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九州の大学進学の実状
首都圏やその近郊に住む人達にとって地方、九州の状況というのはわかりにくいものがあると思います。
そこで、今回は九州の中でも大都市やその近郊ではない、中小都市の高校の状況を中心に、九州の大学受験事情に関して書いていきます。
ちなみにですが、九州の県は基本的に県庁所在地が人口50万人近い、比較的地方では大きい都市ばかりです。
したがって、九州人の人口動態は
住んでいる地域 → 県庁所在地 → 福岡 → 東京
という流れになります。進学や就職に関してもこの流れで選択を考える、あるいは生徒本人や保護者が希望するケースが多いということになります。
地方の普通科高校の存在意義
まずは、私が勤めるような地方の普通科高校の存在意義について考えます。
地方における普通科高校や進学コースの存在意義は、地域における大学進学者を輩出するということです。
地方に定住する大卒人材を育成できなければ、地元に誘致した工場で働く人材を確保することも難しいからです。
実際、地方の第二次産業における大卒工員は地元出身者のことも多く、Uターンを期待された人材でもあります。これに加えて市役所や町役場の大卒職員も必要です。
また、医師や薬剤師、看護師など医療系人材を輩出することも重要な役割です。高齢化が進む地方都市において、医療人材の確保は死活問題だからです。
九州においてある程度人口を最低限保っている自治体は、ほとんどが複数の高校を抱える地域です。
もちろん人口減少によって高校は統廃合されたのですが、その逆に地域から高校が無くなった結果、人材が流出する流れに拍車がかかりました。
つまり、普通科高校は地域の荒廃を食い止める防波堤の役割を担っているとも言えます。
生徒達が主に希望する進学先
普通科高校の生徒は大学進学を希望します。
そして、その希望先の第一志望で大多数を占めるのは各県の国公立大学です。さらに、第二、第三志望に入るのは自県や隣県の国公立大学や私立大学になります。
もちろん東京や大阪といった大都市の大学へ進学を希望する生徒も存在します。しかし、圧倒的に多くが九州内の大学を志望するのが実状です。
逆に言うと、どうしても進学指導に関しては地元の国公立大学を優先するため、首都圏の難関私立大学進学者へ十分なフォローができないことは多いようです。
この辺の事情が誤解されて、「地方の高校は地方国公立に無理矢理進学をさせようとする」といった話につながっているのかもしれません。
(もちろん、そういった指導をする教員や学校は多少は存在するようですが)
この辺りの状況は以下の論文に分析が成されています。九州各県の進学先は明らかに自県が増加しています。福岡への進学者が多いことも特徴的です。
遠藤健「大学進学にともなう地域移動の時系列分析 ── 地理的要因に注目して ──」
全国的にも低い大学進学率
大学進学率が低いことも九州地方の特徴です。
最も高い福岡で53.9%、最も低い鹿児島では43.5%、ワースト5位は沖縄、九州山口といった状況です。
このように九州地方は 大学進学率が全国と比較してかなり低いのです。
男女の進学率に大きな差がある
女子の進学率に関しては昨今は良く特集をされています。
男女の進学率に大きく差があるのも九州の特徴です。こちらも、ワースト3位は鹿児島、大分、佐賀、と九州の県が並びます。
原因は様々ですが、ここでは言及を避けます。ただ、データしてこのような結果と特徴があるのは事実です。
私自身が女子に進学を諦めるようなマイナスな働きかけや発言を教員としてしたことはありません。
しかし、「あまり学歴が高いと女の子は困る」といった趣旨の発言をする人、特に年配の人は他地域よりも多いかもしれません。
と、これぐらいが九州地方の大学進学の実状です。
自県進学率や九州内の進学率が高いのは特に特徴的だと思います。総じて九州の人は郷土愛が強く、地元に戻りたい意思を示す人が多いです。
これを窮屈と思うのか、心地よいと思うのは人それぞれですが、生徒の進学先を見ても心地よいと思っている割合は高いということなのでしょう…