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「横尾くんとカレーパン」TCG トレーディングカードゲーム 昔話003

 横尾くんという友人がいた。愛すべきバカである。
 今日はそんな横尾くんとカレーパンについて書いてみたいと思う。

 ある日、数人で集まって遊んでいると、横尾くんが「腹減ったからパン買ってくるわ」と言い出した。
 友人Aが「ついでに俺の分も!選ぶのはまかせるから、パン2つぐらい買ってきて。」と、おつかいを頼んだ。

 帰ってきた横尾くんが友人Aに手渡したパンは、両方カレーパンだった。
友人A「おい!まかせるとは言ったけど、なんで両方カレーパンやねん。」
横尾くん「よく見ろよ。カレーパンとインドカレーパイや。全然違うやろ!
確かに違うといえば違うが、両方カレー味である。
しかもこの男、おそろしいことに、これをネタやジョークでやっているわけではなく、素でやっているのだ。

 そんな横尾くんがMagic:The Gathering(以下「MtG」と書く)をプレイすると、こんな感じである。

 MtGの地元大会に向けて準備をしているときのことである。
横尾くん「俺も久しぶりに大会出ようかな。なんか余ってるデッキ(ゲームに使用する、自分用のカード)あったら貸してさ。」
私「ええよー。これなんか使いやすくて良いんじゃない?」
 手持ちのデッキの中から、黒単ウィニーと呼ばれるものを貸し出した。色も一色だし、クリーチャー(モンスター)を召喚して殴るだけのシンプルな戦略なので、使いやすいだろうと思ったのである。

私「ただ、サイドボードは組んでないから、自分で組んで。」
 MtGの大会は通常2本先取であり、1戦終わるごとにサイドボードと呼ばれる15枚のカードから、好きなだけデッキのカードを入れ替えることができる。
 特定の色や戦略に対する対策カードを入れ、相手に応じて有利なカードを入れ替えられるようにすることが一般的であった。

そして横尾くんが組み上げたサイドボードがこれである。
Terror / 恐怖
Dark Banishing / 闇への追放
Snuff Out / 殺し
Vendetta / 血の復讐
Swamp / 沼
各3枚の合計15枚である。

 MtGを同時期にプレイしていない方に向けて、補足説明をさせていただきたい。
沼を除いた4種類のカードは少しずつ効果が違うが、すべてクリーチャー(モンスター)を1体倒すというカードである。
なぜ同種のカードをこれほど大量に採用したのか、意味がわからない。

 「"調味料を"何種類か持ってきて」と頼んだときに、
普通の塩
岩塩
ピンクソルト
味塩
抹茶塩
という組み合わせで持ってこられたような感覚である。

私「おい!自分でサイドボードを組めとは言ったけど、なんで単体クリーチャー除去ばっかりやねん。」
横尾くん「よく見ろよ。恐怖とか殺しとか。全然違うやろ!」
 カレーパンとインドカレーパイの、デジャブである。
 
 ちなみに「Swamp / 沼」というカードはマナ=魔力の源を出すカードである。このマナを使って、クリーチャー召喚をしたり、呪文を唱えたりする。ポケモンカードゲームでいうところのエネルギーカードだ。
 ただこれが何対策だったのかはわからない。当時は土地破壊という、相手の土地を壊す戦略もあったので、一応はそれに対する対策だったのだろうか……

 余談だが、横尾くんはカレーが好きである。数人の友人と、MtGの交流会に出かけた際、会場の最寄駅付近でお昼を食べようということになった。
横尾くん「ラーメン屋があるやん。あそこに入ろうぜ。」
数分後、彼が注文していたのは、カレーライスであった。

 なぜラーメン屋にカレーライスというメニューがあったのかはわからないが、そこはまあ良いだろう。
しかし、ラーメン屋に入りたいと言い出した男が、なぜカレーライスを注文しているのか、それが全くわからなかった。

 締めくくりに

 TCGではサイドボードに限らず、「何かに備える」という考えをすることが多いです。
 ただ特定の何かに備えすぎると「オーバーキル」と呼ばれる状態になります。要するに「やりすぎ」ということですね。

 備えるということを現実世界で考えると、掛け捨ての保険をかけるような感覚です。
 例えばガン保険のようなものに入ることは、決して悪いことではありません。

 ただ年収500万円程度なのに、ガンになったら5億円入ってくるぐらい保険をかけているとしたら、やりすぎだと思いませんか。
 それだけ保険をかけようとすると、保険料だって馬鹿にならないはずです。家計にとって負担になるようであれば、自由に使えるお金も減ってしまうことでしょう。

 横尾くんの単体クリーチャー除去だらけのサイドボードは「火災保険入ってません。自動車事故の任意保険にも入ってません。でもガン保険だけはめちゃくちゃかけてます!」みたいな状態だと思うのです。

 お金や時間のようなリソースは、急激に増やすことはできないはずですが、それをどのように振り分けるかは、今すぐにでも変えることができます。
 適正な備えは必要だけど、やりすぎてもいけない。遊ぶ時間も必要だけど、そればかりでは収入が増えない。このあたりのバランス感覚が大切なところですね。

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