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過去の発作と未来の救い

発作はいつも、過去からやってくる。

心臓を握られるような痛みと、ひどく激しい動悸。息の吸い方がわからなくなり、体温が下がり、絶望感に襲われる。未送信のSOSを、何度消去しただろう。

暗くて閉鎖的な場所に、ひとりで行けなくなった。人と会うことがこわくなった。エッセイを書くのがこわくなった。人を信じるのがこわくなった。パニック状態というらしいと知っても、頭と心がちぐはぐで、壊れたように笑うことしかできなかった。大丈夫の盾で武装して、ぎりぎり立っていることしかできなかった。

いろいろなことが不自由になった。車の運転ができない。電車に長時間乗れない。過去に脳が圧迫されて、ふとしたことでトリガーが引かれてしまう。ふとしたときに、動悸と過呼吸が起こってしまう。それが周囲にばれるのがこわくて、ひとりになった。笑って平気なふりをした。必死にへらへら、へらへらした。

そうやって、一年、生きた。
会える人には、少しずつ会えるようになった。
文章を書くのを、やめることもなかった。
電車も、調子がよければ長時間乗れるようになった。

人生でいちばん、死にたくない、と思った一年だった。

死にたくなかった。
生きたかった。

救われたかった。

*

数年ぶりに、長編を書くことにした。
私を救うのは私にしかできないと悟った瞬間に、書かなければと思った。書きたいと思った。

いったい、このくるしみや絶望に何の意味があるのだろう。あのときあの場所で、私はどうしたらよかったのだろう。私は記憶から何を受け取って、どう生きていったらいいのだろう。不自由なこの身体で。不完全なこの心で。

もうすこししたら、観たい映画が公開される。執筆の合間に、観に行こうと思っている。この心臓と一緒に。

私が私のまま、いつかちゃんと、救われますように。その祈りを受け取るのは、やっぱり、私で。今日も、原稿と向き合っている。

あなたはどうですか。
あなた自身に、救われていますか。
私は救われたい。私自身に。

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夕空しづく/詩人・小説家
眠れない夜のための詩を、そっとつくります。