見出し画像

過疎化地域に30年住んで〜その3(幼稚園・保育園の変化)

 私は過疎化地域に居住している。これまで過疎化地域について2つの記事を書いた。


 今回はこれらに続くシリーズ第3弾です。
 私の住んでいる地域では、30年ほど前には各地にへき地保育所や季節保育所がありました。

 へき地保育所とは児童福祉法に規定されている。中心部まで距離がある場合に、都道府県知人、もしくは中核都市市長等が設置基準にあると認めた場合に設置できる少人数の保育所です。
(上記は取意、詳細は付記3の「へき地保育所の設置について」を参照)

児童福祉法第39条

 これが居住地には6つありました。いわば各集落にあったような感じです。
 市街地が2つあり、市街地Aには幼稚園と保育園、市街地Bには保育園があったのです。この市街地Aと市街地Bの幼稚園と保育園についてのことを触れておきます。

 市街地Aの保育園は、市街地の婦人の方々が中心の婦人連絡協議会が実質開設した。女性が社会参画するためには、子どもの養育をするところ(=保育園)が必要という声があがり、これに応えることが保育園の開設でした。市街の婦人の方々が保育園の運営や保育等をされました。この運動の中心人物の一人が私の祖母です。保育園といっても建物がなかったため、最初は寺院の一画を使っていました。保育園は、当初、民営でしたが、後に公営となりました。
 市街地Aの幼稚園は、1970年代に就学前の子どもを対象にした幼児教育を希望する人が多く、開設されました。最初からの公営です。
 市街地Bの保育園は、その地域にあった寺院が保育を始めたことがきっかけです。その後、市町村からの委託を受けた形での運営となっていきました。北海道では、このような寺院が幼稚園や保育園を経営する場合が多くあります。特に農村部では、農繁期にはほぼ休みなく保育園を開園し、農閑期には保育園を閉園するのです。季節保育園と呼ばれるものです。この季節保育園は農村部の寺院にとっては児童福祉と地域貢献です。更に宗教活動以外の収入源の1つという意味もありました。そのため、特に小規模寺院にとっては、戦後の農地解放等で農地や土地を手放すことになり、借地料や小作料の収入がなくなったため、大変貴重な収入源と聞いています。
 このような季節保育園が、状況によっては、その後、市町村の委託の通常の幼稚園や保育園となるものがありました。同時に地域によっては廃止となったものもあります。

 2000年代には、市街地Aの幼稚園と保育園を合併して、認定こども園が設立されました。認定こども園の建物は幼稚園と保育園が隣同士にあり、これら2つの建物を改築して1つの建物にしました。
 市街地Bでは保育園がそのまま存続しました。
 その後、6つあったへき地保育所(公営)は、2つが廃止、3つが合併(公営)、1つが存続(NPO運営)となりました。
 今後、10年以内に合併した保育園とNPO運営の保育園が廃止され、市街地Aの認定こども園と市街地Bの保育園の2つが存続することと予想されています。
 ここまでで確認しておきたいことは、市街地Bの保育園は委託ですが、すべて公営ということです。

 私の住んでいる市町村は上記のような状況です。となりの市町村は、非常に大きな市町村です。しかし、その市町村には、公営の認定こども園、幼稚園、保育園はありません。すべて市町村からの委託になっています。
 委託先はすべて宗教関係です。宗教関係といっても、仏教やキリスト教等の宗教法人が直接的に委託されるのではありません。宗教法人の代表者等が社会福祉法人を立ち上げて、その役職者となって運営しているのです。ですが、実際に外側から見る人からすると寺院や教会といった宗教関係が運営しているように見えます。
 私の住む振興局(北海道の中の区割り)では、近年、市町村が公営の認定こども園や幼稚園、保育園が同じように委託になっていく例が非常に多いです。

