公認会計士が監査業務後に移るべきキャリア比較!
こんにちは、ショウです!
監査業務の人材不足が謳われて久しいところですが、新卒で公認会計士としてキャリアをスタートさせた方、もしくはキャリアチェンジで米国公認会計士資格をとった方は、まずは大手を中心とした監査法人での監査業務に従事することが多いと思います。
その後、監査法人での監査パートナーを目指してそのまま務め続ける方ももちろん多いですが、監査法人での経験を活かし、事業会社やFAS等他のプロフェッショナルファームに転職する方も多いです。
年収面に関しても、事業会社はさておき、プロフェッショナルファームの方が監査法人よりもそれなりにupさせることができるのが一般的です。
今回は、公認会計士業務といわゆるFAS業務、そしてPEファンド業務との親和性・難易度について解説していこうと思います。
これから日米の公認会計士資格取得を目指す方、今監査法人に所属しているが、ネクストキャリアを考えている方の少しでもお役に立てれば幸いです。
①財務デューデリジェンス(財務DD)
監査業務との親和性★★★★☆
適応難易度★★★☆☆
財務DD業務では、M&Aでの買収対象となっている企業について、会計面から分析を行い、過去の収益性や資金繰りの状況、足元の負債の状況等を精査していく。
会計面での分析が主となるので、まさに公認会計士としての知見・監査法人で財務数値を見てきた経験がダイレクトに活かせる分野であるのは間違いないし、実際に公認会計士、監査法人経験者の方も比率としてかなり多い。
財務DDのPJ事の雰囲気もそれぞれではあるが、入札案件にアサインされると、基本的には非常にタイトなスケジュール間の中、3~4人程度のチームで協力して分析を進めていくこととなり、DDの報告会や対象会社へのインタビューの時期近くになると、かなり遅くまで働くこともザラ(監査法人出身の方は皆そろって、監査法人での業務よりも高いプレッシャーを受けながら、高いスピード感をもって仕事をする必要がある、とコメントしている印象)。
特に、PEファンドが売り手/買い手となる案件にアサインされた場合、通常の案件以上にクライアントの担当者自身のレベルが高く、DDのタスクやアウトプットに対してDemanding なので、かなりのハードワークが求められる。
②バリュエーション
監査業務との親和性★★★☆☆
適応難易度★★☆☆☆
M&Aの際の株式価値評価や、いわゆるPPA(purchase price allocation)というM&Aの事後に取得価格を資産配分するプロセスにおける評価、そして減損テストの評価等を行うのがメイン。
PPAや減損テスト等は、いわゆる会計目的の評価ということで、財務諸表に正しい評価金額が計上されているか監査の対象にもなるため、監査法人との連携も必要になってくる。そういった意味で監査法人業務との一定のシナジーはある。
財務DDチームほどではないが、バリュエーションチームも公認会計士・監査業務経験者も相応に多い(他は銀行出身者、証券会社、商社、事業会社の経理部門出身の方等が多い印象)。
一方、バリュエーション業務は会計的な知識も相応に必要ではあるが、それよりもいわゆるファイナンス分野の知見が求められ、よりアカデミックな思考が必要となる。
例えば、将来のフリーキャッシュフローを割引くための「WACC」の構成要素のパラメーターとしてそれぞれどれを選択すべきか等、ある意味、「明確な答えの無い世界」に対してその中で最も適切・妥当と考えられるロジックを構築しクライアントに説明していく力が求められる。
そういった意味でも財務DDと求められるスキルは大きく異なる。
なお、バリュエーション業務は財務DDと異なり、1つのPJの規模が小さく、一人の担当者が同時に小さい案件を複数同時に持って捌いていくことが通常である。
マネージャークラスになると、10件、20件同時に担当することもあるが、全部が全部足元高稼働していることも無く、基本的にはそれぞれのスタッフに分析や計算等の手作業を任せている部分も大きいので、字面ほど負担が大きいわけではない。
③ファイナンシャルアドバイザリー(いわゆるFA)
監査業務との親和性★★☆☆☆
適応難易度★★★★☆
M&A案件の売主側、もしくは買主側のどちらかに立ち、ディール成約に向けて様々なアドバイスを行うと同時に、様々な調整(雑務も含む)も行う部隊。
Big4 FAS系のFA部隊は、投資銀行やメガバンク等の同部隊と比較してソーシング力には相対的にそこまで力を入れていない分、グループでの総合力(日本以外のグローバルチームも含めた財務、税務、ビジネスDD等を一括提供可能)を駆使した高いエクゼキューション力に特徴がある。
監査業務や公認会計士としてのスキルが活かせる場面ももちろんあるし、そもそも最低限の会計財務知識がないとディールについていくことが困難であるが、会計の細かい知識よりも、ディール遂行にあたりクライアントが直面する(会計も含めた)様々な論点を網羅的にカバーできる幅広い知識や柔軟性、コミュニケーション力等が必要。
会計知識に関して、自分が細かい論点まで必ずしも知っている必要はなく、むしろ必要な時に会計財務の専門家に聞いてその説明内容が理解できれば問題ない。
クライアントと一心同体となりディール成立のために腐心していくため、長いトンネルを抜けた後の案件クロージング時には大きなやりがいを感じられる役割・部門でもあるが、クライアントが困った際には昼夜土日問わず連絡があったり、プロセスに関してトラブルが発生した際の事態収拾に大きな時間を割くケースもあり、一般に非常にハードな業務である。
財務DDやバリュエーションに比べ、監査業務等との親和性もそこまで高くないため、転職の難易度も上記2つに比べれば高いものの、Big4や証券会社系以外にも小さなブティック系のFA会社も多く、20代後半~30歳ぐらいまでのジュニアメンバーとしての役割であれば、転職は可能。
④PEファンド
監査業務との親和性★★★☆☆
適応難易度★★★★★
PEファンドでは、会計財務知識に限らず、税務やビジネス、法務等の様々なハードスキルに加え、売り主の懐に入って売却まで寄り添い、投資後は投資先の現場メンバーと一心同体になって事業を成長させていくメンタル・胆力が必要とされる。
PEファンドでの業務に必要な知見等については、下記別記事にて簡単に記載しているので、そちらも要参照。
そもそもPEファンドは会社としての数も少なく、求める人材のレベルも高く、各社妥協せずにセレクトしている(中には7次面接ぐらいまで実施するファームもある)ため、転職は基本的に狭き門である。
下記youtubeにて、PEファンド在籍者のキャリアを集計したものが紹介されているが、監査法人の直接の出身者は非常に少ない。
ただ、1位がFASとなっていることからも、監査法人からキャリアをスタートさせるものの、その後数年でFAS(上記③のFA業務が主)に転職し、さらに数年後にPEファンドに行くパターンはそこそこある。
ただし、外資系のPEファンドや、上位の日系ファンド(アドバンテッジパートナーズやインテグラル、ユニゾンキャピタル等)は外資を中心した投資銀行系やTop Tierの戦略コンサル出身でないと、正直転職は相当厳しいと思われる。
ねらい目としては、新規設立のPEファンドのスタートメンバーとしての採用枠に応募することが良いかもしれない。
新規設立のため、ベース給与はやや低い可能性はある。しかしその分採用における他候補者との競争の激しさは低下するため、なんとかそういった会社に転職し、数年後のキャリードインタレスト(キャピタルゲイン)ボーナスでそれまでの低年俸の巻き返しを図るというのも、キャリア戦略の一つと考えられる。