【医師のイギリス公衆衛生大学院留学】英語試験の話②〜IELTSリスニング対策編〜
IELTSとは
以前こちらの記事でIELTS(International English Language Testing System)の特徴を以下のようにまとめました。
・ペーパー版とコンピューター版から受験方式を選べる
(ただしコンピューター版の受験会場は2023年7月現在で全国5ヶ所しかない)
・リスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの4つのセクションからなる
・合計所要時間は2時間半+スピーキング約15分
・ペーパー版は紙の問題を見ながら、紙の用紙に鉛筆で解答する
・スピーキングセクションは、面接官との1対1の面接形式
・同じ会場にいる受験者は同じ進捗で進む
・各セクションが0.5刻み9点満点で採点され、4技能の平均がover all band scoreとなる
・トップスクールの公衆衛生大学院出願の目安はover all 7.0前後から
・受験費用は25,380円(2023年7月現在)
・獲得スコアは2年間有効
・コンピューター版は3~5日で結果が返却される
私の試験結果
私は日本生まれ日本育ちで長期留学経験もない純粋な日本人で、小児科医としてのキャリアを数年積んだのちに2023年夏からイギリスのImperial College Londonの公衆衛生大学院に留学します。留学準備期間に約5年ほどかけてIELTSは合計5回ほど受験し、結果は以下の通りでした。私は初回のみPaper-basedで受けて、以降は全てComputer basedで受験しました。
2018年 Overall 6.5 (結果が残っておらず詳細不明)
2019年11月 試験資格剥脱*
2020年2月29日 Overall 6.5 (L6.5, R7.5, W6.0, S6.0)
2020年3月14日 Overall 7.5 (L8.0, R8.0, W7.0, S7.0)
2022年5月21日 Overall 7.0 (L6.5, R8.5, W6.0, S6.5)
2023年4月22日 Overall 7.5 (L7.5, R9.0, W6.5, S6.5)
(L:リスニング、R:リーディング、W:ライティング、S:スピーキング)
*テストセンターまで行って受験できなかった悲しい話をしておきます。その時はIELTSを予約した後にパスポートの更新があり、そのことをテストセンターに届け出ていませんでした。このため予約の際に入力したパスポート番号と、実際に受験する際に持参したパスポート番号が異なっていたために試験資格が剥奪されました。会場でのセキュリティチェックを抜けて、自分の座席に座り、リスニング開始10分前という開始直前のタイミングでスタッフさんに声をかけられ退場しました。受験申込の際に英文の長い注意事項のメールが来ますが確かにそこには明記されている内容で、私の非だったために受験費用の返還はありませんでした。
これまでの受験結果を改めて振り返っても、英語力がこの数年で伸びたのかどうかよくわからない変遷です。私はいつもIELTSを受けようと突然思い立ち、直前1-2ヶ月くらい付け焼き刃で勉強するようなやり方でしたので、おそらく継続的にコツコツ勉強できる人はいずれのセクションも長い目で見るとスコアアップしていけるのだと思います。
どこまで参考になるかは分かりませんが、今回は4つのセクションのうち、リスニングに関して私が実際に行った対策をご紹介します。
リスニング
全体の内容
・リスニングは4つのセクションで構成され、後半に進むにつれて学術的な内容が出てくるなど、難易度は上がっていきます。
・全40問、合計所要時間はComputer版で30分です(Paper based版では転記の時間が10分間追加であります)。
・音声は1回しか流れません。
・音声はイギリス英語がメインですが、他のアクセントも出ます。
・音声の流れと、回答の順番は必ず一致します(答えとなるキーワードは必ず順番に出てきます)。
・音声が流れ始める前にガイダンスが流れる時間と、問題に目を通す時間が与えられます。
・Paper based版では会場のスピーカーで音声が流れるので、座席によって多少聞こえ方は違います。
・Paper based版では他の受験者の鉛筆の音も聞こえるので、解答に際して惑わされることがあります。自分を信じましょう。
・Computer版では個人のPCに備え付けられているヘッドフォンで音声が流れますが、遮音性はそこまで高くありません。ちなみにヘッドフォンは以降のリーディング、ライティングセクションでも装着し続けてもよく、私は耳栓代わりに常に装着していました。
・解答に際しては、スペルは当然、大文字小文字なども間違ってはいけません(追記修正:大文字小文字の区別はしなくて良いようです)。
セクション1
・日常会話のリスニングです。
・2名の話者の会話を聞くことになります。
・内容は客が店やホテルに問い合わせを行う電話、空港やホテルのチェックインの会話、友人同士の会話など様々です。
・適切な語句を聞き取って解答する穴埋め問題がメインです。
・解答と思われるキーワードの周辺に紛らわしい言動が散りばめられていることが多々あります。「Aにしようと思ったけどBにします。あ、BじゃなくてCでした」みたいな。
・人の名前や地名などの固有名詞のスペル、電話番号や金額などの数字を聞き取らせる問題はセクション1にしか登場しません。一発で聞き取れないと絶対に正答できず、私はものすごく苦手でした。
