共通テスト、追試験対応はどこまで被災者に寄り添えるか
共通テストの特例措置
1月1日に発生した能登半島地震の被害状況が徐々に明らかになりつつあります。
この記事を書いている1月4日の夜の段階で生存確率が下がると言われる72時間を過ぎ、石川県だけで死者84人、安否不明者179人という数字が報告されています。
こうした直接的な被害の中、北陸地方の受験を控えた高校生たちは避難生活と受験を並行させなければならないという厳しい状況にいます。
先日、過去の震災における特例措置などを記事としてまとめましたが、早速そのことに関して動きがありました。
大学入試センターは被災受験生の追試験の受験を認めること、加えて石川県内に試験会場を設置するという報道がなされています。
この対応自体は受験生にとって間違いなく朗報ですが、実は地方の受験生の受験事情の問題が今回も顕在化するのではなという懸念点も見えつつあります。
共通テストの試験会場
都会、大都市や大規模都道府県に在住の方には実感がないことだと思いますが、実は共通テストを受験するだけでも地方の受験生はかなりの負担を強いられています。
例えば私の住む熊本県の場合、共通テストの試験会場はすべて県庁所在地である熊本市となっています。
これは大学の所在地が県内で偏在していることが原因なのですが、この結果県内の高校生の中には宿泊先を確保しなければ受験が難しい生徒がそれなりの数発生します。
今回の地震の中心地である石川県の場合、共通テストの会場は9か所存在しますが、5か所は県庁所在地である金沢市、2か所が野々市市、かほく市と小松市に1か所ずつとなっています。
この内、野々市市とかほく市は金沢都市圏に含まれる近隣都市ですので、金沢市周辺に住んでいない人で受験ができる会場は小松市のみです。
加えて小松市は石川県南部であり、今回の地震被害の大きい地域からは離れています。
輪島市や七尾市から最も近いのはかほく市にある石川県立看護大学会場となっていますが、これでも自動車で片道2時間程度はかかるとGoogleマップで測定されます。
地震後の道路事情やその他の条件を加味すると、受験日に自宅(あるいは避難所)から試験会場に向かうのは現実的ではないでしょう。
さらに言えば、一般的に追試験の会場は国立大学が運営する可能性が高く、そうなると金沢大学まで行く必要があり、距離的にはさらに条件が厳しくなるでしょう。
(もちろん例外はありますが、受験者が少数の追試験であっても敷地内は部外者立ち位置禁止とするなど厳戒態勢を敷く必要があるため協力的な大学はそれほど多くないでしょう)
追試験を受験できれば公平か
以上のことに加えて、追試験の難度が本試験よりも高く同等の得点をとれるのか、という公平性の問題が存在します。
大学入試センターとしては本試験と追試験に関して、数年前に同程度のもの、というアナウンスがあったようです。(ソース不明)
実際、そのことに関しては共通テストの試験のサイトでも一切触れていませんし、追試験の平均点も公開されていません。
ただ、体感的には明らかに難しいというのは受験業界では周知の事実ですし、受験をした生徒が期待値よりも高い得点であったことは個人的な経験としてもありません。
(本試験では採用できなかった、新形式問題のテスト場となっているとも言われています)
果たして、被災した人に対して追試験を受ければ公平性が担保されている、配慮ができている、と主張できるかというと疑問符が付く状況なのは事実です。
もちろん、日程が2週間遅い追試験で本試験と同等の問題が出される場合、対策期間や受験生の伸びしろを考えると不公平であるとも言えるため、安易に同じレベルが妥当とも言えないのですが。
特例措置はありがたいが…
言うまでもないことですが、こうした特例措置が講じられること自体は大いに感謝すべきですし、被災した受験生にチャンスがきちんと与えられていることは喜ぶべきです。
しかし、受験地の地域格差や難度の問題など解決すべき、検討すべき事案があるのも事実です。
文科省や大学入試センターがこうした問題に向き合ってくれることを期待したいところです。
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