スクールカウンセラーやソーシャルワーカーと教員は両立できるわけがない
岸田総理が衆院予算委員会で心理・福祉の専門性持った教員の養成の制度設計に関して言及をしました。
萩生田政調会長は以下のように答弁をしています。
一見するとまっとうな指摘のように見えます。果たしてこうした施策は可能なのでしょうか。
スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーとはどんな仕事か
スクールカウンセラー(SC)とはどんな仕事でしょうか。
日本国内においては、「スクールカウンセラー」という単独の資格は存在せず、公認心理師、臨床心理士、精神科医などの資格を持つ人を「スクールカウンセラー資格要件」を満たすものとして任用しています。
職務の主な内容は、学校内における精神疾患などを抱えた生徒のカウンセリングを行い、教員や保護者へ助言を行うなどになります。
では、スクールソーシャルワーカー(SSW)はどんな仕事でしょうか。
学校内の関係や家庭環境などの問題を抱える生徒の本人や周囲に働きかけ、支援機関などに連携や調整を行うのが主な仕事です。
例えば家庭内で虐待を受けていたり、学校内外でのいじめを受けていたりした場合に、直接的に環境改善に取り組む仕事がスクールソーシャルワーカーであると言えます。
教員とSC、SSWは兼務可能なのか
近年はスクールカウンセラーという職業の知名度が向上したこともあり、困ったときに相談する文化がある程度浸透してきました。
しかし、少し前までは担任や養護教諭などがそうした業務を兼務していました。(現在もそうした学校は多いようです)
ところが、心理的な相談を学校教員にすることが難しいケースも多々あり、専門職を学校に導入したという経緯があります。
現状では、多くの学校においてもスクールソーシャルワーカーの仕事を担任教員が担っているケースは多いようですが、専門的知識のない教員が行っても関係機関との連携がうまくいかないことが問題化しているようです。
そもそも、こうした支援業務に携わる職業と、教員を兼務するということ自体が難しいのではないでしょうか。
支援業務は基本的に生徒の側に全面的に立つ必要があります。あくまでもその生徒の心理状態や環境を改善することが目的だからです。
一方で教員は学校という教育機関の職員であり、「卒業」という「資格」の許認可業務を仕事としており、公平性を担保する必要があります。
そのため、全面的に味方となる支援業務との相性が悪く、これまで二足、三足の草鞋を履いていたこと自体がむしろ問題であったのです。
ここ最近の分業化が進む流れはむしろ当然であり、これまでが無理を通していたにすぎないのです。
時代に逆行する制度の導入
そう考えると、今回の国会での答弁内容は明らかに時代に逆行する制度を導入しているように見えます。
支援業務の従事者が不足しているのならば、免許取得者や人材育成を行うのが本筋であり、教員に兼務をさせるというのはあまりにもお粗末な考えです。
教員の残業代不払いや定額働かせ放題といった問題はようやく表に出てきたばかりです。その代表が部活動に関わるものです。
スポーツインストラクターや文化活動指導者としての資格を持たない教員に部活動という無償労働を長期間強いた弊害が顕在化しています。
その解決として、部活動の地域移行を計画しましたが道半ばで頓挫する空気すらあるのが現状です。
その上に教員に更なる業務を課すというのは、どう考えても正気の沙汰とは思えません。
そもそも片手間で支援業務に携わることができるという安易な発想自体が、専門家や資格取得者への冒涜と言えます。
早急に撤回し、支援業務従事者を増やす方向での改革への転換をすべきではないでしょうか。