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今度のやり玉は「ショート動画」:「最近の若者は…」症候群


「最近の若者は…」

「最近の若者は…」という言葉は古代から言われていた、などという笑い話がありますが、SNSやインターネット全盛の現代にあっても変わらぬ流行を保っているようです。

今度のやり玉は「ショート動画」とその中毒性があげられています。

ゲーム脳

私が少年時代にこうした若者批判のやり玉、原因として挙げられていたのがテレビゲームです。

当時はゲームが若者をバカにする、という表現が跋扈し、昼間の下世話なワイドショーから討論番組など、様々な場所でしたり顔のコメンテーターたちがゲームと若者を絡めて批判していました。

いわく、ゲームのようにリセットできる感覚で人生を生きている、ゲーム感覚で真剣みが無い、といった具合です。

その中でも最もトンデモなのが「ゲーム脳」です。ゲームをやることで脳波が異常をきたし、認知症と同様の症状になるといったものです。

この説は日本大学文理学部の教授であり脳科学者の森昭雄が提唱したものです。彼の調査や主張は科学的根拠が薄弱であったため、いわゆる「トンデモ」扱いを後にはされるに至りましたが、その少し前まではメディアでは盛んに用いられる表現でした。

そして今度はそのお鉢が「ショート動画」に回ってきたようです。

「ショート動画」

さて、では「ショート動画」にはどのような危険性が潜んでいるのでしょうか。元記事の科学的根拠を示す部分を探してみましょう。

しかし、残念ながら「ショート動画」が人間の能力を低下させる根拠はこの記事の中には書かれていないようです。

その代わり、以下のように書かれています。

彼らは、15秒程度の『ショート動画』と呼ばれるものがどんどん目の前で移り変わっていくのを4時間見続けているので、『集中力』は養われるどころか、失われていっています」
その証拠に、動画視聴などのアプリの利用時間が長いほど教科ごとの正答率は低くなり、「4時間以上」は「30分未満」より、小6で17~18点、中3では13~19点も低い成績をマークしていた。小中とも、算数・数学の点数差が最も大きかった。

なるほど、4時間以上ショート動画を見ることで20点近い点数の減少が見られる、ということのようです。

これは深刻な事態でしょう。

この記事を書いた人の論理性が、です。

4時間以上「ショート動画」を見る子供

一日のうち学校から帰ってからの子供の時間はそれほど多くありません。

単純にすべての時間だけで6~8時間、食事や風呂などを入れれば4~6時間程度でしょう。

さて、この時間の中で4時間も「ショート動画」を見ている子供の成績が良いことがあるでしょうか。

常識的に考えて、こうした子供のほとんどは授業の復習も、宿題も、さらに翌日の準備もおざなりでしょう。夜中までスマホを触っていることもざらであり、授業に身が入っているとも考えられません。

加えてそれを許す家庭の状況、保護者の教育への関心を考えればその点差は必然と言えます。

「ショート動画」に中毒性は無いのか?

では「ショート動画」に中毒性は無いのか、と問われるとその答えも「否」でしょう。

これは定量的、科学的な根拠はありませんが私自身が利用しても感じますが興味を引く動画を次々と短時間で見ることができる「ショート動画」は極めて中毒性が高いメディアです。

何の気なしにタップして、気づくと30分以上経っているということは経験上何回もあります。

しかし、一方でそうした中毒性のあるものはこれまでも多く存在していました。

ゲームもそうですし、テレビやマンガだってかつてはそう言われていました。一億層白痴化と大宅壮一が語ったのは半世紀以上前のことです。

明治期には小説だって同様の扱いを受けていたと聞きます。

要は未成年、未成熟な子供が中毒性の高いものを与えるばかりで、制限をかけていない家庭や保護者の問題でしかないのです。

「それ、あなたの感想ですよね?」

以下は記事中の「ショート動画」批判です。

「ゲームが学力低下を招くと言われていたころよりも、もっと深刻な状態です」そう言って顔をしかめるのは、長年進路指導部に所属し、子どもたちの学力に注視し続けてきた聡子さん(58歳・仮名)だ。
中略
「2017年以降、子どもたちの集中力は著しく低下しています。ものの10秒程度で、目の前のものに飽きてしまうのは今や当たり前のことのようになってしまっています。物事を表面的にしかとらえられない子どもが増えたし、理解力もかなり落ちている」

私もここ20年ほど教員をしてきて、中高生の様子を間近で見てきましたが、こうした印象を受けたことはありません。もちろん、時代によって子供たちの雰囲気や空気感、流行その他は大きく変わっていますが、本質的に能力が低下したりしたという定量的な結果は見たことがありません。

ネット著名人(決して人間性の良い方とは思えませんが)の言葉を借りるならば、まさに「それ、あなたの感想ですよね?」といったところでしょう。

「もの」に責任をなすりつけない

学力の低下にしても、集中力の低下にしても「もの」が直接的な原因であることはほとんどありません。

それらはすべて人間が自分の判断で利用しているに過ぎないからです。

AIやICTにしても同様で、大事なのはコントロールをすること、本人が未成熟ならば保護者がそれを代替することが重要であって、「もの」を犯人呼ばわりすることが根本的な解決にはなりません。

そうした振る舞いは進歩や技術を否定し、衰退の道を歩むことにしかならないのではないでしょうか。

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