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普通高校が総定員の半数以上を学力試験無しで入学させる特色化選抜という闇


県立高校の特色化選抜

近年、推薦入試ではない高校入試のシステムが普及しつつあります。自治体によっても名前が変わりますが、一般的には「特色化選抜」と呼ばれる受験方法です。

この選抜方式は推薦書を必要としないということが従来の推薦入試と最も異なる点です。

そのため、学校長が推薦書を出す(実際には担任が作成しているのですが)手間が省けるという教員側からの業務的なメリットもあり、普及が進んでいるようです。

福岡県では来春の入試でさらに採用校10校増加し、71校で実施する予定のようです。

学力試験が全くない試験

特色化選抜と呼ばれる選抜方式の最も大きな特徴の一つは学力試験が行われないことです。

その代わりに調査書の評定を確認し、そこで合否が決定することになります。

学力試験を全く行わないことに関して、個人的には高等学校での学びに支障をきたす可能性があるため、決して賛成できるものではありません。

大学入試での選抜でも国公立大学は共通テストを課していますし、課さない場合は小論文などの入試が国語力や英語力を聞く前提になっているケースが多いためそこまで大学での学びに直結しないようです。
(私立大学の場合は何でもありで入学させているところもありますが)

高校入試においても、それまで推薦入試と呼ばれてきた形式の場合、学力試験を行っていないため、一見すると推薦から特色化への変更は看板の架け替えに過ぎないのでは、とも見えます。

しかし実はもっとも重要な部分の変更が行われており、それこそがもっとも深刻な問題を抱えているのです。

推薦の募集人数と特色化選抜の募集人数

その問題とは、募集人数の変更です。

推薦入試は一般的に普通高校の場合総定員の1~2割、実業系は半数前後の募集を前提としたシステムです。

そのため入学後には内申点が高い推薦組と学力が担保された一般組という多様性が生まれることで集団を活性化させていました。

ところが特色化選抜の場合、その割合を大きく超えて募集している学校がかなりの数存在しています。以下はその一部です。

特色化人数/総定員
A高校:140/200 B高校:126/140 C高校:64/80
D高校:330/440 E高校:220/280 F高校:230/280

正確に言えば特色化選抜の人数は「内定者上限人数(目安)」とされています。

つまりこれ以上内定を出す可能性もあるということです。
(あるいは受験者が集まらず半分程度になることもあるわけですが)

普通高校が学力試験を行わない

問題なのはこれらはすべて普通高校、あるいは普通科における合格内定人数の目安であるということです。

普通高校は基本的に五教科を中心に学習し、上級の教育機関、基本的には大学を目指す課程に教育機関です。

ところがその教育機関に入学する大多数が記述式の学力試験を受験せずに、学力が担保されないまま入っているというのは明らかに矛盾をしています。

これが実業系の学校であれば、上記のような割合に関しても合理性が存在するでしょう。

しかし、普通高校において同様の割合というのは、どう考えても合格ラインを下げて無理やり生徒を集めようとしているようにしか見えないのです。

学科再編をすべきでは

上に上げた例の多くは過疎地や人口減少地域の学校、あるいは都市部の周辺地域の学校の為、少子化に加えて交通網が発達した現代においては選ばれにくい学校となっています。

そのために受験のハードルを下げて、かつ早期に入試が終わる体制を整えて生徒確保を行っているのでしょう。

しかし果たしてその行為は本当に生徒のため、地域の為になっているのでしょうか。

公立学校はあくまでも公益になるがゆえに公立なわけです。生徒確保を自己目的化してしまっては大学への進学指導もおぼつかなくなり、自身の存在意義を否定しているだけのように見えます。

こうした無理を通すような変更を行うぐらいならば、人気のある実業系の学科を設置するなど地域のニーズに応じた学科再編をおこなうべきではないでしょうか。

今回の内容に関しては私学に勤務する私のポジショントークを多分に含んでいます。

しかし、そうはいっても、定員数の7~8割を特色化選抜の調査書、面接、作文で合格させるシステムに関しては立ち位置云々は別問題として、一教育関係者として疑問を抱かずにはいられないのです。

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