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「敵国にとっての悪魔は、自国の英雄」Lineage リネージュ 昔話009

 タイトルはMMORPGの世界でも言えることだとは思いますが、現実の世界でも、もちろんその通りのようです。
 PKに関する記事を書いていて、実在した人物である、シモ・ヘイヘ氏のことを思い浮かべました。

 私はnoteではPC版リネージュ(以下「PC版」とします)の思い出を語っておりますが、そのスマートフォン向けアプリ版といえる、リネージュM(以下「リネM」とします)の現役プレイヤーでもあります(これを書いている2021年6月22日時点)。

 PC版リネージュはシステム上PK(Player KillあるいはPlayer Killerの略。他のプレイヤーのキャラクターに攻撃を行うこと。あるいはそのような行為を行う人。)が可能です。
 そしてリネMもPC版と同様にPKが可能なゲームです。

 私自身は、PC版ではいわゆるガチ勢で、かなり積極的にPKをするチームあるいは同盟(利害関係が一致した、複数のチームが協力体制を結んだもの。)に所属していたこともあります。
 一方リネMでは、まったりプレイしており、ガチ勢と呼ばれるような人からは、一方的にPKされてしまうようなプレイヤーです。
 狩る者と狩られる者とでも言うのでしょうか、その両方の立場を経験したことがある私が、PKについて少し語ってみたいと思います。

1.なぜPKをするのか

 大きく分けると、何らかの目的を達成するための手段としてPKが用いられる場合と、PK行為そのものが目的である場合があります。
 無差別PKと呼ばれる、誰でもPKの対象にする人。初心者狩りなどと呼ばれる、そのゲームの初心者であろう人を狙ってPKする人。このような方々はPK行為そのものを楽しんでおり、PKすることが目的となっています。
 このプレイスタイルについては、私はやったことがないのであまり多くを語れません。リネMで無差別PKを行っている、「復讐さん」という方がインタビューを受けていたので、そのURLを貼っておきます。

※余談ですが、PC版のJP2カノープスサーバーにおいて、FastLoveという名前の有名魔術師がおりまして。その方が突然無差別PKと化した時期がありました。
 普通は「無差別」とは言っても、自分が勝てそうな人に対してPKを仕掛けると思うのですが、FastLove氏は違います。
当時は最も強いボスモンスターであったドレイクを待っているナイトの集団(当然ですが全員が強豪プレイヤーです)に対し、単身で乗り込んできて、無差別PKを始めたのです。
 さすがのFastLove氏も強豪ナイトを蹴散らすには至りませんでしたが、ここまで来ると突き抜けていてカッコいいと思います。

 それ以外のものは、まず何か目的があって、その目的を達成するためにPKという手段が用いられます。ただ、この目的がまた多種多様です。

 例えばPC版で私が所属していた同盟は、「攻城戦=城を奪い合うための戦争に参加した者はPKの対象」としていました。
城を取り防衛し続けることが目的であり、それを妨害するものを敵とみなして、手段としてのPKを実行します。

 ではなぜ戦争に参加した人に対して、戦争以外の場所でもPKを行う必要があるのか。
それは、キャラクターや装備を強くさせないためです。経験値やアイテムを効率よく稼げる場所で狩りをしたり、レアアイテムを落とすボスモンスターを倒すことで、キャラクターや装備が向上し、強くなります。

 そのためそれらの行為を妨害することで、敵対するプレイヤーが強くなってしまうことを防ぐというわけです。非常に理にかなっていると思います。
 これらの行為を批判する人は、「戦争で正々堂々と決着をつければいい。戦争以外の場でまで攻撃してこないでほしい。」というようなことを言います。ですが、戦争以外の部分もリネージュというゲームの一部なのです。
※PC版にはPKができるサーバーと、できないサーバー(Non-PvPサーバー)が存在していました。PKが苦手な方には、PKができないサーバーでプレイするという選択肢が与えられていたわけです。リネMには今のところNon-PvPサーバーがなく、すべてのサーバーがPK可能です。

