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「田舎の学問より京の昼寝」から「田舎で京の学問」

「田舎の学問より京の昼寝」という諺があります。

田舎で一人で学問しているよりは、たとえ昼寝をしても、都会に出れば他人と交わらざるを得ず、そのことが人を鍛えるという意味である。田に囲まれた田が最良の田であるという「人は人中、田は田中」も同義。

 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」

高度情報化が進む現代において、この言葉は未だに通用するのでしょうか。

かつては都会にしか刺激がなかった

情報化が進む以前においては、新しい商品や画期的な事業、高度な学問に触れる機会は都会にしかありませんでした。

専門店や大学、世界規模の企業などあらゆるものは都会にしか存在しなかったのです。

野心的な若者たちはこぞって都会へ行き、立身出世を目指したわけです。

その構造が変化しつつあります。

その原因の一つに情報化があります。

大抵の物は地方で買うことができる

まずは消費行動において、情報化は大きな変化をもたらしました。

日本国内においては、2000年ごろからネット通販のサイトによるeコマースが徐々に流行してきました。楽天市場が生まれたのは1997年のことになります。

オンライン書店であったアマゾンも2010年頃には現在の取り扱っている種類の大半が揃うようになりました。

また、この時期に前後する形で2000年頃からイオンモールなどの郊外型ショッピングモールが地方都市に出店が進みました。

その結果、日本中のあらゆる場所で東京と同じものを買うことができようになったわけです。

つまり、物を買うという点においては、よほどのニッチなカテゴリーのものでない限り地方都市でも手にとって購入が可能であり、ニッチなものの大半はネットで購入できるようになりました。

しかし、それでも田舎から都会、東京への人の流れは止まりませんでした。なぜならば、消費行動に関しての需要は一定数満たされるようになったものの、田舎にはイベントや仕事など「体験」が存在しなかったからです。

若者需要や高学歴の就職の受け皿が無い地方都市

若者の望むイベントが地方には存在しません。プロスポーツやコンサート、大型ライブなどはほとんどが都会で行われます。

また就職に関して、地方の大学を卒業しても、依然として勤め先が存在しませんでした。

彼らの希望する大企業の本社は都会にしかなく、理系の技術職も都会と一部の郊外に立地する研究所などがほとんどでした。

この流れが一変したのが2020年です。

一斉休校とオンライン化の加速

新型コロナによって、全国一斉休校という非常に大きな影響力のある施策が行われました。

この結果、次世代の技術でしか出来ないと考えられていたオンラインでの交流の多くが、現時点でも実現可能であることに多くの人が気づきました。

それにより、オンラインでのイベントやリモート出社が増加し、実際にそれをその後も続ける企業が増えています。

時を前後して北陸新幹線の開通なども絶妙なタイミングだったのでしょう。

都心に高い家賃を支払ってオフィスを構えるよりも、人数に比べて狭いオフィスを交流の場として設置し、労働者は数週間に一度出社して実コミュニケーションを行いながら普段はリモートで業務を行うというスタイルは会社にとっても非常に効率的です。

このことにより、地方に住むことがデメリットではなくなりつつあります。

「メタバース」の普及はこの流れを加速させる

現時点では「メタバース」なるものの定義がしっかりしていませんが、オンライン上でのリアルなやり取りができる空間の構築を指す言葉です。

バーチャルオフィスサービスの人気も高まりつつあるようです。

オンライン上のイベントもある程度はこの手のツールで代替可能になっていくのではないでしょうか。

普段は地価や家賃の安い地方で生活し、オンライン出社やイベントに参加、たまに実イベントやオフィスに飛行機や新幹線で往復、という生活スタイルは十分に実現可能に思います。

ここ数年流行っているキャンプなどのアウトドアブームとの連動性も高いと感じます。

「田舎で京の学問」の時代へ

まさに、地方にいながら都会の文化に触れながら、人混みを避け自然に近いところでも生活するという「田舎で京の学問」を実現する日は近いのではないでしょうか。

まあ、私が地方の住人ですのでそうしたポジショントークになるのですが。

とはいえ、実現可能性は低くないのではないかと思います。


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