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金沢市のオススメ名建築10選【建築巡礼04】

 今回は石川県金沢市のオススメを紹介します。
 世界的にもあまりに有名になった21世紀美術館以降にも傑作がいくつもいくつも建てられています。また、加賀百万石のど真ん中であり、江戸時代以降の建物も多く残っています。
 …初っ端に富山市の中心市街地で10選にしてしまい、しまった!と思っていたのですが…金沢市だととても5つには絞れませんでした笑。
 建築好きを自称する方は来訪必須ですよ!
(写真はやむなく選外としたものの中から谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館です。)


1)金沢21世紀美術館/SANAA/2004年

外観 曲面ガラスが展示空間・中庭・通路等を全て内包

やっぱりまずこれでしょう^_^
この建築で、美術館建築の考え方を根底から覆されました。展示空間の箱と展示空間にもなりうる中庭が独立して存在し、その隙間に廊下を配し、来館者はチケットを買わずとも美術館の雰囲気を楽しむことができ、どう動くのも個人の自由。
これ以前は、美術館ってもっときっちりかっちり、威厳があって美術って高尚!という雰囲気が濃厚でしたが、この建築は、そんな肩肘張らず、みんなで美術を楽しんでみない?と語りかけてくれているかのよう。
美術になんて興味ないという人ほど、散歩がてらに一度訪ねてみてほしい美術館です。

2)石川県立図書館/仙田満+環境デザイン研究所/2022年

閲覧室内部 圧倒的な開放感と一体感

同じ設計者が国際教養大学ですでに同様の素晴らしい空間を実在化させていましたが、あちらは半円。360°の迫力はとんでもないです。
本に囲まれながらも中央の吹き抜けに身を委ねるような開放感とみんなこの場を共有しているという一体感。イメージ的には「本のコロッセオ」というところでしょうか。
ボリュームがすごいことからサイン計画も非常に練られていますし、子ども用の閲覧室なんて遊具まであります。
外観も本のページをめくった様子をイメージしており、「程よく」存在感ありまくってます。
隣には金沢美術工芸大学(SALHAUS、カワグチテイ建築計画、仲建築設計スタジオ/2023年)が建てられています。こちらも街に開かれた校舎を意識しており、概念とハード両面からの「開く」と「閉じる」の手法の違いを気にすると面白いです。併せての見学をオススメします!

3)国立工芸館/(改修)山岸建築設計事務所/1898年(第九師団)、1909年(偕行社)、(改修等)2020年

外観 移設した二つの文化財を繋いだ建築

地方創生の一環として、東京にあった工芸館を金沢市に移転するにあたって、旧陸軍金沢偕行社(右)と旧陸軍第九師団司令部庁舎(左)という、2つの文化財を移築・復元しながら、渡り廊下で一体化させたというなかなかにすごいプログラムです。
工芸というもののあり方を示すにあたって、後世に残すべき、過去から様々な人々の手が加えられてきた文化財を復元してその箱とすることには大きな大きな意義があると思います。
木造の移築部分とRC造の復元部分を併せて混構造として時刻暦解析を行っているそうです。大変な設計だったんだろうなあ…。

4)鈴木大拙館/谷口吉生/2011年

中庭より 水盤で日常(俗世?)との隔絶を表現したかのような計画

金沢で近代建築と言えば谷口吉郎。そしてその息子の谷口吉生。
金沢市の建築を語るにおいてこの両名は外せません。
お二人の合作でもある金沢市立玉川図書館(矢橋賢吉(大蔵省)、(改修)谷口吉郎建築設計研究所・五井建築設計事務所/1913年、(改修等)1978年)、生家跡に谷口吉生が設計した谷口吉郎・吉生記念金沢建築館(谷口吉生/2019年)も考えたのですが、私が選に入れたのは、これ。
哲学者 鈴木大拙の博物館で、水盤とそこに浮かぶ離れが象徴的です。
哲学とはなんぞや、それを建築で表現すると、ということを考え抜いた、純度の高い建築と思います。
できればあまり人がいない時に伺って、ゆっくり佇んでみたいで建築です。

5)金沢市立海みらい図書館/シーラカンスK&H/2011年

内観 無数の円形窓と大きな大きな吹抜け空間

金沢市の郊外、幹線道路沿いに建てられた大きな大きな白い箱。
壁面がここまで多くの小さな円形窓に埋め尽くされているにも関わらず、全然うるさく感じないのが不思議です。むしろ、水中や木漏れ日の元にいるかのような安心感すらあります。これだけ大きな空間の中にあるから余計にそう感じるのかも知れません。
県立図書館とアプローチは異なりますが、どちらも極上の読書空間と思います。

