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【題未定】最近はまっているマンガ、「酒のほそ道」【エッセイ】

 大人になってからというもの、マンガを読む機会が激減した。これはマンガに飽きた、面白いマンガが減ったということを意味するわけではない。おそらくはインターネットを自由に使える環境に身を置くようになったために、必然的に可処分時間の取り合いに負けた、という理由が大きいのかもしれない。

 スマホを持つようになってからその傾向はさらに強まった。ネット記事や掲示板サイトなどを読み漁っているだけで時間が過ぎ去ってしまい、なかなかマンガに手が伸びなくなった。YouTubeや動画ストリーミングサービスはその傾向に拍車をかけた。コンテンツを消費したいならばアニメや映画を、暇つぶしならば動画サイトという流れだ。

 本を読むこともあるが、それこそ小説やライトノベルなどコンテンツ消費型のものは読まなくなった。それ以外の情報収集や知識の獲得をメインとする読書しかしなくなったように感じる。マンガや小説を楽しむ時間がかつてよりも極端に減ったのは間違いない。

 ところがここ2年ほどでその状況に大きな変化があった。スマホのマンガサイトに登録をしたからだ。スマホでマンガを読めるのは手軽だし、一日一話を無料で読めるために、ちょっとした空き時間にマンガを楽しむようになった。

 そうした隙間マンガに最適であり、最近はまって読んでいるのがラズウェル細木氏の書いた「酒のほそ道」である。これは酒飲みのサラリーマン、岩間宗達が居酒屋や花見で酒とつまみに興じる様子を描いた小噺といったマンガだ。内容は一話完結のために、一日一話読む形式にマッチしているし、内容的に大して真剣な話もないためにスマホで流し読むのに適している。

 このマンガの肝は何といってもつまみ関連のちょっとした蘊蓄と、主人公の岩間宗達のサイコパスな言動だ。こだわりが強く、しかしその一方で美味しそうなものを見てすぐに付和雷同する主人公が酒に興じる様子がなんとも興味深いのだ。じわじわと面白さが浸透する、そんなマンガである。

 この「酒のほそ道」は一時期なんJ(5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の板の一つで、なんでも実況Jの略称)などでも話題になったことがある。小料理屋にかまぼこを持ち込んで酒だけ注文して飲む話(帰った後に店主から塩をまかれるのだが)などはその後もXなどで引用されている。常識的にどうかな、という行動を主人公がとっても不快にならないのは、周囲が呆れたり諫めたりる姿が描かれているからだろう。

 それにしても不思議なのは、スマホマンガなど無かった時代に書かれたマンガが今も連載を継続していて、なおかつスマホの一話読みに最適化しているという事実だ。技術の進歩が過去の作品とマッチをするというのは何とも不思議な感覚を覚える。

 「酒のほそ道」は現在55巻まで発行されており、週刊漫画ゴラクへの連載は1994年からだという。もう30年も連載しているということだ。(ちなみにワンピースは1997年から連載らしい)作者も68歳となっており、いつまで連載が続くのかは心配なところではあるが、ぜひとも末永く続いてほしいと願うばかりである。


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