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『光のとこにいてね』-一穂ミチ- を読んで


『光のとこにいてね』-一穂ミチ-

あらすじ

異なる境遇の中で生きる二人の少女が出会い、別れ、そして再び引き寄せられる運命の物語です。

古びた団地の片隅で出会った結珠と果遠。彼女たちは服装も環境も何もかもが違うけれど、なぜかお互いを強く惹きつける存在に。彼女たちの絆は、時間が経っても決して消えることなく、人生に深い影響を与え続けます。

幼い頃の淡い友情が、切なくも美しい四半世紀にわたる物語へと繋がり、読者を感動の渦に引き込んでいきます。

感想

『光のとこにいてね』は、まさに心に沁み渡るような作品でした。結珠と果遠の出会いと別れが繰り返されるたびに、運命というものの不思議さや深さに気づかされます。

どれほど離れても、どんなに時が過ぎても、再び出会うことができるという希望が、この作品には込められています。二人が互いに惹かれ合いながらも、それぞれの人生の波に飲まれていく姿は、読んでいて切ないけれど美しい。

それがまるでカノンのように繰り返され、読者を優しく包み込むような感覚を味わいました。

一穂ミチさんの描写力には本当に感嘆しました。特に、少年少女時代の無垢な感情が丁寧に表現されていて、読んでいるうちに自然と自分も彼女たちと共に成長していくような気持ちになりました。結珠が無意識に手を伸ばす場面などは、心が震える名シーン。二人の交流を見守りながら、読者はその微妙で繊細な感情の変化に深く共感するでしょう。

また、この作品は友情や愛情の境界を超えた、もっと深いところで人と人がつながっていることを教えてくれます。結珠と果遠が互いを思い続けることで、彼女たちの人生が豊かになり、どんな困難も乗り越えていける力を得ている様子が、とても感動的です。

タイトルの「光のとこにいてね」という言葉も、その両義性に感銘を受けました。希望と温もりを象徴すると同時に、暗闇の中でも相手を思い続ける強い意志が感じられます。

どんな人におすすめか

『光のとこにいてね』は、切なくも美しい友情や愛情に心を動かされたい人におすすめの一冊です。特に、人生の中で出会った人とのつながりや、運命の不思議さに興味がある人には、この物語が心に深く響くことでしょう。

また、親子関係や過去のトラウマに悩む方にも、希望と勇気を与えてくれる作品です。二人の少女の成長を見守りながら、自分自身の心の中にも光が差し込むような感覚を味わえるはずです。

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