6)尾山神社神門/ホルトマン、津田吉之助/1875年

見上げ 階段を上がっていくとまずこの存在感

21世紀美術家や金沢城からもほど近い、尾山神社にある門です。
三層の楼門で和漢洋の折衷と言ったらよいのか、いい意味ではちゃめちゃです。ここ以外でこんなん見たことない💦
文化遺産オンラインによれば、1階は石造で2階以上は木造、木彫もしっかり施されてありながら、アーチやステンドグラスがあり、屋根の上には避雷針まで。ナンジャコレハ、です。
誰かにチラッと伊東忠太が関係していると聞いて、なるほど伊東忠太ならと信じていましたが、そうではないようで。思い込みって怖いなあ💦
何はともあれ、一見の価値あり、ですよ。

7)金沢駅東広場 もてなしドーム/トデック、白江建築研究所(総合プロデュース)小堀為雄・水野一郎/2005年

内観 金沢の玄関口に相応しい重さと軽さが同居。奥には鼓門

金沢駅を東側に出て、美術館や百貨店、市場に向けて向かう、まさに玄関口。金沢駅は世界で最も美しい駅の1つに選出されているそうです。
曲面のガラスの大空間と、そのゲート部分の木組の鼓門(能楽で用いられる「鼓」がモチーフだそうです)。この二つのコントラストが不思議にマッチングしています。ライトアップされた姿もまた美しい。ここを通って行くだけで、街を歩くワクワク感が一層増します。
富山市のグランドプラザもそうですが、街への結節点としてもやはり雪の多い北陸では、屋根のある屋外公共空間って必要だとなあと思います。

8)シェア金沢/五井建築設計事務所/2014年

温浴施設外観 レストランや物販店舗も併設

建築自体も良いのですが、プログラムが素晴らしい。
障がい者施設、児童養護施設、高齢者向け住宅、大学生向け住宅、温泉施設、それらが広大な敷地にごちゃ混ぜに建てられています。
細分化された福祉政策には個人的に思う多少疑問を持っています。限定された分類は、その中で純血性を持つだけであって、閉塞された社会を成立させてしまうので。それを外部の人たちを許容する温泉施設まで作って強制的に混ぜてしまおうという施設です。
しかも、外部の人たちの空間で、障がい者の皆さんなど、ここに住む方たちの職住近接まで可能に、というプログラム。
これがうまくいくようなら(いや、いかせないといけないですね)、よりよい共生社会になっていくきっかけとなるものと思います。

9)金沢市民芸術村/(改修)水野一郎/1923年、(改修)1996年

外観 倉庫の単純な保存修復ではなく、部分的に増築することで新たな息吹が吹き込まれた

旧金沢紡績の倉庫群を改修して、演劇・音楽・美術活動の場として再整備したという建築群です。当時、金沢市がこの敷地を取得して公園として整備を進めようとしていたところに視察に訪れた当時の市長が、保存活用を指示したとのことです。今振り返って見てみればまさに英断でしたよね。
レンガや木造の梁がその重みを今に伝えつつ、外構なども綺麗に整備されています。
多少郊外にあるため、観光客が押し寄せることもないので静かな環境下で練習ができる施設と思います。金沢市民の皆さんが羨ましいです。

10)金沢城公園

鼠多門及び鼠多門橋夜景 これを復元・・・・しかもこれだけではなく・・・

元々は石川門と鶴丸倉庫くらいしかしっかりとした記憶がないのですが、石川県さんが頑張って少しずつ少しずつ復元・再現を続け、いつの間にかここまでになってました💦
 H13:菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓
 H22:河北門・いもり堀
 H27:橋爪門・玉泉院丸庭園
 R2:鼠多門・鼠多門橋
一つ一つが重要文化財級の遺構をこれだけ立て続けに復元ってのは本当にとんでもないことです。
公園としても遺構としても非常に価値のあるものとなっています。
道を挟んで隣には日本三大庭園の兼六園もありますし、金沢市には他にも三つの茶屋街や長町の武家屋敷など、江戸時代当時の雰囲気を感じることにできる街並みが残っています。
併せて散策してみてはいかがでしょうか。

金沢市のオススメを10箇所ご紹介しました。
…5つに絞れませんでしたといいつつ、実は10でも厳しかったのです💦
市立玉川図書館、金沢聖霊修道院聖堂、金沢教会、見城亭、本多の森ホール、金沢港大野からくり記念館、しいのき迎賓館、県立歴史博物館、北國銀行武蔵ヶ辻支店、大樋美術館、谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館、ひがし茶屋街、にし茶屋街、主計町茶屋街、成巽閣、村松商店、田上邸、三田商店、kanazawa node、KUMU金沢、金沢ビーンズ、金沢市文化ホール…まだあったような…。
一度にと欲張らずにテーマを決めて行き先を決めるべきかもですね。

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