成功者の語る「成功の秘訣」こそ当てにならない

最近は書店で本を買うという機会がめっきり減ってしまい、なかなか書店に直接出かけるということも少なくなりました。

特にここ数年は市街地に出掛けづらい状況ということもあり、足が遠のいていましたが、先日久しぶりに街中へ外出し、書店を歩き回ってみました。

感染症関係の本が増えているのは印象的でしたが、やはり定番はインフルエンサーやカリスマ経営者などの成功談とその秘訣といった種類のものが多く、何か所にもそうした系統の本が平積みされていました。

いつの時代も成功モデルを求める

成功モデルにあこがれるのはいつの時代も変わりません。

かつては石油王ロックフェラーや鉄鋼王カーネギー、日本の成功者としては松下幸之助や本田宗一郎などです。

現在もそれらの人々の言葉を伝える本が書店の一角を占めるなど、その影響力はいまだに大きいでしょう。

現代で言えば、スティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、日本人ならば孫正義や稲森和夫などであり、そうした人たちの成功を称え、分析した書籍で溢れています。

人は誰しもが成功モデルにあこがれるし、そこから学び取ろうとする気持ちも十分理解できます。

成功者は「過去」の存在にすぎない

そうした人達からの学びを否定はしませんが、注意しなければならないのは、現代の成功者もまた「過去」の成功者に過ぎないということです。

成功者と評価されるという場合、大抵はそれより以前に取り組んでいた事業や活動の業績が実を結び、花開いたということになるでしょう。

従って、現在評価されている人達はあたかも現代の最先端を走っているように見えるが、実際には過去の栄光に対する評価に過ぎません。

そうした人たちの「成功の秘訣」には普遍的な要素は含まれるとしても現在や、これからの時代の流れに対応する情報は少ないのではないでしょうか。

もちろん、中には現在進行形で活躍している人もいるでしょう。しかし、一度成功した人の再評価という意味では、ゼロベースからのスタートの参考にはなりにくいでしょう。

生存者バイアス

そもそも、成功者たちの「成功の秘訣」には生存者バイアスが多分に含まれます。

生存者バイアス(せいぞんしゃバイアス、英語: survivorship bias、survival bias)または生存バイアス(せいぞんバイアス)とは、何らかの選択過程を通過した人・物・事のみを基準として判断を行い、その結果には該当しない人・物・事が見えなくなることである。選択バイアスの一種である。
~中略~
生存者バイアスの例として、ある事故の生存者の話を聞いて、「その事故はそれほど危険ではなかった」と判断するという事例がある。それは、話を聞く相手が全て「生き残った人」だからである。たとえ事故による死者数を知っていたとしても、当然死んだ人達の話を聞く方法はなく、それがバイアスにつながる。

Wikipediaより引用  生存者バイアス

成功者の多くは、無謀とも思える挑戦をして、そこに打ち勝って成功者となっています。

そうして得た成功に対して、「挑戦をする勇気がない」、「○○を徹底していない」etc…、だから世の人たちは成功できないのだ、といった文脈で語られることがしばしば存在します。

しかし、そうした挑戦に敗れていった敗者達の数は成功者の何十、何百倍も存在しているのです。成功例だけを見て、成功の秘訣を分析するのは明らかに生存者バイアスがかかった誤った情報です。

成功者の語る「成功の秘訣」を全て行ってもなお失敗している人は成功者の数を優に超えているのです。

参考にすべきは「失敗」経験

では参考にすべきは何か、この答えに対して考えうるものは敗者の「失敗」経験であると思うのです。

志高く、敗れた人の話の中にこそ、失敗につながる要因が隠されているのではないでしょうか。

とはいえ、絶対的な失敗の要因を探しても意味がありません。探して見つかるものでもないでしょう。(ギャンブルにドはまりするなど、たまにはありますが)

そうではなく、やるべきだと思っていたのにやっていなかった、見過ごしていた、甘く考えていた、こうしたものにこそ価値があるのではないでしょうか。

ホリエモンの失敗経験

私はホリエモンのYouTubeなどを頻繁に見ていますし、彼の考え方にある種のシンパシーを感じる部分があります。ゼロ高の立ち上げなども評価できると考えています。

彼は現在、「WAGYUMAFIA」という高級飲食店や「HIU」というオンラインサロンを経営し、「インターステラテクノロジー」という国産ロケットの企業に協賛するなど多様な活動をして、それなりの成功を収めています。

しかし、彼の話の最も面白く、興味深く、ためになるのはかつての「ライブドア」社長時代から衆院選を経て有価証券報告書虚偽記載容疑で逮捕、起訴、収監されるというところです。
(そのため彼の現在の著作よりも、そうした体験談に興味があります)

もちろん、有価証券報告書虚偽記載は犯罪行為ではありますが、自社株のつり上げ行為自体は当時はグレーゾーンでしたし、拡大期の企業の場合は次期決算でどちらにしろ業績を上げて株価を更新するため、通常立件は考えにくい事案でもありました。

にもかかわらず逮捕までに至ったのは、旧体制に対する彼の挑発的な言動や拝金主義者のように偽悪的な態度が大きなきっかけになったというのは間違いないでしょう。(当時のマスコミ財界に真っ向から喧嘩をしかけた)

成否が拮抗する場合は異なる

「成功の秘訣」の存在価値は低いと考えているのは、あくまで一部の成功者と大多数の敗者という構図においての話です。

成否の割合が拮抗するものに関しては、成功の秘訣にも一定の信ぴょう性はあるでしょう。

大事なことは、「成功の秘訣」にしても、「失敗原因」にしても必要以上に成功者を神格化せず、敗者を蔑まず是々非々で話を聞き、本を読むことです。

そういったことを考えていたために、せっかく書店へ行ったのに本を買いそびれてしまった、というわけです。

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