秋田市のオススメ名建築5選【建築巡礼12】
今回はまた北上して秋田市のご紹介です。
10年ちょっとぶりに来訪して、少しずつ動いているのを実感しました。千秋公園付近、駅付近の整備も終わり、これから一層よくなっていきそうな気配を感じてます。
ただ、この流れの中で、古い建物が道路拡張などに伴って、容赦なく壊されてしまいそうなのが怖い…(見てみたいと思ってた建物が実際解体されてしまってました…)。
近代以前の建物はまだ十二分な把握はできていないかもしれませんので、助言があればお待ちしております💦
(写真は久保田城表門/2001年(復元)です。年代的には新しいですが、とても風格がありました^_^)
1)国際教養大学図書館棟/仙田満+環境デザイン研究所/2008年
もう、ただただ圧倒されました。
石川県立図書館のプロトタイプと思ってましたが、全然そんなことはなく。
県産材を流通材のレベルの断面サイズでこれでもかというくらい使い倒して、ライトアップとも相まって荘厳な空間を作り出しています。まさに知の殿堂。
試験も近く、勉強している学生の邪魔となるからということで、非常に短時間の挨拶で写真も不可。んな殺生な…💦
2)あきた芸術劇場ミハルス/佐藤総合計画・小畑設計共同企業体/2022年
ボリュームは非常に大きいのですが、前面のボリュームを横ルーバーで分節化し、圧迫感を大きく軽減しています。ホールも木材のルーバーを多用し、温かさとスタイリッシュさを共存させてます。
吹抜けなど空間を贅沢に使用していますが、これだけ大きなホールのホワイエ部分なのでボリューム的にも適切と思います。
前に来た時には影も形もなかったのに…この建物のおかげでこの付近が一気に垢抜けました^_^
とても上質な建物と思います。
3)秋田市立中央図書館明徳館/谷口吉生/谷口建築設計研究所/1983年
谷口建築らしい上質な上質なモダニズム。
グリッドの中にある直方体の連続という制約の中で、これだけのものができるという教科書的な設計です。
建築士の試験の際に行われる即日設計であるような、贅肉を削ぎ落とした計画ですが、実際に見てみたら、これを悪口とは感じないと思いますよ。
前回も今回も時間的な余裕がない中で訪れてしまいました💦申し出れば写真撮れたのにその時間もなく。
そういや、10数年前にも同じこと言われたわ💦
4)秋田文化創造館(旧秋田県立美術館、旧平野政吉美術館)/日建設計/1967年
10数年前に来訪した時には、ちょうど次の秋田県立美術館のプレオープンがされており、旧美術館だったこの建物は所蔵していた藤田嗣治の作品を鑑賞するスペースとなっていました。
とは言いつつ、どうなるか不安でした…
どうも、秋田公立美術大学と組んで、文化を創造するための施設となったとのこと。よかった!
解体案が公表された際には、市民から保存運動も起こったそうです。
街の風景となっていて、市民にも必要とされる。幸せな建築ですよね^_^
5)秋田県立美術館/安藤忠雄建築研究所/2012年
ザ・アンタダ建築です^_^
コンクリート、コンクリート、コンクリート。それをここまで洗練した空間に仕上げる力量はやっぱり素晴らしい!
周囲にはガラスのカーテンウォールに包まれたにぎわい交流館Auがあり、そこまでの自己主張はありません。
もしかすると、だからこそ余計に好感をもったのかなあ。
6)高砂堂店舗/藤本東三郎(大工)/1918年
近代以前の建物を探していて、あ、お土産も買えそうだし、ちょうどいいやと思って見学がてら伺いましたが、良い意味で期待を裏切られました。
すみません、そんなきっかけで💦
道路拡張に伴い、曳家されたそうです。
大々的に改修されているようですが、金属天井は一見の価値ありと思います。
棟に屋号が入っているのも若干野暮ったくは感じますが、好みです^_^
7)旧松倉家住宅/主屋:1906年、米蔵:1839年以前、文庫蔵:1866年、覆屋:明治末期
秋田の町屋の典型的要素を多く有しています。
その一つ目は妻入り(旧金子家や旧高堂家もそう)
二つ目は片土間(さらに部屋が2列ってのも特徴。片土間の上で部屋が2列ってことは間口がそれだけ広いってことなんですよね。イコール豪邸ってことです💦)
三つ目は内蔵+覆屋(この建物は米蔵と文具蔵に覆屋があって主屋とくっついているというすごい建物)
幸運なことに、耐震改修をした担当の方に色々お話を聞くことができ、なかなかに面白く、非常にためになりました^_^
文化財の改修という観点からも見学すべき建物と思います。
8)秋田赤れんが郷土館(旧秋田銀行本店本館)/山口直昭(秋田県技師)、星野男三郎/1912年
内外共に重厚です。貴賓室から何から何まで豪華です。
大理石(?)でできた暖炉とか、ここまでやるか?と思うくらい。
どこでもそうなのかもしれませんが、銀行建築はしっかりと作られており、歴史的建造物として転用されているものが多いですが、この建物くらいしっかり装飾されたものは、地方ではなかなかないんじゃないでしょうか。
必見です。
9)秋田ノーザンゲートスクエア/JR東日本建築設計、環境デザイン研究所、ライフデザイン建築研究所 /2019年
駅のすぐ近くに建設されたバスケの練習施設ですあり、B1のノーザンハピネス、社会人のペッカーズ、さらに地域の中高生と広く利用されています。
駅近くで、この施設が活用されていることを内外に示すだけでも、秋田にとってのバスケの重要性を周知する効果は高いと思います。
…もう、駅直結にしてしまえばよかったのに^_^
構造的にはスパンをとばす、見通しをよくする、できるだけ県産材を使うということを考え、木造鉄骨造、RC造など適材適所に部材を用いた棍構造となっています。
梁がものすごく綺麗なのが印象的でした^_^
10)CNAアリーナ★あきた(秋田市立体育館)/渡辺豊和建築工房/1994年
最後にちょっと「キワモノ」を。すみません、好きなんです💦
これでもかというほどの原始的な装飾。「考えるな、感じろ」の領域です💦
建設当時の情報誌には「縄文時代に海洋文化圏を形成していた秋田県の首都に、古代ギリシャで始まったオリンピックの精神をよみがえらせる」と掲載されていたそうで。
設計者の渡辺豊和さんが秋田の角館出身ということで、何か通じるところを感じるのかもしれません。それでも、海洋文化圏=古代ギリシャ=オリンピック=この造形というのは、ちょっと暴力的な気もしますが、ポストモダンの時期には表現の仕方の一つとして受け入れられたんでしょうね。
造形だけ見ればなかなかに、いや、かなり凄いと思いますが、問題は公共建築であること。今後維持修繕費は相当かかるような気がします💦
いかがでしょうか。
秋田市のオススメをご紹介しました。
秋田市に限らず、秋田県内では新しく建てる建物は県産材を効果的に、しかも流通材のレベルで大々的に用いています。
手付かず状態の古い建物も多く、これから良い方向に向かえばいいなあと思いながら見学してました。
秋田は観光らしい観光はしておらず、竿燈祭もナマハゲもかまくらもまだ見てません。それも併せて再訪必須と思ってます!