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徒弟制度による教員の新人教育と「参観」

教員の世界の新人教育は完全にOJT型、しかも教育担当者などついていないのと同じ状態で業務に放り込まれるのが主流です。

とはいえ、中学校や高校では空き時間は存在するため、そうした時間に新人は先輩教員の授業を参観することは多いのではないでしょうか。

「参観」は研究熱心さの証か

若手の教員の方に授業を「参観」をしたいとお願いされることは少なくありません。

もちろん、快く引き受けるのですが「あまり参考にはならないと思いますよ」と毎回伝えることにしています。

基本的に一斉授業のやり方は人によって様々であり、その授業のスタイルは個々人の持ち味や個性に依存していると私は考えています。

たしかに、まったく授業をしたことがない未経験の方ならば私の授業を見て、授業のフォーマットの参考になるでしょう。

しかし、授業をすでに毎日行っているような現場の教員の場合、それほど盗める技術は多くないのではないかと私は考えています。

また授業全体の仕切りではなく、単元の指導内容や説明の仕方となった場合、その数が膨大すぎて、あるいは単元の前の伏線とその回収までも参観をすることは不可能となり、不十分な参観にしかならないのではないでしょうか。

「参観」する価値のある授業をできるか

そもそも、授業を通しで見たい場合、オンラインンのコンテンツのほうがよほどクオリティとの高いものになります。

無料のものから有料のものまでそろっていて、スタディサプリなどは全単元を網羅しています。

一斉授業型の参観をするぐらいならば、動画を見たほうが教科指導の学びは多いはずです。

主観ですが、授業動画レベルの授業をできている教員が現場にどの程度の割合でいるのかを考えれば、時間対効果的にも一択でしょう。

では、授業形式が一斉型の授業でない場合はどうでしょうか。

ファシリテーションスキル

高校生のアクティブラーニング授業の実施において重要なのはファシリテーションスキルです。

そしてそうしたスキルは自分が経験的に獲得することが必要であるため、授業の参観ではスキルの向上は難しいでしょう。

むしろ、オフライン、オンラインなどでのミーティングなどで実際にファシリテーションを行うほうがよっぽど効果的です。

また、そうしたアクティブラーニング系の授業はその組み立てそのものが参観だけで身につくとは思えず、そのための勉強会に参加をすべきでしょう。

徒弟制度からの脱却

いまだに学校の教員の授業スキル獲得の多くは、先輩教員のやり方を見て覚えるという中世の徒弟制度さながらの状況が大半ではないでしょうか。

その最たる例が先輩教員の授業を「参観」することでしょう。

もちろん、「参観」による気づきをすべて否定するわけではありませんが、授業のやり方が十分に習得できていない若手教員を育てるシステムとしてはあまりにも非効率的です。

授業の準備時間を削って「参観」するのも難しい上に、往々にして「参観」する価値のある授業ですらないのです。
(個人的な経験では、自分の授業を身に来なさいと言う人ほど大した授業をしていない、という経験から偏見があるのも事実ですが)

そもそも、新卒の人間に対し特定のクラスの授業を丸投げした上で、別のクラスの授業の授業を見て覚えろ、とは教育とは言えないでしょう。

「教員不人気時代」を乗り越える

複数の自治体の教員採用試験で倍率が1倍台となるなど、余は「教員不人気時代」です。

その理由は残業代の出ない環境、劣悪な職場環境など多々ありますが、新人を育てない文化がそうした傾向に拍車をかけています。

しかし、むしろ不人気だからこそ、せっかく志を持って業界に入った人の成長をサポートする体制づくりが重要でしょう。

優秀な人を現場で篩にかけるのではなく、そこにいる人材を育てる方向への転換が必要だと思うのです。

そのために、ICTを生かした授業の参加、実践的なファシリテーション経験、副担任かつ授業の複数での担当割(実質新任の単位数はカウントしない)などの改革を早急に行うべきです。

これまでの常識や因習を捨てて、できる手を打たなければ「不人気時代」は「暗黒時代」へと変わり果てる可能性すらあると感じています。

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