セクション2
・話者は1名による日常生活における何らかの説明、アナウンスなどのリスニングです。
・公共施設の案内、サービスの説明など、ラジオのCMなど、何かに関する一方的な説明を聞きます。
・地図が表示され、どこに何の施設があるかを選ぶ、などのマッチング問題が出てきます。
セクション3
・学術的な内容に関して2人の会話を聞きます。
・生徒と先生による課題に関する会話、生徒同士のプロジェクトに関する相談、などが典型的です。
・問題文に対する答えのマッチング、正誤判定などの問題が登場します。
・問題文と選択肢がそもそも長く、読んで内容を把握するのに時間を取られがちです。
セクション4
・学術的な講義を聞きます。
・講義内容のサマリーが穴埋めになったものが表示されており、その穴を埋めていきます。
・一度に話される音声が他セクションと比較しても圧倒的に長く、かつぶっ通しなので集中力を保つのも大変です。
対策
・本番形式の問題をとにかくこなすのが一番の近道だと思います。
・数多ある問題集の中でもCambridge University Pressの公式問題集が最も信頼度が高いですが、1冊3~4000円くらいします。1冊あたり4回分の模試が掲載されているので予算と準備期間に合わせて最新のものを数冊やり込むのが良いと思います。
・最近のCambridge公式問題集はQRコードをスマホで読み取って音声にアクセスするようになっていて、これを倍速で聞きまくると実際の受験の際の音声がとても遅く感じるようになりました。
・少し古い版であればYoutubeで問題と音声が見られるものがあります(おそらく違法アップロードなので使用方法注意かと思います)。
・公式問題集は音声スクリプトと解答のみが掲載されているので、詳細な解説を望む方には日本語で書かれた日本人向けの問題集をこなすのが良いかもしれません。
・IELTSに特化しない英語のリスニング対策としては、BBC Learning English, 各種Youtubeチャンネル(E2 IELTS, TED Talk), 各種ポッドキャスト(BBC World Service Global News Podcast, IELTS Speaking for Success, All Ears English, Hapa英会話など)は通勤中・運転中・ジムでの運動中などによく聞いていました。
・スペルミスは減点されるので、普段からスペルの間違いはしないように意識しましょう(GrammarlyやMicrosoft Officeの便利機能で自動的にスペルミスを指摘してもらえる環境にいる場合は特に注意)。
・問題を読んで、選択肢から選ぶタイプの問題は地味に読むのに時間がかかるので、リーディング力の底上げも重要だと思います。
・固有名詞や電話番号、値段などの数字の聞き取りはほぼ必発なので練習しておくと良いです。Youtubeで"IELTS Listening Spelling"などと検索すれば練習問題を読み上げてくれる動画が多数ヒットするので活用していました。
テクニック
・IELTSのリスニングセクションは慣れとテクニックで容易に点数が前後すると思います。
・問題の形式は5~6パターンしかないため、とにかく練習をこなして慣れることが大事です。
・ガイダンスが流れている間や、音声開始前の30秒程度の問題に目を通す時間に、問題文に可能な限り目を通して解答を予想する練習は必須です。このためセクションに区切っての練習ではなく、リスニング1回分を通しでの練習を推奨します。
・正答であるキーワードは必ず順番に出現するので、もし聞き落として次の問題に行ってそうであれば潔く諦めて次に進んでください。ただしわからない問題も空欄ではなく、何かしら答えを捻り出して書いておくとラッキーがあるかもしれません。
・正答であるキーワードは多少強調して発音されている場合が多いです。
・一方で正答であるキーワードの前後には紛らわしい単語が散りばめられていることがよくあるので、冷静に聞きましょう。Paper based版で周囲の受験生が一斉に答えを書き始めても、紛らわしい表現に踊らされているだけかもしれません。
・解答に時間がかかりスペルミスをしたり、すぐに次の問題に関連した内容が話されていそうなら、後から見てわかるような略語を書いておいたり、Paper basedならカタカナでメモをしておき後から正しい解答に書き直すなどすると良いです。
・試験当日はリスニングが最初にあるので、試験開始前から英語音声を聞いておくと少しは耳が適応した状態で受験できるような気がします。私はいつも公式問題集の音声を1.5倍速くらいで聞きながら会場に向かっていました。
終わりに
私がIETLSを受験していた時は、リスニングとリーディングのインプット技能は常に満点を取るつもりで受験していました(どうしてもライティングとスピーキングのスコアが伸びないので)。結果としてリスニングで満点を取ったことはないので偉そうなことは言えませんが、IELTSに合わせた対策をしっかり行っているかどうかで点数は容易に前後するセクションだと思います。普段から英語音声を意識してコツコツと聞くことができる人であればもっと伸びたのかなとも思いますが、ひとまずは大学院受験のために必要要件を満たすことが大事と割り切る姿勢も必要でしょう。引き続き他のセクションの対策に関しても記録を残していきます。