見送る人に送られる言葉
人生において印象的な言葉は2回ある。
最初の言葉と最後の言葉。
最初の言葉は産声だ。
生に対する期待と恐れがこもった深い呼吸。
この声は言葉としてはまっさらだ。
本人自体がまっさらだから当然だ。
最後の言葉はその人の人生を総括したような言葉になっている。
最後に思い出すのは誰のことか、何のことか。
見送られる人にとっての大事なことであるのは確かだ。
誰かが何かを大事にする時、そこにはその人の人生が凝縮されている。
その大事なものに対する言葉だ。
きっと人生の中で多くの言葉を発してきただろう。
その最後の言葉に込められた思いはそれまでの言葉のいずれよりも個人的で、しかし大事なもののためだけの言葉だろう。
見送るのは誰で、見送られるのは誰だろう。
これまでの人生で最も濃く一緒にいた人だ。
きっと生まれる前には生きて欲しいと願われた。
そんな彼が死ぬ前に生きて欲しいと願う。
生と死、そして言葉が織りなす、人生の神秘的な循環。
最期の言葉が心に残るのは、それが亡き人との最後の絆だからだ。
その言葉を胸に刻むことで、残された者は、亡き人の思いを受け継ぎ、前を向いて生きていく力を得るのかもしれない。
その言葉の意味を大切に受け止めながら、自分の人生を歩んでいく。
そして、いつか誰かに最期の言葉を残す時、自分の人生の集大成として、心を込めて伝えるのだろう。
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