 市町村の公営施設を指定管理者として、株式会社をはじめとした営利企業・財団法人・NPO法人・市民グループなど法人その他の団体に包括的に代行させるようになってきています。今後、これと同じように、宗教法人が関係する社会福祉法人が、公営の認定こども園や幼稚園、保育園を委託運営するケースが非常に増えていきそうな気がします。

 北海道は寺院が保育をはじめて保育園ができていったことを書きました。運営主体は時代とともに寺院運営(民営)から市町村(公営)に変わっていきました。その時には、寺院等が児童福祉と地域貢献から始まったものが公(おおやけ)に認められて、公営化されたわけです。
 今回の宗教法人が関係する社会福祉法人による委託運営というのは、市町村(公営)からは変わりませんが、寺院が運営していた(民営)に戻っていくような感じを受けます。
 しかし、不安があります。市街地Bの保育園の開設をめぐっては、寺院の住職坊守(夫婦)が、門徒から「子どものせいで寺院が痛むからやめろ」という声もある中、児童福祉と地域貢献で継続してきたと聞きました。つまり、反対の声があっても、やり抜く意欲や情熱があったわけです。その意欲や情熱が公営化の時に、世代交代(住職交代)の時に受け継がれているのだろうか。そして、公営化から民営に戻る時に保育園を開設した時のような意欲や情熱があるのだろうか。問題を起こさずに運営してもらえればいいと思います。しかし、現在は、名前だけ理事長は許されないという話を聞きました。そうであれば、寺院の運営をしながら、はたして十分なことができるのか。

 これは過疎地だけの状況なのかどうかは私の知りうる範囲ではわかりません。しかし、私が住んでいる過疎地の実態です。公営の認定こども園や幼稚園、保育園は、すべて委託されていくでしょう。委託が悪いとは思いませんし、運営がよければありがたいことだと思います。しかし、委託運営は公営とは異なります。いずれ状況によっては認定こども園も保育園もなくなる可能性があることを感じています。

付記
1.政府の認定こども園への移行促進
 私の親族の中に幼稚園の事務職員をしていた人物がいます。その勤務先の幼稚園は、宗教法人が立ち上げた社会福祉法人が運営しているものです。社会福祉法人のため、税制優遇措置があります。また、補助金があります。そのため、定期的に行政からの監査があります。この監査が大変なのです。
 今から10年以内の話です。ある年に監査にこられた方が「幼稚園から認定こども園に移行した場合、監査が楽になる」と話されたそうです。この幼稚園の設置場所の都合もあり、これまで「認定こども園」にすることを拒否していました。しかし、このような行政からの圧力等があり、この幼稚園は給食施設等を増築して、認定こども園に移行しました。これは身近な例ですが、他にも数人から同様の話を聞いています。もしかすると、政府としては幼稚園と保育園を認定こども園に移行させることを考えているのではないかと思います。
2.過疎地で幼稚園や保育園がなくなる
 過疎地で幼稚園や保育園がなくなるということを書きましたが、さすがにそういうことはないだろうという方もいると思います。
 実例をあげておきます。私の祖父母は寺院(以降はC寺院とする)の住職坊守でした。その地域は農村部で、上記で書いた市街地Bの保育園とほぼ同じような成り立ちをしています。ただし、C寺院の地域は、市街地が大きくなりませんでした。市街地から人が離れ、離農が進み、、、と人口が流出している地域です。そうすると、C寺院が委託されていた保育園の園児の数も減少します。学年5人を切った時に大きな市街地Cの保育園と合併(ようするに廃止)することになりました。一方的な行政から命令のような形です。園児が少なから市町村からの委託費(補助金)もすべて打ち切るという通知です。
 大きな市街地Cの保育園までの距離は10キロほどあります。市町村は反対派の動きが大きくならないように送迎バス等で対応をすることとしました。
 更に、その後、市街地Cの保育園がなくなり、さらに大きな市街地Dの保育園に行くことになりました。C寺院の近隣の方々にとっては移動距離が増えて、負担が大きくなりました。
 子どもの数が少なくなれば、田舎(過疎化地域)の保育園や幼稚園や認定こども園はなくなると思います。
3.へき地保育所について

