この家どうするの?(35)葬儀屋さん今昔11・火葬までのあいだ
町内の A葬祭さんに父がいる。
父が購入した家なのに、父の帰宅を拒否してしまった。冷たい娘だ。
火葬は、あさって。間延びの恩恵、いろいろ整理するのと、休むのと。
つらくなるかたは、お読みにならないでください。
(1456文字)
出棺1時間まえ
A葬祭さんが言うには、
「斎場へ出棺の1時間前から、お父さんとお別れができますので、どうぞお越しください。それまでは、こちらが責任もって安置します」
火葬まで父を置いてもらえるのでホッとした。
最近になって葬儀屋さんサイトを、いろいろ見てみた。トップには大手葬祭さんがドンと出てきた。
どこの会社か忘れたが……
「当社でご遺体をお預かりします。個室はもとより、管理された棚、季節・火葬場事情により、冷蔵庫もございますので、ご安心ください。」
冷蔵庫。ハッキリ書く会社もあった。
父も、たぶん冷安室にいたのだ。
年金手帳と預金通帳
このふたつは、かならずや探さないといけない。かなり気持ちが悪い状態でした。
父は、生命保険は未加入。株や投資もなし。年金暮らしの独居老人、父はこの肩書きだけ。
父は離婚後、再婚はしていない。
こっそりしてたら面倒だ。これといった、おつきあいも無かった。
そんなにお金もないはずだし。
刑事さんは、「火葬後でいいので、年金手帳と預金通帳を見つけたら連絡してください」と言っていた。
「ありませんでした」……なんて言おうものなら事情聴取とか、任意同行とかあるのかしら。実の親子でも保険金ウンヌンがある時代なので、とても物騒。
明日までに見つけたい。火葬までに。
……とにかくランチを食べてから。
腹ごしらえ。それから。
忌引きの書類
なんだか、いつもと変わらない。娘とオットに連絡をすると、届け出に「死因」を書かないといけないらしい。
あの疫病か、そうでないか。
A葬祭さんが、あらかじめ死体検案書をコピーしてくれていた。いろいろ助かった。当時は、まだ疫病が蔓延していた。やっぱり聞かれることなのだった。
遠い親戚から電話が鳴る。
「お父さんのお見送りに行きます」
ふだんから、付き合いはないのに。この家族(5人)は仲良くて、イベント好き。
「父は直葬で、わたしひとりです。このご時世ですので、オットや娘にも来ないでと言ってます。」
と、やんわり来るなと連絡したのだが……。
……そうか、会社を休めるのか!
「最後やし、寂しいし」なんて言ってるが「休めるし」ということね。
休んで家族でランチしてたらいいのに。それがしたいのね。
こんな人たち (親戚)は、どこにでもいるし気にしない。疫病になっても知らないぞ。
とはいっても、わたしひとりで気楽だ。葬儀に、あれやこれやとクチを出されるより良しとする。
会場のA葬祭さんに入れるのは、出棺の1時間前からと伝えて、あっさり通話終了しました。
捜索開始
さて、捜索をはじめよう。
家の2階にあるはず。
大物の家具は、和・洋タンスとガラスの扉つきの本棚しかない。
あと、大きいのが、ふたつき衣装ケースが10箱。5箱は空で重ねて積んである。収納グッズで良く出てくるあれ。
とりあえずケースだけ買っといたのだろう。
年金手帳と預金通帳が、なかったらどうしよう。
とにかく、とっかからないと終わらない。
緊張感がとぎれ、ぼ~っと……。
この日のことは、あまり覚えていません。
しらみつぶしの捜索が始まった。
(不謹慎ながら続きます)
いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに
さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。