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投資・決済システム素人のエンジニアがキャッチアップするために読んだ本(決済編

はじめに

携わっているサービスについて。

3ヶ月前にクレジットカード会社のカンムに転職し、
「Pool」というクレジットカード×投資のサービスを開発している

これは、投資のリターン(税引き前予定利回り1%)とカード決済のキャッシュバック(決済金額の1%)により、日々の支払いをキャッシュレスで行うと同時に資産形成も可能というサービス。

手前味噌だが、今までになかったクレジットカードの形を目指しており、とても面白いサービスである。サービスの詳細はメディアに取り上げていただいたこちらの記事、目指している展望については代表が書いたこちらの記事をご覧いただけると。

自分が携わっている期間は、この記事を書いている時点でおおよそ3ヶ月といったところ。「転職したて」というラベルが剥がれ、そろそろビギナーズラックが切れてくる頃だ。

このサービスのドメイン領域は「決済・投資」の2つにまたがっており、かなり広範囲。サービスによってはドメイン領域に詳しくなくても、技術でなんとかやっていける場合があるがそうもいかない。国際ブランドネットワークを通した決済の仕組みから、決済・投資運用・償還のお金の流れはもちろん、資金決済法や割賦販売法をはじめとした様々な法の縛りまで把握する必要があり、とにかくわからないことだらけ。曖昧な理解で進めようとするものなら、最悪の場合は決済不整合などの深刻な事態につながりかねない。

洪水の様に押し寄せてくる三文字頭字語の金融用語や国際ブランドネットワーク上での決済の仕組みを噛み砕いて理解し、ときに流されながらも決済・投資領域のドメイン知識を貪欲に吸収していく忙しい日々を送っている。とはいえ、こんな日々を期待してこの会社にジョインしたし、自分の知らない知識に圧倒されて過ごす毎日は楽しくて仕方がないのだが。

体系化された知識を手に入れるには、やっぱり本

さて、複雑なドメイン領域の中で決済・投資領域ど素人のエンジニアがいち開発者としてやっていくには、知識をとにかく詰め込み頭の中に地図を作る必要があった。知識の主な入手手段として選んだのは本。ただ、決済領域は日々新しい形の支払いニーズが生まれており、それに伴い法律の改定が行われ、サービスが次々と生まれる業界。そのため、どうしても書かれている内容が古いこともあるのだが、やはり体系化された知識を手に入れる手段として本は強い。

というわけで、以下にここ3ヶ月で読んだ本(決済領域)とそれに対するコメントをつらつら書いていく。
紹介する順はそのまま自分のお勧めの読書順になっている。本を手にとってから「これは今の自分には早すぎるな...」といった経験が往々にあったから。同じ轍を踏む人が生まれない様に自分なりにこの記事に反映したので、誰かの参考になれば幸い。

紹介するのは3冊

決済インフラ入門【2025年版】

決済領域で使われる用語・概念を幅広くかつ簡潔にまとめられていて、最初に読む本としてかなり良い。

第2章(決済の基礎)・第3章(決済リスク)・第4章(銀行)・第6章(口座振替系決済)・第7章(決済システム)あたりの内容を抑えておくと、ある程度決済システムの全体像が頭の中に描かれる感覚がある。他の章は特定の分野に特化した内容となっている(第1章(新型決済インフラ)などは直近の決済システム動向にフォーカスしている)ため、自分のような初学者は上に挙げた章から読み進めていくとより効果的な読書になる。

なお、この本が出版された時点では「全銀システムの接続は預金取扱金融機関に限る」とされていたが、2023年にも電子マネーを提供するフィンテック企業が全銀システムへの加盟が解禁される見込み。【2025年版】とあるが、法改正や銀行の動向によって追従できていない部分もあるため注意したい。

カード決済業務のすべて

内容は本の題名通り。
以下の様な、カードビジネスに関わる会社が日常的に行なっている業務やカード決済の仕組みについて、豊富な図とともに説明されている。

  • イシュイング(入会・カード発行)、アクワイアリング(加盟店契約)業務とはどのようなものか

  • 国際ブランド(Visa、MasterCardなど)のクレジットカードはなぜ世界中どこにいても同じスキームで決済ができるのか。

  • 自分達がクレジットカードで購買活動をする際の決済の裏側はどうなっているのか

    • 与信枠チェックや不正防止チェックなどのオーソリゼーション

    • 売り上げを確定するクリアリング

この本に目を通しておくと、国際ブランド・アクワイアラ・イシュア3社の関係性が頭に一通りインプットされる。

また、自身がカード決済するときには「まずオーソリの電文が飛んで、そこから何日後にクリアリングの電文が飛んで...」というように、頭の中で決済の流れがイメージできるようになる。「何もない状態から商品やサービスを購入でき、数ヶ月後に自分の口座から現金が引き落とされている仕組み」を、決済サービスを取り巻くステークホルダーや決済用語を組み合わせて自分の言葉で理解できるようになったことで、グッと業務の全体像を掴むことができた。

決済サービスとキャッシュレス社会の本質

国際ブランド決済カード(クレジット/デビットカード)の基本構造について基本的な部分を押さえつつ、キャッシュレス社会実現のためのロードマップについて解説してくれる本。

一貫して「あくまでキャッシュレス決済は商品・サービスを手に入れるという目的を達成するための手段である」という立場で書かれているのが気持ちいい。ただ、理想論を述べているだけではなく、キャッシュレス社会の早期実現のためには「キャッシュレス決済比率〇%」といった手段と目的が逆転しているケースについても一定の理解をしているなどバランスが取れている。

また、海外における決済サービスの利用環境や市場背景について詳細に述べられており、日本との対比が面白い。「欧米のクレジットカードユーザーは手数料を払ってまでリボ払いをする人が多い」という、日本にいると直感に反する事実がある。その裏には、性悪説の欧米では'毎月きちんと決められた金額を支払っているという実績'が個人の与信を向上させるため、ユーザーはミニマムペイメント以上の支払いを行ってまでリボ払いを行う必要がある、ということをこの本を通じて初めて知った。

他にも、安易に加盟店手数料を安くすることによって普及を目指す新興決済サービスに対して、不正による支払い不履行や決済システム事業者の機能不全が他の金融サービスに波及し、経済・市場に多大な影響を及ぼす「金融システミックリスク」を交え警鐘を鳴らしている。
決済サービスに携わる身として、この本で挙げられているリスクに関しては一通り頭に入れておきたい。

etc

決済システムのすべて

手元にあるが、まだ読めていない。実は一番最初に購入した決済の本。今の会社の入社前に、この本の勉強会をしたというポストを見かけて購入したのだが、かなり上級者向けの本で最初に読む本ではなかった。もう少し本棚で熟成させようと思う。

まとめ

決済に関わる身として未熟すぎる自分が、流されない様に水面であっぷあっぷしながら手に取った本の中で、良いと思った本をいくつか紹介した。とにかく頭に入れておかないと話にならない知識の量が多くて、まだまだスタート地点にも立てていない感覚を持ちながら日々開発している。常に「こんな状態で大丈夫なんか…?」となっている。

ただ、自分自身が「これはいい!」と思ったサービスを自分自身で開発していくということは本当に楽しい。これを自分達だけでなく、より多くの人に実感してもらえるようにサービスを成長させていきたいと思う。


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