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医療系学部の国試合格率引き上げの大量留年措置は実は教育的には正しいのかもしれない

先日、鶴見大学の歯学部において卒業前の学生が大量留年するというニュースが報道されていました。

この事案に関してはアカハラなどの噂もささやかれていて、内部の事情も不明なため個別の言及は避けたいと思います。

しかし、こうした国家試験合格率を引き上げるために学力不足の学生を卒業延期するという措置自体は医療系学部では以前から知られていことではあります。

国家試験合格率と学生募集

歯学部や薬学部の場合その受験難度の低下は近年著しく、いわゆるボーダーフリーと呼ばれるレベルの大学も存在します。

そうした学生を受け入れて教育を行い、医療人として送り出す大学の苦労は相当なものになります。

残念ながら学生の中には学習習慣が無かったり、意欲が極端に低かったりするケースが少なくありません。

一方でこうした医療系学部においては必ず出口に国家試験という関門が存在します。

国家試験の合格率は公表されており、これは大学の評価や次年度以降の学生募集にも大きく左右する数値となります。

当然ながら国家試験に合格する可能性の低い学生を卒業させても合格率が低下するため、大学側は卒業試験で網に掛けて合格可能性の低い学生を留年させるという手段で合格率の低下を防いでいます。

資格取得を重視する医療系の学部の場合、大学名やブランドに価値がないわけではありませんが、受験者の多くはその資格取得率の高低で大学を選択することが多いようです。

そのため、国家試験合格率は大学の生き残りをかけた最終防衛ラインと言っても過言ではない、ということになります。

ちなみに医学科は私立大学の最低レベルであってもかなりの難関入試であり、受験者のレベルは高いためにこうした問題はそれほど顕在化していないようです。(もちろん卒業試験を厳しくする大学は存在します)

商業主義ではなく、人材の質の保証という側面

このような卒業試験による線引きは一見すると大学側の商業主義的な都合から行われているようであり、批判を免れないようにも感じます。

しかし、私自身としてはこの事案に関してはそれほど悪感情を持っていません。

むしろ、大学側のこうしたやり方は結果的には教育的に意義あるものですらないのか、と感じる部分があります。

なぜならば、国家試験に合格する可能性のある学生しか卒業させないという制度そのものが出口を狭め、人材の質の保証につながるとともに大学側の教育活動に対する熱意にもつながるからです。

日本の大学は入るのは難しいが、出るのは簡単と長らく揶揄されてきました。そのため、学歴が何を修得したかではなく、どの大学に入学したか、というシグナリング効果的な意味しか持たなくなっていました。

現在は多くの大学で単位認定がかつてよりは厳しくなっていますが、国家試験合格ほどの厳しい要件で卒業認定を行う大学は稀です。

一方で入学に関しては推薦型や総合型など、入試が多様化し入りやすくなっている大学が増加したのも事実です。

そうした大学入試の現状において、入学時の学力に依らず卒業段階で国家試験合格レベルを満たさない学生を留め置くという制度は教育的意義が深いとも言えるのではないでしょうか。

医療系以外の学部にも求められる制度かもしれない

今回話題になった鶴見大学にしても、あるいはBFと揶揄される大学の全てがそうした社会正義的側面から卒業延期を行っているのかは不明です。

それぞれの大学の財務状況などによってその事情もことなるため、十把一絡げに議論することはできないでしょう。

また、国立大学の医学科などでは国家試験に不合格の学生を卒業させており、そうした学生の再受験の国家試験合格率が低いことも統計データに表れています。

ますます大学に入りやすくなっている現代において、卒業の段階である一定の人材の質を保証する制度は国家試験の無い医療系以外にも必要なのかもしれません。

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