話題になっていました。
世代の偏りが大きく退職者と初任者の割合がアンバランスになり、一般教諭の若手の率が増加する中で現場での指導者を増やしたいという思惑なのでしょう。
どこかで聞いた話
そもそもこの話、どうにも違和感があります。これまでも「指導教諭」というポストがあったように記憶しているのですが、その制度はどうなったのでしょうか。
実は2008年度から「主幹教諭」、「指導教諭」という制度はすでに導入されているようです。ただ、あくまでも各自治体、教育委員会の判断で設置するのが原則のようで、全国一律に実施する状態ではなかったようです。
従来存在していた「指導教諭」とはどんな役職なのでしょうか。
こうした制度を全国一律に導入するというのが今回の目的のようです。
指導教諭制度の実効性
では実際に指導教諭の制度を導入している自治体ではどのような状況なのでしょうか。
ここにあるように2019年度の段階で導入率は37%とあまり配置が進んでいるようには見えません。
その理由としてはやはり財政的な問題が原因となっているようです。特に指導教諭の場合は加配措置が認められないため、仮に指導教諭制度を入れたとしても人員不足自体には寄与しません。(主幹教諭の場合は加配の対象になるようです)
押田氏の報告によると、実感としては指導教諭制度自体への若手への指導効果を好意的にとらえる意見もあるようですが、定量的にどこまでの効果があったかは示されていないようです。
デメリットはないのか
こうした制度のデメリットも当然存在します。この指導教諭に選任された場合、自分の業務に加えて指導業務が公的に重なることになります。ところが指導教諭のこれまでの業務が軽減される(単位数の減少や担任免除)ことはあまり考えられないでしょう。現実には教頭が担任を兼任している学校さえあるのに、指導教諭というだけでの軽減は不可能でしょう。
またこれによって他の教員からは「何かあればまず指導教諭に聞けよ」という空気感が間違いなく発生します。教員組織の長所であり強みはフラットな組織と人員の柔軟な運用にあります。仮に肩書とポジションで規定してしまえば、現在は余裕のある現場の教員同士でフォローしていた体制も失われてしまうでしょう。
個人的に疑問なのは、現行の教員組織において上意下達的ピラミッド組織が果たして機能し得るのかということです。
仮に民間企業のような組織を構築し、システム化したいのならば学校制度そのものを改変し作り変えることが必要なのではないでしょうか。
それをせずに、小手先の改革でお茶を濁すような真似が果たしてうまくいくのかどうか、まずは今回の指導教諭制度を見守っていきたいと思います。