 またはレアアイテムを落とすボスモンスターや、効率よく経験値やアイテムを稼げる場所について、独占するためのPKというのもあります。
 私がPC版で所属していた血盟の一つは、ボス独占を行っていました。
「うちのクラン(=血盟)のことは知ってますよね?今後バフォに関わらないでいただきたい。」
バフォが出るフロアに知らない人がいれば、血盟のリーダーはこのような脅し文句を投げかけていました。
※バフォ=バフォメットは美味しいボスの一つで、比較的よく出るボディベルトというアイテムが15Mほどで売れました(当時のRMT相場では日本円に換算すると約15万円になります。3人で倒しても1人あたり5万円相当のアイテムが手に入る計算です。)。

 断ればもちろんPKの対象になります。驚くべきことにそれを恐れて、当時の城主であった血盟ですら、バフォには近寄りませんでした。
 さすがに城主血盟と正面からぶつかれば勝てないのでは?と思われるかもしれませんが、そうではありません。攻城戦で城を取るための血盟の強さと、PKのための血盟の強さは別物だからです。
 城を取り、長く防衛し続けるためには、かなりの人数が必要なので、"そこそこの強さ"の人も血盟には所属しています(そうでなければ防衛ができないのです。)。
 ボス独占血盟にはそこそこの強さの人はいません。1人1人がトップクラスの強さを持ち、必要とあればPKをすることに抵抗のない者だけが集まっているのです(紹介のない方が加入を希望する場合、高レベルのキャラクター以外はお断りとなっていました。)。

 もちろん城主血盟の看板プレイヤー達は、ボス独占血盟のメンバーとも良い勝負ができるとは思います。
しかしボス独占血盟と敵対関係になるということは、"そこそこの強さ"しかない仲間達も、その集団からのPK行為の対象になることを意味します。
そしてその仲間達が一方的にやられることは想像に難くありません。おそらくはPK行為の対象とされたことを苦に、城主血盟を抜けたいという者も出てくるでしょう。
 離脱者が多くなれば、城を防衛し続けることは難しくなります。ボス独占血盟と城主血盟の双方がそれを理解しているのです。

 さらに過激なものとしては、特定のプレイヤーまたは血盟がまともにプレイできない状態に追い込み、引退(ゲームを辞めること)またはキャラクター削除に追い込むため。ということもあります。
 これも私自身は実際にやったことはありません。友人のカイザードXXさんのnoteで、いずれ語ってくれるはずですので、気になる方はぜひチェックしてみてください(私も楽しみにしてます!)。

 いずれの場合もPKを行うと決めた場合は、執拗に行うことが多いです。
これは見せしめのような意味合いがあります。こうすることで「彼らの意に背くと執拗なPKに会う」という印象を与えることができます。
そうすると、自分たちにとって害のある行動を行う者が少なくなり、結果的にはPKを行う回数が最低限で済むようになるのです。
 手段としてのPKを行っている場合には、PKの回数など少なければ少ないほど良いと言えます。
 PKは敵対に損害を与えることで、相対的に優位になります。しかしPKそのものには基本的にはメリットはありません。
 さらにリネージュを含めてPKする側にもリスクが設定されているゲームが多く、不必要なPKを行うことは得策ではありません。

2.PKされたらどうすればいいのか

 大きく分けると、報復・反撃するか、諦めるかのどちらかです。

 報復・反撃は、直ちに行う場合もあれば、「力をつけていつか復讐してやる。」というモチベーションにつなげる場合もあります(だからこそ、前述の「敵対する相手の狩りなどを妨害して、力をつけさせない。」という発想が出てくるのです。)。
 知り合いに復讐を頼むというケースもあります(リネMには復讐依頼というシステムもあります。なかなかのPK推奨ゲームですね。)。
他のMMORPGでは、PKされた相手に懸賞金をかけることができるものもありました。誰かを雇って復讐してもらったりするのも、面白いといえば面白いですね(必殺仕事人みたいな感じですね。)。

 そういえばPKK(=Player Killer Killer)と呼ばれるプレイスタイルもありました。
 主に無差別や初心者狩りなどの行為を行うPKに対して、粛清の意味でPKを行うことを言います。私もほんの少しだけ、このPKKをやっていた時期があります。単に誰かのとってのヒーローになりたい気分だったのでしょう。

