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SNS上のいじめやトラブル、学校がどう関わるか


「いじめの重大事態」に認定

SNSにおけるトラブルは、昨今学校内で起こる問題の最も大きなものの一つでしょう。小学校のようなスマホやネットに触り始めたばかりの年齢から、高校生や大学生など利用方法をある程度理解しているはずの世代まで、どの年齢帯にも起こる揉め事となっています。

最近は職場やママ友や趣味のコミュニティにおいて、成人同士でのトラブルの火種となることも少なくないようです。

さて、佐賀県では先日発生した高校生同市のSNS上のトラブルをいじめ防止対策推進法が規定する「いじめの重大事態」に認定したというニュースが報道されています。

顔の加工画像をSNS上に

事件のあらましは以下のようです。

昨年6~8月ごろ、生徒5人がSNSのグループトークで、同学年の被害生徒がうそをついていると疑うような内容などの書き込みをした。また、被害生徒の顔を加工した画像も投稿した。その後、被害生徒は、いじめを理由に退学したという。

最近、この手のトラブルを何度も耳にしました。私の身近にも繰り返し発生し、そのたびに指導をしたことがあります。

答申は、こうしたいじめの未然防止に向け、「SNS上の仲間内の会話でも、内容が流出し拡散する危険性があることをしっかり指導する必要がある」と提言した。

答申で出された指導方針に異論はありません。しかしそうしたことを注意していない教員が果たして本当にいるのでしょうか。どう考えてもこうした指導を行った上で、生徒側が事態を深く考えずに実行しているだけのように感じます。

SNSの中は学校ではない

この手のトラブルに関して、SNSなどのネットの知識の無い高齢者(そしてそうした人たちが地域の教育の方針を定める立場にある)や自分の学生時代の旧態依然とした学校のイメージしか頭にないネット論者たちは学校や教員をこぞって批判します。

学校が使い方を教えていない、きちんと取り締まれ、教育を行え、税金泥棒、といった具合です。

しかし彼らは考え違いをしています。学校はあくまでも司法機関でもなければ行政罰を与える執行機関でもなく、教育機関です。学校の本分は学業を教え育てることであり、そのプロセスの付随業務としてその手の生徒指導案件は存在しているに過ぎません。したがって、学校内でのトラブルに関して学校が関与することはあっても、家庭内で起こった事件には関与しないということです。

ではSNSは学校内、外のどちらと言えるでしょうか。確かに学校内の友人とSNS上でトラブルになる可能性はありますし、そのときに学校が関与することもあるでしょう。しかしそれは学校という現場においてリアルに降りてきた問題だからに過ぎないのです。

断言できますが、SNS上はあくまでも家庭の管理下の問題です。スマートフォンを買い与えているのも、通信料を支払っているのも、制限もかけずに好き勝手使い放題させているのも家庭の方針なのです。

問題を解決したいのならば、まずはスマホを制限するべきですし、仮に被害にあっている側であれば、すぐに警察に相談すべきではないでしょうか。

無責任ではない

こうした意見に対して、「学校は無責任だ」という反論を受けることがあります。しかしSNSもスマホも家庭で許可し使わせているものです。それを学校の責任に擦り付けるのはさすがに無理筋でしょう。

もちろん、学校内における人間関係などでそのトラブルが影響を及ぼす場合はきちんと指導するべきです。しかし学校以外の時間に起こした事件に関しては家庭教育や家庭の指導の問題です。

相手方の反応が不服なのならば、刑事なり民事なりの訴訟を起こすべきでしょう。

現実に不可能

日本中の多くの教員は善良で生徒思いです。少なくとも私の知るほとんどの教員はそうした人格の人達です。(そしてそうした人は世間から変わり者と呼ばれています)

そして彼らは生徒の問題の手助けになりたいと望んでいます。しかし、そうした業務範囲外のお節介が教員の業務を圧迫し、昨今の教員の不人気、不足に繋がっているのも事実です。

またコンプライアンス的にもそうしたSNSの問題に教員が関わるのは難しくなっています。教育や警察、司法がしっかりと住み分けをしていかなければならないでしょう。

今回の佐賀の事案がどういった問題をはらんでいるかは外部からは分かりません。しかし、間違いなく言えることは教員がこの手の事案にかつてのように関わることは現実的に不可能であるということなのです。


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