この家どうするの?(47)葬儀屋さん今昔・ 23「父の家にかえる」
葬儀屋・社長さんのガイド。
それがなかったら、斎場でオタオタしていたはず。父は、ちいさな白いせとものにおさまった。
つらくなるかたは、お読みにならないでください。
(1468文字)
父の変身
たんたんと、【お骨あげ】の手順をすすめる斎場の職員さん。祖母のときは、形なきお棺のぐるりを親族が囲っていた。
今回は、わたしと葬儀屋・社長さんのふたりだけ。父は軽く白い陶器と同化した。何度も入院したから、この日は想像できました。
「のこりのお骨は、斎場入口の仏さまのもとに行かれます。
また来られることがありましたら、どうぞ手を合わせてください」
職員さんのことばで終了。ホントかウソかは知らないが、合理的なエンディングだった。
行きしなと帰りしな。ほんの2時間のあいだで変身した父と帰る。葬儀屋・社長さんの黒い車は、こんなに広かったんだ……。
これからの手続き
帰りも30分ほどのドライブ。家まで乗せてくださる。
やったぁ、心のなかで終了、よかったと自分をねぎらう。
運転しながらの社長さんのおはなしをきく。
「今後ですが、手続きや申請があります。区役所・年金事務所にも、わたしが同行します。
あまり早いとデータが出ません。2週間過ぎぐらいがいいですね。
ご予定はどうですか?」
おお、至れり尽くせりで恐縮。
それはありがたい。わたしはなんにもわからない助かる……。
それにしても!
これはサービス残業を超える別業務ではないのか?こんなにしてもらって料金は安すぎでは?
誰もいないし聞いとこう。
かさむ費用
「いろいろと、おせわになり、ありがとうございます。
あの〜、ほんまに追加料金は要らへんのですか?」
終わったオフオフ感の私と比べて、仕事オンの社長さんのことばに衝撃を受けた。
「むかしは斎場使用のさい、職員に心づけが要ったんですよ」
こころづけ? チップか!
お礼みたいなお金のことや。
なにを言われているかワカラナイ。
「これって積みかさなると、けっこうな副収入になるんです。
それで……ある市長のときに、心づけ廃止になったんです。」
「急に収入が減るし、仕事柄だし……職員からは文句が出たようですがね。
いまだに心づけ渡してるトコもあるみたいです……」
あまりピンとこなかった。
そうだ、祖母の葬儀代の書類が引き出しに残ってるはず……。
帰宅して葬儀代の領収書の内訳を見た。さきに書いておきます。
斎場【控え室 心付 10000円】
【火葬 心付 10000円】
ありとあらゆるところに
【心付 10000円】が登場していた。
霊柩車運転手・飲食店・カメラマン……出入りがあった人に。
葬儀代がふくれるわけだ。
帰りも渋滞はなく父の家に帰ってきた。去りゆく黒い車に、ちいさい父と、ふかぶかと頭をさげる。
社長さんに「四十九日用・電池式ロウソク」と「白木の位牌(いはい)」をいただいた。
義母が亡くなったとき、提灯・大量の白菊・線香・見なれぬ飾りつけの「四十九日セット」を葬儀社のスタッフさんが家にセットしていった。いまおもいだしても必要なかったなぁ。
バチ当たりな娘のわたし。
いざ親がなくなると葬儀代をケチり、誰も来ない。いや、よせつけない。
誰もいない家。
仏壇の前に電池式ロウソクを点ける。
昼下がりというのに。
(不謹慎ながら続きます)
いつも こころに うるおいを
水分補給も わすれずに
さいごまでお読みくださり
ありがとうございます。