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石丸氏の都知事選出馬表明が顕在化させた東京都民の地方蔑視:首都圏と地方の溝の大きさ
盛り上がりそうな都知事選
東京都知事選に関してにわかに盛り上がっています。その原因となったのは現在広島県の安芸高田市で市長を務める石丸伸二氏の都知事選出馬の意向の発表です。
この内容に関してあらかじめ断っておくと、私自身は石丸氏を支持するわけでもないし、現知事の小池百合子氏やそれ以外の候補に対して支持、不支持の意見が明確にあるわけではないということです。
そもそも東京都民でない私にとって、選挙自体は直接的には関係が無い話題でもあり、あくまでも中立に近い視点での意見ということはここに明記しておきます。
(首都である知事が誰であるか、どんな政策を行うかは地方都市にも大きく影響がある事案ではあるため、まったく無関心というわけではないのですが)
石丸伸二という人物
石丸氏は全国的にも注目されている若手政治家の一人です。その理由は彼の就任時の年齢、30代で市長という点があります。しかしそれ以上に彼を有名にしたのはYouTubeなどでの切り抜き動画の存在でしょう。
居眠り議員に対する「恥を知れ」発言や議会での市議との議論(というよりもお説教に近いですが)を見たことのない人は少ないのではないでしょうか。また、中国新聞の胡子記者とのやり取りで記者をやり込める姿も印象的でした。
ネット文化における旧世代への反発、高齢世代への不満やマスコミへの不信感を上手く利用して名を上げた政治家と言えるでしょう。
石丸氏の政策に関して
石丸氏は都知事としての政策に関して現時点では多くを語ってはいません。
ただ目標としては以下のように述べています。
「私が都知事を目指し、実行していきたいのは東京の発展、そして地方の発展、すなわち日本の発展だ。日本の総人口は次の20年間でおよそ1300万人減少し、多くの自治体が消滅に向かっている。46の道府県と密にコミュニケーションをとって多極分散を実現し、東京の過密を解消することで東京を世界で一番住みやすい街にできる」
東京の過密化を解消し、地方分散を目的とするために地方都市の市長から首都の知事へ鞍替えをするという考えなのでしょう。
冷静に考えて、この政策目標がどこまで東京都民に受け入れられるかは微妙です。確かに過密化は問題となっており、また地方と東京の極端な格差が少子高齢化などの問題の原因の一つではあります。
こうした解消は国家規模での経済発展や国土保全といった観点で見れば意味があるのかもしれませんが、果たして現在東京に住む住民がこれを望むのかと言われるとかなり微妙でしょう。
東京に住む人達の地方蔑視が顕在化
正直なところ、石丸氏の政策内容やこれまでの政治的な実績(地方都市における市長1期)で現実的に都知事選で勝負になるか、と言われるとかなり難しいのではないでしょうか。
小池現都知事は出馬の意向を現時点では明確にしていませんが、仮に出馬をした場合は現職優利な首長選、地盤と組織票を持つ小池知事を相手にして石丸氏が勝つ見込みはほとんどないと個人的には考えています。
今回の石丸市長の出馬に関して、私が彼の出馬表明の大きな意義は、SNS上における一定数の東京都民(首都圏住民)の地方蔑視を顕在化させたということです。
石丸市長の安芸高田市、人口3万人wのクソど田舎やん。 有権者の選択肢が増えるのはいいことだし、出馬は自由なんだけど、そんなところの市長を1期やっただけで、よくもまあ、都知事に挑戦と言えちゃう蛮勇スゴいわw。ジジイが無投票再選になってしまった中央区長選あたりに出ればよかったのにねw
— 田端@アクティビスト個人投資家YouTuber (@tabbata) May 19, 2024
田端氏は炎上芸でも有名な方なので、こうした書き方をあえてしたのか否かは不明です。ただ、このポストに連なる形でのコメントや引用には石丸氏を批判する体で地方蔑視をする言葉が並んでいます。
・高校デビューするヤンキーみたいなもんですね。
・東京きたらびびっちゃいそう。
・3万人のクソど田舎、1000万人の東京
・同じ日本になのに問題意識が小粒すぎてぺらぺらな発言が蛮勇ですね笑
・クソど田舎でイキってたのが面白かったのに勘違いしちゃったんだろう
な。挑むにしても次は島根か鳥取
田端氏の口汚い言葉を批判する人もいますが、明らかに地方蔑視を口にする人も少なくありません。いいね、の数もそれなりについていることから、コメントをしない人の中には賛意を示す人が多いのでしょう。
住んでいる国や地域でマウントを取るという人はどこにでも少なからず存在します。彼らの多くはは自らの能力や社会的功績、努力に対して自信が持てない人達であり、それしか誇るものが無いのでしょう。世界に冠たるメガシティ、大東京に住むことでしか自身の価値を定義できない人であり、その悲痛なつぶやきには胸が痛みます。
地方都市の市長から都知事挑戦は蛮勇か
さて、では現実に田端氏の言うように地方都市の市長しか経験していない人が都知事となるのは無謀であり、蛮勇と揶揄されるようなことなのでしょうか。
確かに人口3万人の小都市と人口1000万人になろうとする東京都では状況が全く異なることは言うまでもありません。しかしそれを条件に知事を選べば、首長を小都市から大都市へと鞍替えしながら務め上げた人しか都知事に相応しくないことになります。
では現東京都知事について考えてみます。彼女は一応は議員としての経験がありますが、逆に首長としての経験はゼロです。エジプト帰りのニュースキャスターという経歴は都知事に相応しいものでしょうか。彼女以前を見ても、国際政治学者、作家、いじわるばあさん、マルクス経済学者は小国の子か元首に近いと言われる東京都知事に相応しい経歴だったのでしょうか。
実際には政治家としての正当な評価をそれまでの経歴だけで判断するのは難しいでしょう。仮に政治家としてのキャリアを重視する場合、それは世襲政治家か富裕層の後を継がない子弟ぐらいしか投票先の選択肢入らないことになってしまいます。
都民ではない私としては別に石丸氏を応援するつもりもないし、彼に期待することも無いのですが、こうした東京一極集中の問題を提起する人がメディアに出ることは十分に価値があると感じます。
そして何より東京都民の一部の人たちが、東京都民であることの選民思想を持った人たちであるということを改めて可視化させたという点において、今回の出馬には意味があったと思うのです。