へき地保育所の設置について
(昭和三六年四月三日)

(発児第七六号)

(各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生事務次官通達)
保育行政の推進については従来から格段のご協力を煩わしているところであるが、昭和三六年度から新たにへき地保育所の制度を設け、へき地における保育対策の推進を図ることとし、これが設置に関して別紙のとおり「へき地保育所の設置要綱」を決定したので、本制度の運用に遺憾なきを期せられたく、通知する。

〔別紙〕

へき地保育所設置要綱

第一 目的

この制度は、交通条件及び自然的、経済的、文化的諸条件に恵まれない山間地、開拓地、離島等のへき地における保育を要する児童に対し、必要な保護を行ない、もってこれらの児童の福祉の増進を図ることを目的とすること。

第二 定義

この要綱で「へき地保育所」とは、児童福祉法第三九条に規定する保育所を設置することが著しく困難であると認められる地域に設置される児童を保育するための施設であって、都道府県知事(指定都市及び中核市の市長を含む。以下同じ。)が第四及び第五の基準に適合すると認め指定したものをいう。

第三 入所の決定

へき地保育所への入所の決定は、市町村長がその地域内における保育を要する幼児又は、特に必要があるときはその他の児童につき、行なうものとする。

第四 設置基準

1 設置主体

へき地保育所の設置主体は、市町村とする。

2 設置場所

へき地保育所を設置する場所は、次のいずれかでなければならない。

(1) へき地教育振興法(昭和二九年法律第一四三号)第五条の二の規定によるへき地手当(以下「へき地手当」という。)の支給の指定をうけているへき地学校の通学区域内にあること。

(2) 一般職の職員の給与に関する法律(昭和二五年法律第九五号)第一三条の二第一項又は地方自治法(昭和二二年法律第六七号)第二〇四条第二項の規定による特地勤務手当(以下「特地勤務手当」という。)の支給の指定を受けている国又は地方公共団体の公官署の四キロメートル以内にあること。

(3) へき地手当又は特地勤務手当の支給の指定を受けることとなる地域内にあること。

(4) (1)から(3)までのいづれかに準ずるものとして都道府県知事が認める地域内にあること。

第五 設備及び運営の基準

へき地保育所の設備及び運営については、次に掲げる基準によるもののほか、児童福祉施設最低基準(昭和二三年厚生省令第六三号)の精神を尊重して行なうものとする。

(1) 入所児童の定員はおおむね三〇名程度とし、入所児童については幼児を原則とし、特に必要があるときは、その他の児童をも入所させることができること。

(2) 公民館、学校、集会所、共同作業所、婦人ホーム、寺院等の既設建物の一部を用いてへき地保育所を設置する場合においては、その設備をそのへき地保育所のために常時使用することができるものでなければならないこと。

(3) 保育室、便所及び屋外遊戯場(その附近にあるこれにかわるべき場を含む。)その他必要な設備を設け、それらの規模は適正な保育ができるように定めること。

(4) 必要な医療器具、医薬品、ほう帯材料等を備えるほか、必要に応じて楽器、黒板、机、椅子、積木、絵本、砂場、すべり台、ぶらんこ等を備えること。

(5) 所定の資格を有する保母二人を置くこと。

ただし、所定の資格を有する者がいない等やむを得ない事情があるときは、うち一人に限り児童の保育に熱意を有し、かつ、心身ともに健全な者をもってこれに代えることができること。

(6) 保育時間、保育の内容、保護者との連絡方法等については入所児童が健やかに育成されるようその地方の実情に応じて定めること。

第六 設置費に対する補助

国は、予算の範囲内において、別に定める交付基準により都道府県並びに指定都市及び中核市に対して補助するものであること。

(昭和三六年四月三日)

(発児第七六号)
各都道府県知事・各指定都市市長あて厚生事務次官通達




いいなと思ったら応援しよう!

シュカイ
よろしければ、サポートお願いします。