 諦めるというのは、「どうせ勝てないからおとなしくしてよう。」って感じです。泣き寝入りというやつですね。
場合によってはサーバーを変えてプレイしたり、リネージュそのものを辞めてしまうというケースもあるのかもしれません。
 リネMでの今の私は、PKされたとしても「どうせ勝てないからおとなしくしてよう」という感じです(笑)。
 ゲーム上での勝敗に拘ることしかできなかった若かりし日の私は、そうではないプレイヤー(いわゆるカジュアルプレイヤー・ライトユーザー)を批判することこそなかったですが、「自分が勝敗に拘れなくなったゲームはやらない。」というスタンスでしたから、人も変われば変わるものです。

 ただ、こういう立場になってみて初めてわかったことですが、意外とそれでもリネージュというゲームは楽しめるものなのです。
私がプレイしていた当時のPC版に比べて、PKされた場合のデメリット(デスペナルティ)が非常に軽いというのもありますね。
※当時のPC版は一度キャラクターが死ぬと、30~50時間プレイした分の経験値がなくなるような感じでした。
 しかしPKに対して報復・反撃をする気はないけど、リネージュは続けたいという立場になって初めて、「Non-PvPサーバーがあっても良いな」と思うようにはなりました
(リネMの場合、インターと呼ばれる、複数サーバーから同時に接続できるコンテンツがあるので、実現は難しいような気がしますが。)。

 相手の立場になって考えてみるなどとは言っても、結局、実際にその立場になってみないと、本当のところはわからないものですね。
「住めば都。」ということもあれば、逆に「なってみれば思った以上に苦しかった。」ということだって、きっとあるのでしょう。

締めくくりに

 PC版のJP2カノープスサーバーにおいて、Legend血盟の裏さんという方がいました。
同じ血盟ではなかったので、ボス待ちでチャットをする程度の中でしたが、彼はいつもPKをしていたように思えます。
なぜそう思うかというと、名前が青いところをほとんど見たことがないからです(リネージュはモンスターを倒すことで"徐々に"名前が青くなっていき。PKをすると"一気に"名前が赤くなります。)。
 ただ無差別や初心者狩りをするような人ではなかったはずなので、所属血盟のために、敵対する者をPKしていたのだと思います。

 実際にその彼がいったのかはわかりませんが。当時、匿名掲示板に彼の言葉として
「DK嫌なら犬連れるな。PK嫌なら町出るな。」
(DK=DogKill、他のプレイヤーがお供として連れているNPCの犬に攻撃を仕掛けること。また、リネージュのPKは町の中ではできない仕様です。)
などというものが挙げられていました。確かに一理あるとは思います。

 ただ、こういうことを言うと開発・運営をされている会社の方には嫌がられるかもしれませんが、私の考えはこうでした。
「PKが嫌なら、PKがないゲームをすれば良いのでは?」
※PC版なら、Non-PvPサーバーに移動するという手もあります。ただキャラクターや装備を持っていけるわけではないので、また1からの出直しとなってしまいますが。

 若かりし頃とは色々と考え方が変わりましたが、これについては、未だに同じ考えのままです(PC版をプレイしていた頃が約20年前なので、今からさらに20年経てば、また変わっているかもしれませんが……)。

 まるで資格や入学の試験問題に対して、
「こんな問題は実務的ではない。」「この問題では本当の知性はわからない。」
などという方と同じように感じます。
 試験を実施する側が求めているのは、その方が望むような試験問題を解ける方ではないのです。

 ゲームの場合であれば、開発・運営が想定しているプレイスタイルと、あまりにかけ離れた遊び方はできません。
 不満を持ったまま、その環境に留まり続けることは、ただストレスを感じるだけです。

 もちろん、何かを変えるために署名運動などの活動を行ったり、アクションを起こせるようであれば、その方は立派だと思います。
 それもせずに不満ばかり述べたところで、自分の好みや都合に合わせて、環境が変化することを望んでも、まず希望はかなわないと思います。

 受け入れる。それができなければ、環境を変えるべくアクションを起こすか、違う環境に移動する。
 ストレスなく生きるためには、この方が良いのではないかと思っています。


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